満足度★★★★
門をくぐればそこは舞台
当日は快晴。
明るい冬空の下、学習院女子大学の門をくぐると、
都会のど真ん中とは思えぬ豊かな木々。
とても気持ちがいい。
赤や黄色の落ち葉を踏みしめながら進むと
ホールに降りるコンクリートの大きな階段。
一段一段降りるごとに、今まで纏っていた暖かい空気が冷えていく。
冷たい風とともに喪服姿の俳優が開けたドアの中へ吸い込まれてゆくと
ロビーには客席が設えてある。
また目の前で繰り広げられる出来事を目撃するために。
改めてポかリン記憶舎の舞台づくりにハッとする。
どこからが舞台だと感じるかは人それぞれだろうが、
一人ひとりに想像の余地を与える空間の演出があるからこそ
私は魅了される。
今回もぐっと心に迫る作品だったが、同時に今までにない変化も感じた。
二瓶鮫一氏がチャーミングでずっと目が離せなかった。
満足度★★★★★
期待を裏切らない完成度
2日間だけというのが実にもったいない。
最初はただ綺麗で美しく光る灯篭や、そこに最初から置いてあったかのようなベンチシートや、スーツ姿で立っている役者さんが、一つ一つ時間がゆっくりと、ただ確実に動き、空間が出来ていく。いわゆる箱の中で行う芝居と全く異なる。劇場に入ったときに既に完成している空間とは明らかに異質で、この場所のロビーにいるだけのはずなのに、開演時間が迫り、始まり、話が進むごとに別の場所へ、葬祭場のロビーへとすり返られてゆく。
その組み込んだ仕掛けの数に圧倒されました。緩みすぎない緊張感が一定に保たれているのも作品と合っていて最後まで楽しく拝見させて頂きました。
満足度★★★★★
ポかリン記憶舎#17『冬の穴』を観て
まず会場についてビックリしました。
てっきりホールだと思ったら、
ホールのロビーに客席があるじゃないですか。
ロビーが舞台という不思議な空間。
ホールの入り口には、喪服の日下部さんが、
ドアを開けて案内してくれていましたが、
既に、この時点で私たち観客も一つの空間に、
入っているということは、物語が進むにつれて分かります。
物語は、淡々と開始します。
葬儀場なので、次々と弔問客が訪れます。
ある者は、淡々と。
ある者は、悲しみにくれてと。
ある者は、絶望に沈んでと。
死者を送ること。
死者を介して、残された生者が繋がり、
新たな縁が生まれていく。
失った過去を取り戻していく。
そこには、悲しみの底でなく、
希望の微かな光が満ちていました。
とても、不思議は空間と物語を体験しました。
まるで静かに森林浴をしたみたいでした。
日下部さん演じたホール係が、
学生時代の後輩である妊婦のお腹を触れて、
「思い出さない」という妊婦のセリフに、
何故かドキッとしました。
何となく過ぎし日の過去と人生IFを感じたからです。
ラストのホール係の親子の確執を、
二つの価値観でぶつけ合った弔問客同士の言い争いと、
その後のホール係の行動に、
希望の光を見た気がします。
この演出方法を知っていたら、
夜の公演が断然いいと思いました。
ホールの円柱の光が、とてもキレイでしょうから。