【ご来場ありがとうございました!】蜻蛉玉遊戯 公演情報 【ご来場ありがとうございました!】蜻蛉玉遊戯」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-5件 / 5件中
  • 201009031400
    201009031400@ギャラリーLE DECO

  • 満足度★★★★

    趣向ワカヌの残酷メルヘン。
    胸に秘めた想いを守りつづけたいと願う普遍的な気持ちと幸いを壊したくなる衝動、こころのなかに棲みつく魔物と根拠のない善とが「生きたい」という根源的な欲求を重心にせめぎ合い、交わり合い、嘔吐する、壮絶な争いを繰り広げていた。
    人間のドロリとした醜い業がぶちまけられたような舞台だったのになぜだろう。
    うつくしくてひかりかがやくおとぎの国にまどろみながらおさんぽしてきた気分になった。

    ネタバレBOX

    『キョウダイ』
    こころとからだ、血でつながっているふたりでひとつの『わたしたちきょうだい』が、だんだん大きくなるにつれ、わたしとあなたが違うことを自覚しはじめ、大人になって離ればなれになってしまったことを、遠い記憶から遡りモノローグ形式で綴っていく・・・。

    戯曲のファイルがブログからリンクしてあったので、事前に読んでから観劇しました。活字で目にした時は、おかっぱ頭で目のぱっちりしたうりふたつの無表情な女の子たちが手を繋いでるイメージを抱いたのですが、実際作品を観てみると、白いふんわりとしたワンピースをきた女の子たちが、自由にそこいら中を駆け回っていて、まるできょうだいが共にいきることを祝福しあっているような、躍動感に満ちていて、それは彼女たちの根源的な生命力を意味しているようにもおもえました。
    細胞レベルで繋がりあっている、彼女たちが、くっついたり離れたりしながら自我を確立し、互いから逃れたいと葛藤し、離ればなれになっていく様相は身体面ではよくつたわってきたのですが、台詞からは、それが伝わりにくかったようにおもえた場面もありました。私があらかじめ、戯曲を読んでいたからかもしれませんが・・・。実はこの戯曲を読んだ時に、ふたりが共にすごした時間が水のような透明感と響きを持ってさらさらと流れて行くような印象を持って。それが頭のなかに残っていたので、台詞が、1センテンスとして耳に入ってはくるのですが、音としてなかなか耳に響いてこなかったのです。
    たとえば、『わたし』という単語が3音に分解(分節)されて『わ・た・・し』と発音されたり、更に『わたしたち』と台詞を重なったりズレたりしていれば、もうすこし違った感覚で観れたかもしれません。また、きょうだいがはなればなれになって、今では互いの安否すらわからないという場面で、物語が立ち止まり、沈黙する瞬間があれば、もっと切ない気持ちになったかなぁ・・・と。
    ただこの辺りのことは、この作品の次に拝見した『天葬』では色濃く反映されていましたので、作品ごとに差異を出すために躍動感に絞った演出を意図されたのかもしれませんが。

    役者のふたりは、純真無垢な感じがよく出ていてよかったとおもいます。
    ただ、緊張していたのか、若干演技が固いような気もしましたが、後半はふたりの演技に引き込まれました。

    『天葬』
    天葬とは別名鳥葬と呼ばれ、その名の通り鳥が死体を食べるというチベットで行われるポピュラーな葬儀のことである。
    この方法で自身の葬儀を行うことを望んでいた父親がチベットで死に絶え、葬儀が行われたとの一報を受けた妻の嶺子、娘の美月、息子の陽司。3人のそれぞれの想いが静かに語られていく。

    家族には、家族だから言えること、家族だから言えないことがあるものだとおもうのですが、この家族たちは、その善し悪しを判断することはできるけれども、自身の出したアンサーを胸のなかにしまいこみ、他者に何かを問うことを遠慮してしまうひとたちなのだとおもえました。
    そして、時には自分の出したこたえが正しいと自らに暗示をかけてしまう。
    たとえば、天文学が得意な娘を、そういうのとは関係のない普通の大学に入れて普通な結婚をさせることが幸せだと思いこむ母の嶺子、姉や母と話すのが面倒くさくてひとり暮らしをはじめる陽司、仕事で世界中飛び回る夫に「戻ってきて」のひとことがいえない妻・・・。

    父の訃報を機に家族がひとつに纏まるというのは何とも皮肉。
    けれどもなかなかあと一歩踏み込めない彼らのけなげな強引さはとてももどかしく、微笑ましい気持ちにもなるのでした。

    『カーニヴァル』
    とある町で馬の頭を掻っ切って捌いて売ってる肉屋の女と一緒に暮らすひとりの少女。彼女の母はカーニヴァルの歌い手で、忙しくて面倒をみていられないから、女が預かっているのだという。もうすぐカーニヴァルがやってくる。果たして、ほんとうのお母さんは迎えにくるのだろうか・・・?

    『オルゴール箱』を開くとはじまる華やかなカーニヴァル。されど永遠には続かないカーニヴァルは、少女のみる夢も女のみた夢もすっかりシビアな現実としてひとまとめにしてしまって。

    ふたりとも、血のつながった母と娘であることを憎み、恨んでいるからこそ、
    他人同士のフリをする。
    それでも、少女が家を出たいと言うものなら、苦し紛れに『もうすぐほんとうのお母さんはやってくる。』と女は嘘をつく。
    だが、自分自身をだませないと悟った時、どちらかを殺さなければならないと悟る。
    とても恐ろしい人間の業がほとばしるような作品であったのに、片時も目が離せなかった。
    真っ赤な血を流しているのに、それが甘くて美味しいイチゴジャムにでも見えるような残酷だけどスウィートな世界。3作品みたなかでこのおはなしが一番わたしは好きだったかな。
  • みてきた
    ベンチの話がよかった。宮沢りえ似の女優さんがよかった。ベアトリス・ダル風で。
    イントレ席はおしりが死んだ。
    でもルデコは中学高校のときの教室公演を思い出すから賛否両論あるとは思うけれどわたしはだいすき。

  • 満足度★★★★★

    絶品!
    この日はスケジュールにぽっかり穴が空いて、破格の料金ということもあり、急きょ当日券で観に行った公演だった。しかし予想に反して素晴らしいものを観て、ものすっごく感激しちゃったよ。霊験あらかたな気持ちで真摯に観劇。
    今回の演目は「キョウダイ」「Sky Burial 天葬」「CARNIVALカーニヴァル」。前2つがオノマリコ、最後がモスクワカヌの戯曲。二人の共通点は繊細で美しい世界観だ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    「キョウダイ」
    二人の兄弟は小さなころから仲良しで2人で一つみたいにいつもくっついて楽天的にバカをやりながら遊んでいた。小学生になっても、中学生になっても、こうしてくっついて離れることはないのだと思っていた。先生にはもっと広い視野で友達を作らなくちゃダメだよ。なんて指導されたけれど、兄弟がいれば私は十分だと思っていた。だけれどやがて、兄弟は、なんだか少しずつ私から逃れようとしているようだった。その兄弟との境界は曖昧で安定していなかった。遠くの大学に行った兄弟はやがて音信不通になり、生きてるのか死んでるのか解らなくなった。かつて私には兄弟がいました。



    「Sky Burial 天葬」
    父親が仕事で多忙な一つの家族は姉と弟と母さんの3人家族みたいだ。姉は特殊な才能を持った自閉症だ。このことが父を仕事にのめり込ませ、母は姉に普通の娘になってほしいと思い悩む。それでも偏差値88の姉の日本語はオカシイのだ。姉は昔から人間嫌いだった。そんな家族が嫌で弟・洋司は家を出てしまっていたが、チベットで死んだ父が鳥葬をしたという話を聞いた洋司は家に帰ってくる。

    鳥に食べられた父と、姉を普通に結婚させて生きさせたい母、自閉症の姉、父にもっと家にいて欲しかった弟の家族の情景を表現した舞台。ワタクシは個人的にこういった物語が好みだ。父の気持ちも母の気持ちも、姉の気持ちも、弟の気持ちも解るからだ。それぞれの気持ちは痛いほど心に響いて、なんだか悲しくなってチクチクした。そしてじんわりと静かに泣いた。みんな、好きなように生きたらいい。そんな風に思えた美しい物語だった。



    「CARNIVALカーニヴァル」
    女は肉屋を営む。ちっさな町には楽しみなんてない。年に一回のカーニヴァルくらいだ。女は過去にカーニバルのサーカスの男に恋をした。カーニヴァルが終わると男は来年も必ず来るからと言って去って行ったのだった。カーニヴァルは幸せも不幸も持ってやってくる。

    あれからカーニヴァルは来てないが女には子供が出来た。しかし女は子供に、「貴女のママはカーニヴァルの歌手だから、貴女を育てられないの。だから私が預かった」と嘘をついて育て、その子は美しい少女となる。女は生きるために馬を殺し馬肉として売るが、少女はそんな仕事が嫌でたまらない。カーニヴァルがもう一度この町を訪れ、歌手のママがいつか自分を迎えに来てくれると信じ夢を見る少女。

    オルゴールの箱を開けると音楽を奏でピエロにマジシャン、カーニヴァルの歌手が歌い回転木馬は踊りだす。しかしその夢もカーニヴァルが来ればすべてが終わってしまうのだ。そのカーニヴァルが今年はやってくる。待ちわびる少女。しかし女は少女に本当の事を打ち明けるも、少女は「私がず~っと生かし続けてきた夢をおばさんが壊した。」と詰る。カーニヴァルは幸せも不幸も持ってやってくる。



    総括・・どの戯曲も素晴らしい。近すぎる「キョウダイ」の存在から離れたいと感じる心。墨絵を想像させるチベットの山々での優美な情景と現実を帯びた世界観の格差の「Sky Burial 天葬」。幻想の世界で生きる少女の「CARNIVALカーニヴァル」。、特に4人のカーニヴァル団が登場するさまは実に楽しい。

    この日は丸尾聡さん(世の中と演劇するオフィスプロジェクトM主宰)のトークの日だった。なんでも、モスクワカヌは丸尾の弟子らしいが、弟子のほうが師匠を上回る本を書くというのは珍しくない。
  • 満足度★★★★

    感性で観ることができる短編集
    キョウダイ:深い記憶に触れるような作品。オードブルです。
    compassion――共苦:次の瞬間がみえない綱渡りのような会話が楽しい。千木良さん好演。本日の作品の中では一番好き。
    CANIVALカーニヴァル:肉料理のような食べ応えのある、魂あふれる作品。神宮司さんの歌唱が素晴らしい。聞き覚えあるけれど何の歌だろう?

このページのQRコードです。

拡大