対話 公演情報 対話」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
1-6件 / 6件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    加害者側の発言はあまり聞くことがないのでフィクションではあるけれど膨大な取材に基づいているのだろうと期待してでかけてみた。冒頭の加害者の母の願いに被害者の父母が最後にどう応えるかを予想し、どのように2時間後にそこに着地させるか作者のお手並み拝見である(最近はどうもこういう嫌味なスタンスになりがちだ。そういう年頃なのだろう)。各人の建前、本音、自分も気づいていなかった内心が的確に披露され、大いに引き込まれた。役者さん、皆さん上手すぎだ。
    ただ沢山の事柄を全部盛りにしたところに作り物的なにおいをじわじわと感じてしまった。

    ネタバレBOX

    最後の「全部政治が悪いのだ」的な発言はそれまで一部出しては引っ込めを繰り返していたことをとうとう出し切ったという流れなので、それが作者が強く言いたいことなのだろう。ちょっと肩透かしを食らった気持ちだ。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    表現がきつく、不快・嫌悪感を強く感じる向きも居るだろうから観る人を選ぶ一面も。開始早々、被害者遺族が凄愴な心持ちを吐露する場面では、隣席の方が肩を震わせているのが分かる。重い題材を扱い、130分間8人の演者が出ずっぱりで主張し合うのだが、決して暗いだけに止まらず、演劇ならではのLIVE感と緊張感、醍醐味がたっぷり詰まったとても見ごたえのある舞台。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    近年評価の高まるオーストラリアの戯曲。
    粗筋と感想を目にして、これこそ自分が観るべき作品だと足を運んだ。
    入場時に「必ず開演前にお読み下さい。」と配られる紙。
    「一部、性暴力についての強い表現がございます。」との警告。「途中で会場を出ることは自身を守る行為です。」と不快なら我慢せず途中退場することを劇団側から促している。一体これから何を観せられるのか?異様なムードの会場。

    観客が体験するのは地獄の光景。2回レイプ事件を犯した性的サディズム障害の青年スコット。刑務所で臨床心理士にOKを出されて仮釈放、弟の働くスーパーに勤務。そこで美人で良家の出である女子大生の客に目を付ける。ずっと我慢しようと様々な方法を試みるもどうにもならない。彼女のマンションに侵入し、帰宅と同時に室内に滑り込む。両手を後ろ手に縛り上げ口を塞ぐ。お気に入りのSM雑誌のグラビアを見せて、想像の限りを尽くして凌辱。罵倒殴打内出血虐待暴力性行拷問屈辱苦痛懇願、詰め込まれたコーラの瓶。彼女は絶望の果てに死ぬが、スコットは「殺意はなかった」と語る。
    医療刑務所にて終身刑で服役中のスコット(声のみ山田貢央氏)。

    今日一室に集められた8人。
    被害者の父デレク(斎藤淳氏)、母バーバラ(安藤みどりさん)は今も地獄の日々を送っている。
    加害者の母コーラル(山本順子さん)、姉ゲイル(天明屋〈てんみょうや〉渚さん)、弟ミック(辻井亮人氏)、叔父ボブ(河内浩氏)。
    スコットを担当した臨床心理士ローリン(佐藤あかりさん)。
    「修復的司法」の調停人・ジャック・マニング(八柳豪〈やつやなぎたけし〉氏)。
    「修復的司法」とは罪に対して国家が罰を与える「応報的司法(刑事司法)」では、本当の意味での解決にはなり得ないとの考え方から生まれた。直接的な「被害者加害者対話」を通じて、被害者の回復と加害者の更生について当事者及び周囲のコミュニティの者が話し合うこと。性善説のようなぬるいイメージが付きまとうが、この試みに一体どんな意味があるのか?それとも何もないのか?は見てみないことには分からない。

    この場にいないのは加害者と被害者だけ。
    誰に一番感情移入して観ることになるのか?
    被害者の母親役の安藤みどりさんがヤバかった。

    ネタバレBOX

    いろんな感情や思考が渦巻き、まとまりがつかない130分。死者がいなくなるのは不公平だ。この世界は生者達のもの。殺された者に発言権はない。残った生きている人達で一番心が安らげる方法を選択することが正解なのだろう。

    加害者の家族は何もしていないのだから責めるのは筋違いというもの。だが被害者の両親の気持ちに誰もが共感する筈。出来ることなら顔を合わせたくないし、口もききたくはない。なら何故この場があるのか?

    「奴は娘の未来だけではなく、過去をも奪ってしまった。娘の思い出のアルバムを開こうとしてもどうしても開けない。この娘が最期に行き着く結末の光景が頭をよぎることで、楽しい優しい思い出すら全て残酷なものに変わってしまう。」

    娘の頬笑ましいエピソードを語り出す母。
    娘が自ら企画主催した誕生会、両親が良かれと思って呼んだサプライズのマジシャン。それに怒り心頭のエピソード。キッチンの壁の色が気に入らなく、自らペンキでカナリア色に塗り替えるエピソード。意地になってやったものの、それが失敗だったことを終いには認める。話の途中でふっと何かを思い出し、慟哭を堪らえられない父。

    「ふとした時に、神に娘のことを祈って下さい。」との母の言葉にはっとする。このどうしようもない修羅地獄を主観だけではなく、俯瞰する神の視点こそが心には必要なのか。
    この台詞と、「娘はもう死んでいるのよ。」の台詞が一番突き刺さった。
    どうしようもない現実の受容。
    そのどうしようもなさすら、時間に包まれていく。

    今作について正当な評価は出来ない。素晴らしい作品とは思わないが、ここまでいろいろ考えさせる(体験させる)ことに対して認めざるを得ない。

    Oasisで一番支持されている曲、『Don't Look Back in Anger』〈「想い出を醜い感情(怒り)で汚さないで」〉のことを考える。
    2017年5月22日の夜、英国マンチェスター(Oasisの地元)でISによる爆弾テロが発生。22人の死者、負傷者59人。哀しみと怒りに暮れた、犠牲者を追悼する集会で不意に一人の女性が『Don't Look Back in Anger』を歌い出す。段々と参列した皆が声を合わせて歌い出し、最終的には大合唱となった。このことが世界的に大きく報道されて、この曲はアンセム(この事件に対する民衆の心構えの象徴)となる。
    これを知った作詞作曲のノエル・ギャラガーは今曲の印税収益をマンチェスター支援基金に全て寄付した。
    初めに歌い出した女性はこう語る。「私達は起きてしまったことに対して後ろ向きになってはいけない。前を向き、未来に向かって行かなければいけない。」

    「そう、サリーは待っていてくれる
     共に歩くには手遅れだと知っていながら
     彼女の気持ちは離れていく
     けれど、『想い出を汚さないで』ってそう聴こえたんだ」
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/02/16 (木) 19:00

    135分。休憩なし。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    強姦殺人事件の被害者の娘の父母と、加害者の母、姉弟、伯父。さらに調停人のマニングと、性犯罪者の更生に取り組む心理療法家、8人出ずっぱりの会話劇。被害者遺族の夫婦は、怒りと憎しみをぶつけ、加害者の母は「私たちも痛みを抱えています」「それでも私の息子なんです」と許しを請う。弟は「殺人犯の弟」の烙印を押された恨み、終身刑の兄スコットに死んでほしいと、被害者遺族と同じ気持ちだと叫ぶ。大学卒の姉は、弟の貧しく放置された生育環境を考慮してほしいと自説をぶつ。心理療法家の女性は「彼は良くなっていた。釈放を求めた判断に誤りはない」と自己弁護する。

    遺族の母は「あなたたちは私たちの痛みを理解する入り口にも立っていない」と迫り「奪われたのは未来だけではない、娘の過去も奪った」と。アルバムを見ると、悲惨な最後に至ることが思い出されて、アルバムもみられないと泣き崩れる。
    どこにも救いの見えない前半から、どう何らかの結末を引き出すのか、目が離せない。

    出演者はみな熱演で、ヤマ場では本当に互いに泣いていた。加害者の母を演じた山本順子は、貧しく弱く哀れな母親そのものだった。2時間10分休憩なし

    ネタバレBOX

    最初互いに憎しみ、責任を擦り付け合い、自己弁護しあう。被害者遺族のバーバラが「娘の話をしたい」と、13歳の誕生日パーティーの思い出を語り始めるところから、雰囲気が変わる。さらにキッチンをカナリア色のペンキで塗り替えた思い出を語ると、父も急に言葉に詰まり泣き出す。そこで胸をつかれた。憎しみや怒りをいくらぶつけても人は共感しない。人を責めることをやめ、自分の悲しみ(弱さ)を見せた時、人は心を動かされる。これは万国共通の真理だ。

    心理療法家が、自分の判断ミスを認めるところから、次々と自分が悲劇を防げたのにやらなかった後悔を語り始める。かたくなだった被害者の父も、ついに「防犯ベルを買うと約束したのに、忙しくて買ってやらなかった」「学歴のないミュージシャンとの結婚を認めなかった」と懺悔を口にする。スコットを、刑務所内のリンチから守るための保護官房行きを、すぐには同意しないが、変わるかもしれないことをにおわせて終る。

    最後、マニングが「今日は何がえられましたか」と問うと、被害者の父は「軽くなった」と答える。「ラビットホール」のハイライト場面を思い出した。そこで幼い息子を亡くした母は、自分の母に問う。「悲しみは消えるの?」「いいえ。でも変わる」「どう?」「軽くなる、持ち運べるくらいに」と。

    自分の過ち後悔を口にすることで、浄化されるのは、キリスト教の「懺悔」と告解からきている作劇術ではないか。公開中のアメリカ映画「対峙」は、高校乱射事件の加害者被害者の4人の対話を描く。ここでも、加害者の息子、被害者のむずめの思い出を語るところから、心を開きだす。そして互いが自分の過ちを口にし、後悔を語ることで心が近づく。「対話」とよく似ている。ストーリーのモデルが何かあるのかもしれない。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    観客と非常に近接した演技空間で、あれほど緊迫したドラマを演技できる俳優たちの力量に舌を巻いた。
    サイコパス的な性犯罪者をめぐる加害者側家族と被害者側家族の対話で、最後はやや都合よく物語がまとめられてしまうきらいがあるが、登場人物たちが対話の果てに事実と自分の後悔や責任に向き合っていく模様が描かれる。第1弾のときほどマニングは誘導的でない。

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