吐くほどに眠る 公演情報 吐くほどに眠る」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-20件 / 31件中
  • 満足度★★★★★

    見事な演出
    実に巧みで、見事な演出でした。

    ネタバレBOX

    物理学の世界では(専門ではないので俗的な話ですが)、
    生命活動においては時間とともにエントロピーが増大していくと
    いう話があります。つまり、エントロピーがある量まで増大すると、
    生命活動は終わる=死ぬということをさすわけですが、

    この話を無理矢理今回のお芝居に当てはめると、
    ある女の積み上がっていく人生とともに、
    無情に、それはまさに情の介入しない物理的な力で
    強制的に、女の人生が収束に向かっていく様は、
    観ていてはっとさせられるものがありました。
    演出家の人間という生き物にたいする深い観察力と、
    生命に対する思慮深さと、豊かな感受性、
    何よりそれを表現する演出力に
    脱帽するばかりでした。

    年齢を重ねていく中であるとき問題が起こると、
    それも一番ヘビーなのは家族の問題なのですが、
    人はそれまでの積み重ねを振り返り、
    時に懐かしさを感じ、時に滑稽さと不思議さを感じ、
    時に身震いするような気持ちになるものです。
    一生を綴る物語はわりとよくある手法ですが、
    (それはそれで面白いのですが)
    これだけ、グロテスクなくらい真面目に、
    人の人生の積み上がりに向き合えるのは、
    演出家の人間性の高さと
    類い稀な才能というほかないでしょう。

    配役を固定しない演出も◎でした。
    斬新で奇をてらうというよりは、
    むしろ純粋に丁寧にストーリーだけを追わせてくれる
    観客への配慮がなされている気すらしました。
    「配役」などどうでもいいのかもしれないと
    思わせてくれた点では、
    この演出はもう本当に最高です。

    一方で、最後に服を全部消化しないというところが、
    演出上の落ち度というよりほかなく、
    ラストに向かうにつれて物語の緊張感を緩慢にしてしまった
    (終わるのか終わらないのかわからない)
    ことは多少なりとも残念だったかもしれません。

    いやはやそれを差し引いても
    じゅうぶんに素晴らしい作品でした。
  • 満足度★★★★★

    哀しくてやりきれない。
    ガレキの太鼓第4回公演、「吐くほどに眠る」を観る。この作品を25歳(くらい?)の子が書いたということにまず衝撃を受ける。仮題では確か「女の一生」というタイトルだったと思うが、まさにひとりの哀しい女の一生の物語だ。

    今回チラシが衝撃的なほどにエロい。(褒め言葉)そして「ひざまずいて許しを乞えば、どこから始められるだろう」というコピーが付いている。今日の芝居を観ながら、主人公がもし許しを乞えば、どこからやり直すことが出来たのだろうと思った。全ての人間が幸せになりたいと思っている。それにも関わらず、不幸へ向かってどんどん突き進むタイプの人間がいる。今日の登場人物もそんな感じ。ラストシーン、ああなるしかなかったのかと思うと、涙が流れた。

    ※観てから二日たったが、印象が薄れるどころか、ますます心に染みてきた。この素晴らしい作品をなんで4星にしたのか、自分で自分がわからない。ということで、5星に訂正する。申し訳ない。

  • 満足度★★★★★

    技巧すぐれた作品
    見せ方がうまく、終始飽きませんでした。男性不在がプラスに働いています。テーマの重たさをあまり感じさせない、ほどよい味わいでした。

    ネタバレBOX

    多役の切り替えや、服の着替えが心地よいテンポを生んでいました。
  • 満足度★★★★★

    良かったです
    話自体はとっても暗く重いのですが、決して面白くないわけではなく楽しませてもらいました。自分の足りない頭で、脚本家先生が言いたかったであろうことは、こうだったのではなかったのかと考えさせられる芝居でした
    個々の役者さんの演技も素晴らしく、また次を見たいと思わせてくれました。

    ネタバレBOX

    暑い中、劇場前で道案内してくれたり、スイカを準備してくれていたりありがとうございました。
  • 満足度★★★★★

    新・舘そらみワールド
    「さあ、次はどんな作品を作るんだろうか」
    終演後さっそく様々な期待を次回作に持たせられてしまいました。まさにターニングポイントになる作品ではないでしょうか。
    前作『止まらずの国』から2度目の観劇となる方は、前作との違いに戸惑うのではとも思います。第4回公演にして早くも新境地を開拓したかのような今作、でもそこには確実に「舘そらみの世界」が広がってます。
    …舘そらみサンの世界って、スゴく魂を感じます。物語を観て楽しむというよりも、個人的にはその「作り手の魂」に触れられるのがもう楽しくてなりません。
    さて。終演後、すぐに席を立ちづらかった自分がいまして。『わが星』を観た多くの人から「すぐには立てなかった」というような感想を聞いていたので「え?これがその感覚!?」とかチョット思ったりもしたのですが…終わり方が予想と、好みと違った為に消化するのに時間かかっていうのが、今思えば、のトコロです。
    どうなんだろ…終わり方、個人的にはもうちょっとなんか欲しかった気がするのですか。なにかもう一歩ブッ込んで頂けてたら、それこそ「すぐに立ちづらい」衝撃を頂けた気もします。

  • 満足度★★★★★

    ハマっちゃいました!
    巧妙な罠に、ハマった!って感じ。はまって、悔しいのではなく、あまりに見事なので、賞賛の拍手をしてしまうような感じです。ハイ!次の作品も必ず観たいと、思ってしまいました。

    他の方々の素敵なレビューがあるので、ネタは、個人的な感想です。

    ネタバレBOX

    リレーの様に、演じる役者さんが変わるのに、何の違和感も感じさせない、役者さん方が、見事でした。

    服を着る(変える)事で、<なお>の喜びや時を感じ、服を脱ぐ事により、悲しさや苦しさを、拭い去りたい心を感じました。演じている横での、生着替えなのに、ドタバタ感もなく、床に散らばる洋服達が、<なお>の心の中で、積み重なる痛みの様でもあり・・・<なお>の親友が、過去の恋愛を語りながら、服を脱ぐのも、<なお>とは違う、前向きさを語り、その辺の服を無造作に、おなかに入れて妊娠を告げるのさえ、彼女の、あっけらかんとした楽天的な性格を語ってくれたように思えました。

    私も、もちろん!ハッピーエンド好き(ハッピーエンドでなくても、かすかに差し込む光の気配が無ければ、嫌!)ですが、この作品には、重さもあるが、一種の解放感が残りました。<なお>の思い出には、愛も優しさも温もりもあるが、その陰で、本人も気付かない振りをしてきただけの辛い事を、あのような形にしてでも、やっと、解き放すことができ、安らかになれたと思う。
    どんなに抵抗しても、どんなに戦っても、勝ち目の無い、{眠り}と同じ引力によって・・・
    それが重すぎるかもしれないが・・・

    終演後、劇場を出たら、きれいな満月が・・・見ることができる喜びを、感じさせてくれた舞台に、感謝です。 
  • 満足度★★★★★

    ステージスタイルも素敵な
    なつかしいイメージ、演者や照明、セリフのはしばしに昔の記憶を思い起こさせる(かのよう)。そんな気のしたラストもそれはそれで受け入れられる。
    女子だけの芝居に切れ味があるのかな。舘そらみの作品をこのところ立て続けにいているが、引き出しの多さを感じる。

  • 満足度★★★★★

    暗いけど
    笑ったシーンはたぶん一箇所しかない。

    全編通して重い、暗い。
    でもグググッと引き込まれる感じ。

  • 満足度★★★★★

    なおの生きざま
    本当に素晴らしいと心から思う。この作品の前で頭を垂れて平伏したいくらいだ。物語の最後は破壊的で衝撃的だが、全体を通すと、優しげで温もりのある物語だと感じた。

    ワタクシの琴線にこの本がチクチクと刺さって泣けた。

    物語はなお(木崎友紀子/青年団)が舞台左で語り部のように過去の生きてきた情景を話して聞かせながら進ませ、その模様を舞台上で演出するという方法。序盤、彼女は誰に向かって語っているのか気になったが、中盤頃になって尋問を受けているような感覚に陥る。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    物語は序盤、家族の風景から始まる。対照的な兄と妹。「にいに」と呼んで兄を慕う妹・なおは聡明で思いやりがあって優しい兄が自慢で大好きだった。

    しかし、両親の繊細で弱い部分を全部受け継いでしまったような兄は、思春期に入るとあまりにも世の中に順応できなくなってしまい、中学3年で心臓が痛いといって自宅に閉じこもるようになってしまう。いつも自分を守ってくれてた兄が、汚い臭い存在になって、なおは兄に「気持ち悪い!」と棘のある言葉を吐いてしまう。

    その日のうちに兄は首釣り自殺未遂を犯し、一命は取り留めたものの逃げるように留学してしまう。しかし、なおの心にはこの時のショックが、自分の身に起きたことが、いかにおぞましく、この先の長い道のりに消えない何かを押し付けられ膿のように蔓延ってしまうのだった。

    このことがあって以来、なおの家族は少しずつ家族崩壊の兆しが見え隠れし、やがて母は若い男(のちに伯父と判明する)と家を出て行ってしまい、なおは「いつか母が死ぬのではないか」とそればかり考えるようになってしまう。

    この世の不条理は己の身の上に押された烙印の深さをも思い知らされるが、この先もずっとこの痛みから逃れられないことを幼くして知り、なおの孤独は痛みと一緒になおの心に同居しけっして離れないのであった。

    やがてなおは高校でバンドを結成し、恋愛もして、あたかも普通の女学生のように青春を謳歌しているように見えたが、大学生になってからの恋は「死ぬ」と簡単に言葉にするような、しょもない男との恋愛に縛られ離れることが出来ない。それは過去の兄の自殺未遂がトラウマとなって「死」という言葉に対しての恐怖がなおを呪縛するのだ。

    一方で高校のバンド仲間のえみ(高橋智子/青年団)がなおの良き親友となるが、彼女はなおを見守り手助けするポジションだ。えみがとっかえひっかえしながら付き合う男性遍歴の描写が実に面白い。男の数だけ服の数で見せる演出はお見事!笑)

    やがて大人になったなおは就職、結婚を戻ってきた実母優先に配慮しながら、決めていく。兄と社会を繋いでいるのは自分だという気負いも重なり、なお自身の心が少しずつ病んで破壊へと向かっていってしまう情景だ。更に兄の事故死の原因は自分だと罪の意識に苛まれ「私のせいでみんな死んじゃう!」という心の縛りに苦悩していた矢先、悪いことは重なるもので、その病院の屋上で「死にたい」などと、死ぬ気もない女から告白された言葉をなおは真に受けてしまう。

    元来、「死」という言葉に敏感ななおは、かつて経験したあの時の出来事が・・、なおの目に深い亀裂のような恐怖と絶望と屈辱が混じり合い、もはや拭い去ることの出来ない印が自分の上に刻み込まれてしまった、あの兄の事件が重なり合って、女を止めようともがき合ううちに誤って女を屋上から落下させてしまう。

    罪。二人も殺してしまった罪。いつか自分を振り返り過ごした時間に時代という言葉を冠するときがくるなら、青の時代があり、そして赤の時代があり、しかしその全てもやがて潰えてゆく。私は「死」の恐怖に怯えながらも、それなりに懸命に、そして健気に、私は私なりに生きてきたのだ。青い血をかつて流したことも、自分が犯した罪も、私が私を深い海に沈ませることで容認されるだろうか?許してください。

    こんななおの心の叫びを想像してしまう。
    過去に蔓延った心の闇ゆえに自身自身を、かつて兄がしたように首吊り自殺を実行し破壊することで終わらせる。という幕引き。


    素晴らしいと心から思う。個々の人生のドラマは死ぬ間際になって悲喜こもごも理解出来るというが、きっとなおはやっと楽になれたのだ、と思いたい。

  • 満足度★★★★★

    ゾクっときました
    最初の語りから引き込まれてはいたんだけれど,乱雑な舞台ところころ替わる役回り,途中までは混沌とした舞台だという感が抜け切れませんでした。とこどが後半にはそんなことも気にならないほど,深く見入ってしまいました。観劇後も考えさせられてしまいます。後引いてるなぁ^^;とにかく遠くまで出張っていっても観る価値のある芝居でした。

  • 満足度★★★★★

    主人公の歩んだ道を追体験するよう
    「複数一役」+「一人複数役」で語るある女性の半生。
    序盤の少女時代の兄妹愛・親子愛で気持ちをワシ掴みにされ、以降流暢な語り口にガッツリ引き込まれて主人公の歩んで来た道を追体験するよう。
    しかし妙齢の女性に舞台上で着替えられると気が散るし、一斉だと目のやり場に困ってしまう…(爆)

  • 満足度★★★★★

    ものすごい重厚感
    遠いから少し迷ってはいたのですが、拝見しました。
    予期していた作風とは異なり、非常に驚きました。観劇後、何と言葉にしていいかわからなかったのですが、一言、圧倒されました。重い大きな塊をドシンと受け取った感じです。

    ネタバレBOX

    舞台上で着替えられていく衣装、出番じゃない役者さんたちのシーンを見守る目、語られていく言葉の変化、全てが何重にも絡み合いひとりの人間の人生の重さを感じました。
    暗いお話なのに、どこか愛を感じられる素敵な作品。見て良かったと、見させてもらえてよかったと素直に感じます。人間味溢れる作風は健全でした。やはり彼女の作品は愛に溢れててとても好きです。優しい、優しい作品ですね。ああ、人間って、いい!
  • 満足度★★★★★

    傑作です
    一人のストーリーテラー。それが主人公でもある。そしてそのストーリーを一人二役ならぬ多人数多役で演じていく。それも舞台に吊り下げられた衣装を次々と着替えながら。観た人にはわかるが、観てない人にはどういう感じの舞台かを説明するのがむずかしい。この舞台を観た人たちは幸運である。作家演出家の才能に舌を巻く。

  • 満足度★★★★

    こわれゆく女
    フィルムノワールの佳作を観たような印象。
    (演劇にフィルムノワールに当たる言葉ってあるのかな?)
    人生の道半ばにして正道を踏み外した私は、目覚めると深い森の中にいた…。
    目覚めた女に語り掛けられているようで、語りべの俳優を直視できなかった。
    なるほど、これが舘そらみか。と言い切れないので次も観よう。
    それにしてもAPOCシアターの椅子は腰痛持ちには辛うござる。

  • 満足度★★★★

    半生を語りきる力も凄いけど
    押し込めた感覚も、
    端折られた雰囲気もなく、
    語られていくものの厚みに引き入れられて・・・。

    戯曲や表現方法、
    さらには役者たちの秀逸からやってくる
    女性の半生のボリューム感に魅入られつつ・・・。
    でも、そのふくらみから
    精緻に浮かびあがり
    溢れだしてくるものの質感、
    さらには、
    あからさまになった深淵と向き合う
    女性の姿に訪れる心情にこそ、
    息を呑みました。

    ネタバレBOX

    開演前から、
    役者たちがときどき舞台で衣裳を扱ったり・・・。
    やがて舞台中央の台に6人の役者が乗って・・・。

    舞台上手に座った女性の語りから
    物語は始まります。
    その語り口が、いきなり飛びきりのしなやかさ。
    誘いこまれるがことく
    彼女の世界に包み込まれる。

    女優達によって演じられる記憶たちが
    冒頭の女優の語りに束ねられていきます。
    エピソードの一つずつに
    その女性の個性が織り込まれて・・・。
    幼少時代の記憶、彼女にとってやさしい兄へのあこがれ、
    母親への想いと、母親からの距離感。
    ランドセルのこと、
    縄跳び歌とともに広がるその時間たち。
    断片から、家族の肌合いが浮かび上がる。

    やがて中学生になって、
    兄の引きこもりの顛末や
    母親が出ていくシーンの違和感なども、
    しなやかに織り込まれていきます。
    さらには高校生になって
    男性とのこと、サークルや友人のこと、
    バイトとのこと、そして就職のこと。

    彼女の匂いを感じさせる表現が
    時間の流れにむすばれていく。、
    役者たちが舞台上で衣裳を次々に変えながら
    ロールを組み替えて演じていくことで、
    舞台上に様々なアスペクトと変化が生まれていく。
    その広がりが
    そのまま彼女の人生の質量というかボリューム感として
    伝わってくるのです。

    すべてが暗い色合いに塗りこめられているわけでもなく、
    明るい刹那もしっかりと描かれていきます。
    幼いころの毎日も、世間から見れば格別不幸だったわけではない。
    学生の頃のことにしても
    バンドの抜けるような明るさに目を奪われたり・・・。
    (演奏がしっかりと作りこまれていてびっくり)、
    花嫁衣装を夫に見せる時の小芝居の
    心浮き立つ感じなど、
    どこかこっぱずかしくて
    観る側までときめかせてくれる。

    でも、それらの日々が浮かぶのと同じ肌合いで、
    彼女の奥底の満ちていない部分が
    自身が解きほどく記憶のなかに
    しなやかに込められていて。

    その欠落感にゆがめれた事象たち、
    兄の留学や母の出奔への誤解、
    遠距離恋愛の拒絶、友人への依存、
    就職を決め方も・・・。
    抱えきれず溢れだすそれらの感覚が
    ときには深くから滲みだし
    あるいは突出して観る側を染めていく。
    きっとそれは、
    そこまで語って部屋に戻る
    語り部が思い出すのと同じ色をしていて・・・。

    そう、そこまでが、
    そこまでに語られ描かれているから、
    結婚後の時間を思い出す彼女の内心も
    観る側にそのままに伝わってくるのです。
    兄の留学のことも、
    兄の死のことも、
    自らの抑制から離れるように
    満たされない部分に流し込まれる自責の想いも、
    抑制の出来ない部分が招いたその事件のことも・・。

    終盤の、彼女から醸し出される想いには、
    冒頭から綴られる物語の背景を悟った観る側を、
    さらにしっかりと捉える力がありました。
    最後に彼女からやってくるものは
    観る側にとって、
    言葉に置き換えたりとか、
    涙を流したりとか、
    怒りを感じるとか
    そんなことができるほどシンプルな感覚ではない。
    しいて言えば、感覚の失せたような、
    立ちつくすような、
    抑制できないものに
    抗い疲れたような感じなのですが、
    それは、彼女の半生を潜り抜けない限り
    きっとわからない(表現されえない)類の質感にも思えて。

    彼女の遺書のような手紙の言葉や、
    そのあとのひと時の所作の間が
    すうっと腑に落ちて息を呑みました。

    よしんば、
    話題となった前回の公演とは違ったテイストであっても、
    この作・演出の手練、
    さらには浮かび上がらせる空気や質感の非凡さを
    終演後の余韻のなかで
    しっかりと再認識することができました。

    まあ、作品として、さらに昇華する余白が
    皆無ではないとは思います。
    初日の常で、
    前半は役者にかすかに空気を探るような部分も
    感じられたり・・・。
    でも、公演を重ねるに従って
    必ず伸びていくお芝居でもあるようにも思う。

    APOCシアターも
    慣れれば
    思ったほどは遠くない劇場でもあり・・・・。

    木崎さんの語り口には、
    最初の一行からがっつり魅せられるし
    お芝居を貫く存在感を感じるだけですごい。
    他の役者たちの舞台を構成する力も秀逸で、
    張りをしっかり持った演技や、
    主人公の半生の質量を感じる段階で、
    もう、常ならぬものにたっぷり満たされて・・・。

    そして、終演前の長い暗転に至るまでのあの想いは、
    この舞台でしか、体現できない気がする。

    ほんとお勧めの一品かと思います。

    ○○○●●◎☆☆
  • 満足度★★★★

    とても良い
    観る前は暑かったり疲れていたりで心がざわついていたのだけど、観終わると静かな気分になっていた。演劇を観ている間に、意識がどんどん自分の内面に向かっていったからだと思う。こういう演劇は好きだ。観ている間、まるで自分が精神科医のような、あるいは、カウンセラーに観てもらっている患者のような気分になった。

    ネタバレBOX

    毎日のように訳のわからない事件が報道されているが、そういう事件の犯人は、たいてい心が病んでいる。主人公の心がなぜ心が病んでいったのか、この物語の中で、よく描けていると思う。ラストに希望はないが、これはこれでいい。安易な希望が提示されないから、自然、観客は考えようとする。本当はどうであればよかったのか。答えなんか見つからないけれど、そうやって無意識の内に考えたりすることで、どこか癒されていく自分がいた。
    この劇団・演出家は初見だが、次回公演もぜひ観てみようと思う。
  • 満足度★★★★

    記憶と罪と贖罪
    とにかくうまい、役者も演出も構成も。
    役者のパフォーマンスの引き出し方や、舞台での配置&構成、そして、それらすべてを含めた演出が巧み。
    それに、きちんと応えている役者もいい。
    装置(セット)もとてもうまい配置で効果を上げている。

    ネタバレBOX

    ある女性のモノローグから始まる。
    どう見ても普通の状況ではない状態で、自身のこれまでについて語る女性。

    女性の記憶の中で、彼女と家族、主に「兄」について語られていく。
    しかし、「兄」について語っているようで、実は、その先には確実に「母」がいた。
    表層的には、兄との暗い記憶の中で、母とのねじ曲がってしまった関係が、語られていくのだ。
    それがいつも彼女の根底にあり、「家」から離れられない。つまり、「家」=「母」なのだ。

    その関係によって、彼女の友人との距離感がうまくいかない。
    ただし、友人には恵まれていた。
    記憶はいつも美しい。その時代は輝いてしかいないのだ。

    彼女の輝ける時代は、「家」を意識しなくてすんだ、つまり、家から通える範囲に生活があった高校生のときまでで、それは彼氏の遠距離によって少し歪んでくる。

    これは、あくまでも「女」の物語であり、「男」には「顔」がない。父親の存在も希薄だ。

    舞台の上で、女性たちは衣装を頻繁に着替える。
    そして、着終わった衣装は、記憶のように舞台の上に脱ぎ散らかされる。それは記憶の中に澱のように堆積していく。
    友人が過去の男について、語るときに、1枚1枚衣装を脱ぐたびに男が変わっていくのだ。
    「服」というのは、とても大切なメタファーであり、具体的なモノでもあるということ。
    男性には理解しがたい感覚だと思う。
    このあたりの表現方法は、さすが女性ならではだと唸る。

    役者もとてもいい。
    同じキャラクターを瞬時に別の役者が演じてみせる。
    しかし、違和感は一切ない。体型も年齢も、もちろん顔もまったく違う女優が演じているのにだ。
    女優さんの名前はわからないが、主人公の友人を演じて、付き合った男を語ったり、結婚式のスピーチをした方が、特に印象に残った。その明るさと優しさが主人公を支えていたのだと実感できる演技だったと思う。

    ただし、あのラストは好きではない。というより嫌いだ。
    冒頭から、普通の状態ではない場所と状況にある主人公が、とる、最悪の選択ではなかっただろうか。
    あの重苦しい雰囲気からは、そのラストが直線で結ばれているようにしか見えなかったからだ。安直だ、とまでは言わないが、もっと考えてほしかったと思う。それは、演劇のストーリー展開という意味においても、主人公の記憶を見せられた観客の気持ちにおいても、だ。
    主人公は、兄対する罪の意識と、後に判明する母に対する罪の意識が重なり合ってくる。それによってさらに追い詰められたとしても、赦しはどこかにあるのではないだろうか。「眠る」は「赦し」ではないのか。
    甘い、と言われるかもしれないが、ラストは、彼女が本当に愛していた家族に救われるべきではなかったのか。
    それは幻であったとしても。
  • 満足度★★★★

    男、いらない。。。
    語り手以外の全出演者が全部の役を演じていると言ってもいいのに、ただの一度も「これ、誰?」と、思わなかった。スゴイことだと思う。なぜかわからないけど、全然混乱しなかった。着替えのせいじゃないと思うので、目に見えているものより、役の性格付けがしっかりしているかの中身が大切ですね。(星の王子様みたいな言い草だな。)お母さんがにいにいに冷たかった理由、出て行った理由(しかも、いつの間にかカムバック)が知りたかった。(私が聞き逃した?)とても素晴らしい脚本とそれに答えた演技陣。見ごたえのある1時間半。千歳船橋まで行く価値あり。

  • 満足度★★★★

    良作
    これは良作。チラシのクオリティに負けず劣らず。演出にも感動。

  • 満足度★★★★

    複数の役者が演じてもぶれない
    上手の椅子に座って、自分の半生を語る女性。そして、その語られる時代を、他の出演者が複数の役を演じ分けながら進んでいく。
    で、同じ役(といっても時代が違う場合おあるが)を複数の役者が演ずるのだが、これがどの役者が演じてもきちんとその役を感じる事が出来た。お見事でした。
    何故自分の半生を語っているのか、わりと序盤でわかってしまったが、非常に面白かった。

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