満足度★★★
笑いの先にあるものは何だろうか。
開演前、佇むセットを見て「どん底」風なのかな? と思った。
ただ、「どん底」のストーリーをほとんど度忘れしていて共通点があるのか、そこから想起されたものがあるのかを確認できなかった。
訪れた者たちの衣装は「かもめ」の舞台衣装だとストーリー上で語られていたから、むしろチェーホフからだろうか。
『神様とその変種』の時、私は「セチュアンの善人」がイメージに出てきたのだが、ケラさんには何か過去の名作をケラ風にという意図でもあるのだろうか。
内容のほうだが、近作同様3時間の長丁場を笑いで上手くつなぎ退屈はさせない。
しかし、見終わって何を自分は得たのかといえば、「何も」と思っている。
もちろん何かを得る必要があるわけではないし、何もない演劇というのも素晴らしいと思うのだが、上演中あれだけ笑っていた自分と、観終わった今の自分の違いは何かと考えてしまう。
前回観た時は大倉さんが芝居世界からはみ出し気味だったと思ったが、今回はしっかりといきていた。
「ここは自分たちの町より酷い」と頑なに信じる姿、相手を自分たちよりも下の者だと思いたがり、施しをしようとする姿に普段の自分や、周りの人間の姿を見た思いで笑ってしまった。
善とは何か、差別とは何か、人間とは何かと意識的に考えることができるのはいいことだと思えた。
ラスト、人々が消えた後、建物がライトで縁取られたとき、それまで3次元だったセットの町が2次元の書き割りになったことが印象的だった。
休憩中に後の方で、小男ばかりが出ているのでキャラクターの区別がつかない、といったことを喋っているのを聞きクスリとした。
おもしろかった、けど
ケラさんらしいテイスト。前半は"説明"にあるように、「差別とエゴ」を出発点に、けれども、どこへ行くのか迷走に迷走を重ね、あ、そっちにいくの?みたいな。