満足度★★★★★
絶賛!ただただ静かに沁み入るような感動。「大事な事は普段から伝えるべきだ」
モリー先生との毎週火曜日の授業。
会話の中にあふれる、大切な言葉の数々。
大事なことは、最後には聞けない。伝えられない。
大事なことこそ普段から直接言っておくべきだ。
事務所創立30周年記念作品は、奇しくも3本とも先生を
演じることになった加藤健一さんは、常に凄い数の
戯曲を読んで、次回の公演作を選んでいるそうですが、
本作も日本初演で、実話に基づいた話。
舞台装置もピアノと机・椅子、ベッドなどの家具、
ベンチや枯れ木などいたってシンプル。
加藤健一さんと、高橋和也さんの二人芝居。
何の飾りもケレンもない真正面から取り組んだ芝居。
濃縮された時間・セリフ・演技。
舞台・芝居の根底にある面白さを改めて味わいました。
これ見よがしな悲劇ではなく、明るくてユーモアもあって。
ただただ、沁み入るような感動。
まさに、加藤健一さん、加藤健一事務所30周年記念に
ぴったりな作品だと思いました。
満足度★★★★
数年ぶりのモリー先生
原作のノンフィクションは過去に2度、それもかなり時間を空けて読んでいる。今回の舞台版を含めると、数年に一度はモリー先生の話に接していることになる。原作が出版されたのが1997年。
こういうポジティブな心を持った人物が現代にもいるということがすばらしい。死ぬまでに一度は、モリー・シュワルツという人物の人となりに触れてみるのも悪くないのではないだろうか。
教師と生徒の物語といえば、最近では湊かなえの「告白」なんていう怖い話もあるが、もともとは感動的な内容のものが多い。この作品もそういう伝統に則っている。
加藤健一事務所の翻訳劇を見るのは久しぶり。レイ・クーニーやマルク・カモレッティなどコメディ作品をやっているころはよく見ていた。
最近は感動的な作品が増えたような気がするが、かといってそのせいで足が遠のいたわけでもない。
久しぶりに見た今回は、翻訳劇を親しみやすく見せるという点で、やはりここはほかの劇団よりも一歩抜きん出ていると感じた。
満足度★★★★★
賞賛に値する真の感動作
かなり以前、「週間ブックレビュー」で紹介された時から、ずっと気になっていた作品の舞台化。もっと、朗読劇に近い雰囲気なのかと想像していましたが、さにあらず。私が過去に観た2人芝居の中でも、最高作の一つに数えられる、秀作舞台でした。
とにかくまず驚いたのは、高橋さんの役者としての進化の目覚しさ。過去にかなり高橋さんの舞台は観ていますが、こんなに硬くない彼の演技は初めて観たように思います。加藤さんも、ここ数年、幾度か台詞を咬むことが多々あったのに、この舞台では、そんな気配は微塵もなく、活舌も良く、本当に、お2人の演技表現が過剰にならず、シンプルだったので、自然に、このストーリー世界の住人になることができました。この年齢になっても尚、演技者としての進化を続けているお2人の表現者に、まずは、心底敬服の念を抱きました。
高瀬さんの演出も、作品の良さ、誠実さを損ねることのない、程の良さ。決して、過剰にならず、感動の押し売りもせず、ジワジワと胸に浸透する秀逸な感動の漣が心地良く感じられました。
モーリー先生の人柄と、その師に魅了されて行く生徒の心の交流が、実に自然に描かれて、間違っても、お涙頂戴ものの作りでないことが、何より嬉しく感じました。
良い作品があり、それを見事具現化した、キャスト、スタッフの、並々ならぬ力量の結集作。
モーリー先生の住居は、彼の心の内のようにシンプルで、清々しく、セット、照明、音楽、場転のスタッフの動き、全ての舞台表現が、この作品の良さを阻害することなく、テーマと一体化していました。
最後のカーテンコールの、観客から発せられる、本物の感動の拍手が、とても耳に心地良く、心の奥底までずっと響いていました。