夢の痂(かさぶた) 公演情報 夢の痂(かさぶた)」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★

    うん。
    強いメッセージ。胸に染みた。

  • 満足度★★★★★

    井上さんのメッセージがストレートに響く
    「東京裁判三部作」の最後にふさわしい、素晴らしい音楽劇。
    楽しい歌や笑いの中に、メッセージが光る。

    ネタバレBOX

    大本営の参謀・三宅が終戦直後、敗戦の責任を取って自害しようとするが助かってしまう。
    その後、親戚の骨董屋の手伝いで屏風を、元大地主で、旧家の主人に売りに行くことになった。
    売りに行った旧家には、30をすぎても嫁がない娘(国語文法の教師・絹子)がいる。彼女がお見合いを断っているのは、思いを寄せる男がいたのだが、戦争で失っていたことによる。
    その旧家には、天皇の東北巡幸の際の宿泊場所になったとの内定が来る。
    かつて大本営の参謀だったことから、天皇陛下のことをよく存じ上げているということで、絹子から、陛下をどのようにお迎えすればいいのかアドバイスをしてほしいと頼まれる。つまり、陛下をお迎えするための参謀になってくれと頼まれるのだ。
    元参謀の三宅は、陛下に扮して予行練習を重ねていく。
    実は、絹子は、陛下に一言申し上げたいことがあったのだ。

    「東京裁判三部作」の中の最後の作品にあたるのだが、前2作とは異なり、直接的に東京裁判が出てくるわけではない。
    しかし、東京裁判で裁かれる者(裁かれるはずの者)について、ラストの娘の訴えによって明らかになっていくのだ。

    戦争の責任が誰にあるのか、という主張は、「陛下に一言謝ってほしい」という娘の願いに込められている。
    責任があるから謝ってほしいということなのだ。しかし、それは、大元帥であった陛下に責任があるということだけを主張しているのではない。

    一番上の者が謝れば、その下の者も、また、その下の者、そして、国民すべてが責任について考えることになっていくという主張と、陛下の一言が、国民にとっての救いになり、復興の原動力になる、という主張は重い。

    東京裁判について国民の多くが無関心だったこともあるのだろう。

    そして、国語文法の教師である娘・絹子が主張するのは、文法から読み解く日本語と日本人の特性だ。

    例えば、「日本語には主語がなくても成り立つ」から「主語は隠れやすい」。そして隠れる場所は「そのときの状況」である。ということ。

    また、8月15日より前は「本土決戦は日本人の使命である」と主張していたスローガンの中の「本土決戦」を、8月15日をすぎれば、「デモクラシー」と入れ替え「デモクラシーは日本人の使命である」をスローガンとしても通じてしまう。
    日本語は名詞に「は」を付ければ簡単に主格になってしまう。つまり、その時々に一番強い言葉に「は」を入れてしまえば、りっぱなことを言っているように見えてしまうということ。
    だから、戦中と戦後にまったく反対のことを主張していたとしても、それには誰も違和感を感じないということなのだ。

    それらの中で、われわれが感じ取らなければならない「戦争の責任」。
    「誰に責任がある」と戦犯を捜し、糾弾することではなく、戦争にかかわったすべての人に責任があるということからスタートすることの大切さ、つまり、そこからスタートすべきであったということを示しているととらえた。

    そうしたことをきちんと済ませてこなかったこと、についての問い掛けや反省が、この舞台に込められているのではないだろうか。

    「主語を隠してしまう」と言う、その気分と気持ちは今も日本人の中に続いている。
    つまり、きちんと反省してこなかったことで、また、簡単に主語を状況や に隠してしまい、同じ過ちを繰り返していく可能性があるかもしれないということだ。

    ラスト近く、絹子が陛下に扮している元参謀の三宅に問い掛け、三宅がそれに対して思わず答えてしまう展開は、笑いながらも、笑えないという、重さがある。

    井上ひさしさんの、強いメッセージが台詞に乗り、見ている者の心にぐっとやって来る。

    音楽劇という、一見優しいカタチをとりながら、その実とてもきつい真実を述べている、本当にいい作品だと思う。

    全回ともにラストに共通する歌もよかった。しんみり。
  • 満足度★★★★

    素晴らしい。
    小劇場でも細かい演出が行き届いている素晴らしい劇団はある。が、ベテラン、有名、実力などの要素が詰まった役者が演じるそれはやはり一味違う。常に計算された動きで、喜怒哀楽が細かく盛り込まれており、安心して見られた。マナー違反も(私の周りの席では)いないし、観るほうも、演じるほうも明らかに違う。これは単に小屋の違いだけではないと思う。

  • 満足度★★★★

    謝って欲しかった!!
    日本語の文法を通じて、主語、すなわち時代の主役を考えるところは井上さんらしい。

    ネタバレBOX

    角野卓造さんの検分(下調べ)予行演習のための仮天皇役は秀逸。

    どうして一言すまなかったと言ってくれないのかの問いに、古来天皇は謝罪しないのだとの回答。そうだったのかあ。

    「すまなかった」の仮天皇の発言で泣けるのはどうしてでしょうか?天皇の戦争責任を問い続けていた井上さん、私も昭和天皇からこの言葉を聞きたかった一人です。

    天皇と民衆を隔てる壁を金屏風に例え、仮天皇は金屏風を抱いて崖から飛び降りる…、象徴的な行為です!

    退位はしなかったけれど、垣根は低くなったのかもしれません。

    佐藤家次女の額縁ショーの影響でお泊りは無くなってしまいましたが、みんな幸せになってめでたしめでたし。
  • 満足度★★★

    天子様から国民の象徴へ
    天皇陛下が天子様といわれていた戦前、戦後に陛下が行幸されることになった東北地方での話。角野卓造さん、三田和代さんは安定した演技。3部作の終章。これから新生日本が始まったのである。

  • 満足度★★★★★

    劇場は夢の真実を考えるところ
    こまかいところまで丁寧に演出が行き届いていて、初演よりもぐんと理解が深められたように思います。三部作の最後を飾るにふさわしいエンディング。
    井上ひさし全戯曲の初演記録など、劇場で販売されているパンフレットがすごく充実しています。
    神野美鈴さんが素晴らしかったです。

    ネタバレBOX

    終戦から2年経った東北地方の元地主宅。巡幸する天皇陛下が泊まることになり、その予行演習をする場面。かたずをのんで見守りました。この劇中劇のように天皇が責任を取って退位していたら・・・日本はどんな国になっていたかしら。
    「劇場は夢を見るなつかしい揺りかご 夢の真実を考えるところ 夢の裂け目を考えるところ」

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