アリの街のマリアとゼノさん 公演情報 アリの街のマリアとゼノさん」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    1950年代、まだ戦争の傷跡が生々しい東京の下町 台東区・隅田川言問橋のたもとに実在したバタヤ(廃品回収業)部落、アリの街が舞台。物語は、そこで社会奉仕活動を続けた北原怜子(さとこ)さんとポーランド出身のゼノ修道士を中心とした実話を舞台化したもの。今の世に当時の時代背景を描いて、どこまでリアルに伝えることが出来るか。そして描かれているような尊い教えと活動を強く訴えると、宗教への過度な依存といった印象、偏執した啓蒙劇といった捉え方をされる危惧がある。その微妙な感情というか感覚を回避するための観せ方、それが演劇×生演奏×ダンス×歌といったエンターテイメント作品にした理由のように思える。彼女の足跡を忠実に描いた評伝劇、その時代背景は、今の日本におけるコロナ禍、世界に目を向ければ侵攻といった状況に重なる。特に国内では自主自立と共助を強く意識させる内容だ。

    公演は約3年の時を経ての再演になるようだが、今 上演する意味は何か。当日パンフに主催挨拶として岩浦さち さん(アリの街実行委員会/自由の翼)が、「再び『戦争がもたらすもの』を考えたり、『現代を生きる私たちの精神的な糧になる何か』を追い求めたりするときに、お客様の『道しるべになるヒント』が落ちているかもしれない」と記している。慈愛に満ちた内容が、どれほど今の社会に伝わるか。28歳で夭折した社会活動家がいたこと、その活動を知ることが出来たこと、その人生について大いに学んだ。
    (上演時間1時間30分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台セットは三角屋根、中央に少し高い台。上手に「蟻の會」と書かれたリヤカーがある。シンプルな作りにし、踊るスペースを確保する。三角屋根の上に生演奏をする来夢来人(ライムライト)のメンバー。楽器はベース、クラリネット、サックス、パーカッション、ギターである。

    物語は、北原怜子(升野紗綾香サン)がアリの街に通い出した頃から始まる。彼女は浅草にある姉の家に転居した際に、“ゼノ神父”ことゼノ・ゼブロフスキー修道士(松本義一サン)と知り合い、通称「蟻の街」のことを知る。「蟻の街」は小沢求(柳橋龍サン)、松居桃楼(中込博樹サン)がまとめ役となって結成された廃品回収業者の居住地である。リサイクルが推奨される現代とは違い、廃品回収業は「バタヤ(屋)」と呼ばれ、他人から蔑まれた仕事だった。他人から物を恵んでもらうのではなく、蟻のように力を合わせ、自分たちで生きていく自主自立した暮らしである。その例を復員兵夫婦の困窮を通して時代背景を描く。

    個人的な見どころとして、偽善だと指摘されたところ、二代目マリアが現れ自分の存在に迷う、この2シーンが印象的だった。
    第一…怜子の慈善活動を、街の世話人で文筆家・松居桃楼は偽善だと指弾した。松井は怜子に、自分たちは家で美味しいものを食べ、たまに子供たちに美味しいごちそうを振る舞う。そんなものは自己満足に過ぎない。子供たちはまた貧しい日常に帰っていく。「助けてやる」という気持は、助ける人が上で、助けられる人が下なのだ。真の同情は上も下も関係なしに、肩を並べて、一緒に悩み、一緒に苦しむこと。現代に通じる社会福祉…介護や看護、医療にも同じことが言える。
    厳しい指摘は、彼女の行動が傲慢としか見えなかった。そして示された聖書の一節に心を打たれた。「主は富んでおられたのに、あなたがたのために貧しくなられた。それは、あなたがたが、キリストの貧しさによって富む者となるため」。
    怜子は自らバタヤとなり、蟻の街の人たちと共に廃品回収業に勤しむ。怜子は傲慢から解き放たれ回心したのである。また彼女の行動によって、子供達の教育環境は段々と整えられていく。

    第二…病気療養のため、一時「蟻の街」を離れるが、その間に 二代目蟻の街マリアが現れる。自分の居場所を失ったかのような怜子に ゼノ修道士は、自分はあくまで道であり、人が通った後は何も残らない。人は当たり前に通り過ぎ、道の存在など気にしない。無償の奉仕とはそういうものと教える。怜子の行動は世界に発信され賞賛の声が多く届くが、その名声に甘んじることはなかった。やがて療養のため「蟻の街」を離れるが、死期を悟ると「蟻の街」に再び移住し、その地で夭折(28歳没)した。彼女の半生を忠実に描いているようだ。

    物語が重くならないよう、歌い踊る(バレエダンスのような)シーンを挿入し観(魅)せる工夫をしている。また生演奏が雰囲気を盛り上げ、心地良い印象を残す。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2022/10/09 (日)

    価格3,500円

    9日17時開演の千穐楽を拝見(90分)。

    2018年6月に同じ浅草九劇で『アリの街のマリアとゼノさん』
    2019年7月に北(ほく)とぴあのドームホールで『風の使者ゼノ』
    と過去2回も観ているので、アリの街の人々に献身的にその身を捧げ、病に倒れて早逝された”アリの街のマリア”北原怜子(きたはら・さとこ)氏をめぐる一連のストーリーは十分承知しているはずであった。
    にもかかわらず、脚本が整理された?のか、今回、改めて…いや、過去2回以上に、自身の不甲斐なさを恥じるとともに、心洗われる思いがした。

    その原因の一つと思われるのが、二度目の北原怜子役となる升野紗綾香さん。
    久しぶりに拝見する升野さんの表情・声・所作…とりわけ療養先からアリの街に半年ぶりに戻ってみて、自身の役割が他の人間に”奪われていた”ことを知ったあたりのシーンでの、ある意味、聖女ではない・人間らしい葛藤のさまを表現した、魂の演技には強い感銘を受けた。

    90分ほどの舞台だったが、ホンマに良いものを”魅”せて頂いた。感謝!

    ネタバレBOX

    【配役】
    北原怜子(さとこ)…升野紗綾香さん
    北原肇子(ちょうこ。妹)…佐藤天衣さん
    松井桃楼(とおる。アリの街に住む劇作家。仏教徒)…中込博樹さん
    小沢求(アリの街の会長)…柳橋龍さん
    丸岡明宏(アリの街の住人。通称”ジョン”)…斉藤可南子さん
    夏川樹(元・消防司令部?勤務。今はアリの街の住人)…石原嵩志さん
    夏川利恵(アリの街の住人。樹の妻)…岩浦さちさん
    シスター・カルラ(修道女。カトリックの”偽善”の象徴)…mizukiさん
    塚本恵子(二代目”アリの街のマリア”)…mizukiさん
    前田明子(アリの街の住人)…mizukiさん
    東京都職員…石原、岩浦、斉藤、佐藤、mizuki、柳橋
    ゼノ修道士…松本義一さん
  • 実演鑑賞

    良い舞台だったと思います。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    生演奏にミュージカル、ダンス、歌と盛りだくさんの楽しいお芝居でした。
    アリの街って、はじめて知りました。
    そこのマリアさんと神父さんのお話も、感動作でとてもよかったです。
    神父さん役の役者さんが、本当に優しくて穏やかで素敵でした。
    マリアさん役の役者さんも生き生きしていて魅力的でした。

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