実演鑑賞
満足度★★★★
1950年代、まだ戦争の傷跡が生々しい東京の下町 台東区・隅田川言問橋のたもとに実在したバタヤ(廃品回収業)部落、アリの街が舞台。物語は、そこで社会奉仕活動を続けた北原怜子(さとこ)さんとポーランド出身のゼノ修道士を中心とした実話を舞台化したもの。今の世に当時の時代背景を描いて、どこまでリアルに伝えることが出来るか。そして描かれているような尊い教えと活動を強く訴えると、宗教への過度な依存といった印象、偏執した啓蒙劇といった捉え方をされる危惧がある。その微妙な感情というか感覚を回避するための観せ方、それが演劇×生演奏×ダンス×歌といったエンターテイメント作品にした理由のように思える。彼女の足跡を忠実に描いた評伝劇、その時代背景は、今の日本におけるコロナ禍、世界に目を向ければ侵攻といった状況に重なる。特に国内では自主自立と共助を強く意識させる内容だ。
公演は約3年の時を経ての再演になるようだが、今 上演する意味は何か。当日パンフに主催挨拶として岩浦さち さん(アリの街実行委員会/自由の翼)が、「再び『戦争がもたらすもの』を考えたり、『現代を生きる私たちの精神的な糧になる何か』を追い求めたりするときに、お客様の『道しるべになるヒント』が落ちているかもしれない」と記している。慈愛に満ちた内容が、どれほど今の社会に伝わるか。28歳で夭折した社会活動家がいたこと、その活動を知ることが出来たこと、その人生について大いに学んだ。
(上演時間1時間30分 途中休憩なし)
2022/10/21 00:04
主宰の岩浦さちです。
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