ひとつオノレのツルハシで 公演情報 ひとつオノレのツルハシで」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    主催はMyrtleArtsマートルアーツだが出演 3名と演目はドレンブルシアターそのもの。元新宿梁山泊の僚友3名による「アンネ・フランク」が昨夏漸く実現したMyrtleArtsは未だ正体知れずだが(それでも応援したくはなっている)、ドレンブルの近藤結宥花と土屋良太、川口龍3名の奇縁の方がマートルとの縁以上に謎で気になる。
    ドレンブルの旗揚げは確か土屋氏の元パートナーが新人戯曲賞の審査で推していたくるみざわしんの最終候補作という事もあって想像を逞しくする羽目になったが、舞台は実直に(芝居は狂気混じりだったが)作られていた。同ユニットの活動が続いている事は素直に嬉しい。
    さて作品。くるみざわしん氏である。小編を目にして(主に戯曲で)抱いていたイメージを良い意味で裏切り、躍動感ある戯曲。面白い。加えて今回の演出は鈴木裕美、実はそれ程その仕事を見ていないが、不可思議な現象を起こしたり、細やかな技術的なワークで架空の歴史上のドラマを象徴的で幻想的な場面を挿入したり、作品に適った演出と言えた。力の籠った三人芝居、芝居はある意味ギャンブルであるが今回は自分の幸運を噛みしめた。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    はじめてみる関西の劇団だが、成熟した大人の芝居になっている。
    作者・くるみざわしんは関西を中心に既に幾つもの新人賞を取っていて、この芝居も、新人離れした完成度である。三十歳を超えてから演劇の現場に入ってきた精神科医と言う特異な経歴も作品に生かされている。
    マートルアーツと言う劇団の公演となっているが、現実的にはプロデュース公演。東京の演劇人が起用されていて、その組み合わせ方も新鮮だ。3〇〇のベテランと新人、女優は新宿梁山泊、演出がジテキンの鈴木裕美。
    登場人物は三人, 1時間半ほどの掌編だが、夏目漱石のもとを訪ねてきた農民上がりの田中正造信奉の青年、漱石の妻の三人による日本の近代の在り方に対する弾劾である.面白く出来ていて、無駄がない。タイトルになっているオノレのツルハシの使い方なんか、うまいものだ。作家として自立して牛込で講演した日。正造が死んだ日、それぞれの翌日に世間師の青年が訪ねてくる。
    討論の内容や漱石、正造の人物像は、もう描きつくされているので、さして新しい発見はないが、芝居つくりがうまいのである。ことに近藤結有花演じる漱石の妻が生活の場から二人を逆襲する終盤が面白かった。川口龍の世間師は少し動きすぎだとも思うが、こういうリアリズムを外した人物造形は鈴木裕美のいいところで、狙いをよく呑み込んで、小さな舞台を飽きさせもしないし、引き締めてもいる。低音で使っている現実音の効果も選曲音楽もいい。
    関西から、iakuとか、Kunioとか、芝居で勝負する人たちが東京に攻め上ってくる。正面からの戦いだから、東京勢も油断できない。これらはまともな戦いだからだ。観客も楽しみである。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    漱石と妻の夫婦喧嘩の最中に、突然転がり込んできたボロだらけの浮浪者風の青年。青年がエキセントリックに漱石の「坑夫」に食いつき、「他人の話ででっち上げただけ、己を掘れ」とツルハシを置いていく(らしい。少しうとうとしたので不正確)。

    4年後、彼岸過迄を書いている漱石のもとに、再び青年がやってくる。「己を掘ってきた」という漱石に、青年は「狭苦しい話」「妻の本心とか、友だちとの仲違いとかどうでもいい」と、もっと深くて広い話を書けと批判する。青年は田中正造を尊敬し、この4年、行動を共にしてきたという。「谷中村には紫の炎がある、文学がある」。その正造が死んだと、臨終の言葉「鉱毒問題の本質からすれば、(正造の臨終の席に人々が集まった)ここもまた敵地」を繰り返し、その言葉に受けた衝撃を広げる…。

    身の入らない支援者たち、言葉だけの同情者への「ここもまた敵地」の正造の言葉の刃を、漱石に突きつける作劇のポイント。青年が幻視する「紫の炎」に、たった一人でも自分の道を突き進む生き方、情熱、真実の人間の心を託す。

    言葉は理屈っぽくて、核心になかなか触れずに仄めかしが多い。その分、消化しにくいが、要は書斎対現場、文学対行動の対立ということになる。1時間35分

    ネタバレBOX

    漱石の書くものが所詮狭い書斎の高等遊民の話という批判はその通り。日本は「亡びるね」の文明批評は影を潜めてしまう。でも「こころ」が、明治の己を殺し、御一新に胸膨らませた己を葬る覚悟の文学という見方は、一つの見方ではあある。

    最後に妻が青年を突き放し、田中正造の跡を継げと激励するのは、シニカルなひねりがあった。普段なにかと夫に蔑まれて鬱屈しているせいだろう、いざとなれば女は強い。

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