ひとつオノレのツルハシで 公演情報 MyrtleArts「ひとつオノレのツルハシで」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    はじめてみる関西の劇団だが、成熟した大人の芝居になっている。
    作者・くるみざわしんは関西を中心に既に幾つもの新人賞を取っていて、この芝居も、新人離れした完成度である。三十歳を超えてから演劇の現場に入ってきた精神科医と言う特異な経歴も作品に生かされている。
    マートルアーツと言う劇団の公演となっているが、現実的にはプロデュース公演。東京の演劇人が起用されていて、その組み合わせ方も新鮮だ。3〇〇のベテランと新人、女優は新宿梁山泊、演出がジテキンの鈴木裕美。
    登場人物は三人, 1時間半ほどの掌編だが、夏目漱石のもとを訪ねてきた農民上がりの田中正造信奉の青年、漱石の妻の三人による日本の近代の在り方に対する弾劾である.面白く出来ていて、無駄がない。タイトルになっているオノレのツルハシの使い方なんか、うまいものだ。作家として自立して牛込で講演した日。正造が死んだ日、それぞれの翌日に世間師の青年が訪ねてくる。
    討論の内容や漱石、正造の人物像は、もう描きつくされているので、さして新しい発見はないが、芝居つくりがうまいのである。ことに近藤結有花演じる漱石の妻が生活の場から二人を逆襲する終盤が面白かった。川口龍の世間師は少し動きすぎだとも思うが、こういうリアリズムを外した人物造形は鈴木裕美のいいところで、狙いをよく呑み込んで、小さな舞台を飽きさせもしないし、引き締めてもいる。低音で使っている現実音の効果も選曲音楽もいい。
    関西から、iakuとか、Kunioとか、芝居で勝負する人たちが東京に攻め上ってくる。正面からの戦いだから、東京勢も油断できない。これらはまともな戦いだからだ。観客も楽しみである。

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    2022/08/19 22:16

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