ka-e-lu 公演情報 ka-e-lu」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.3
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★

    ゆるゆるな不思議感!
    「多少婦人」 の芝居は案外好みだったりする。何故ってそこには「隙間」があるからだ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    第一話 「帰郷のすすめ」作・演出 酒井雅史

    出て行ったきり音信不通だった娘(長女)が二年ぶりに突然帰郷してみると、赤の他人が自分の部屋に住んでる。しかも家賃も取ってなくて家族のようにふるまってる。自分の居場所がないと怒った長女は出て行こうとするが、話をよく聞くと、長女の部屋は居間に移したという両親。両親は長女が居なくなった心の隙間を埋めるために二人に間貸しした、というお話。
    両親も間借りしてる二人もなんだか違う世界のような人たち。ゆるゆるで呑気な会話が面白い。心の隙間がテーマ。


    第二話 「無節操にひっくり返る。ならばせめて美しく。」作・演出 酒井雅史

    インタビュー調査で集まった5人。この5という数字が実に微妙なのだ。奇数だから割り切れない。割り切れないから多数決が成立しちゃって既に戦いのゴングは鳴っていた。笑
    インタビュー調査のマニアらしき女二人が司会者そっちのけでグループアンケートを支配しようと勝負する。「このアンケートは勝ち負けじゃあないんです。」と司会者が説得するも、多数決に拘る二人。笑
    勝ちそうな意見のほうに付きたがる女が風見鶏のように向きを変える時の言い草が面白い!


    第三話 「ガネーシャ・トランスポート」作・演出 渡辺裕之

    医療ミスで脳死状態になってしまった妻の臓器移植をめぐって医療現場で起こる黒い戦い。臓器移植コーディネータと一部のドクターたちが妻の臓器移植を積極的に行おうとする。その裏にはさまざまな思惑と贈収賄があるが、一方で妻を生き返らせようと胸に張った3文字の言葉遊びによって「起きる」までを完成させる。

    ヒンドゥー教における象の頭部を持つ神ガネーシャ役に喜屋武由美子。
    喜屋武が鼻に付けた象の鼻と耳がお見事!(0^)
    この物語が始まる時、会場全体を真っ暗にしてホラー的に観客を怖がらせるシーンがあって、「皆さん、右側の暗い端っこの方に何かいませんか?」なんて凄ませる言葉には、「こりゃ、面白くなるぞっ!」なんてホラー好きのワタクシなんか卒倒しそうなくらい、ドキドキワクワクしちゃったわさ。
    も、もしかしたら・・薄いゴム膜の向こうからトカゲの顔が押し付けられてるんじゃ・・(・・!)とか、そのうち、急にゴム膜を突き破っていきなりトカゲが顔を出し、三角の両目が獲物の虫(観客)を見つけて光ったり・・たり。。なんて想像したけれど、始まってみるとホラーではなく不条理劇に近い。
    それでも白いベッドを囲んでブラックジャックの如く6人の医師が歌を歌うシーンは非現実的だ。現実と非現実の隙間みたいな設定が面白いし、その光景を見ながら楽しむわんぱくガネーシャ神の仕草もいい。
    ただ3文字をはめ込みながら無理に繋げていく言葉遊びの場面は退屈だった。そんな事をするなら思いっきりホラーにしちゃってよ。と言いたかった。笑
    最後に妻の為に自分を犠牲にした夫は妻が見守る中、白いベッドに横たわっているという現実。

    ガネーシャ神が幸福をもたらしたのはどっち?
  • 満足度★★★

    微妙&不思議な感覚‥
    舞台はほぼ素舞台(個人的には好感が持てるけど)‥。ところどころ笑いはあるけどコメディというわけでもないのかな。全体的にシニカルな感じ。自分の好みに合うなぁと思える部分もあればそうでない部分もあったりでちょっと微妙で不思議な感覚‥(この劇団の舞台を観るのは初めてだけど、これが「多少婦人」ワールドなのかな?)。
    3話目だけ作風がぜんぜん違うなぁと思ったら1、2話目とは作家が別なんだ。3話目は言葉遊びが秀逸で着眼点は面白かったけど、ワンシュチュエーションであの長さはさすがに長いなぁ。でも3話目が一番個性的だった。出来ればもうちょっとくだけた感じにしたほうが、とっつき易く(観やすく)なって良いと思うんだけど。上演時間1時間50分、新鮮な体験だったけど観ててかなり疲れた‥。役者はそれぞれ良かったと思う(特に女優陣)。

  • 満足度★★★

    大きな課題を残して・・・
     酒井作品短編2作+渡辺作品1作の公演スタイルが定着。

    3本立てというのは、往年の宝塚歌劇や歌舞伎の見どり狂言と
    同じスタイルで、料金もリーズナブルに設定し、初心者にも観て
    もらいやすい狙いがある。

    見方を変えれば、それが逃げにもなるわけで、試演会に終わって
    しまう危険もはらむ。

    旗揚げから観続けてきて、そろそろ問題点も浮き彫りになってきた。
     フライヤーにまったくコピーライトがなかったが、HPを見ない人もいるから
    もう少し、内容をほのめかす文章がほしい。


     今回作品だけに限れば★2つが妥当だと思ったが、キャスティングの妙や
    役者の頑張りに1点プラスし、★3つとさせていただいた。

    以下、長くなるのでネタバレで。

    ネタバレBOX

     酒井作品。第1話、第2話ともに面白いところはあるのだが、会話で魅せるレベルまで達していない。会話劇のコメディーならもっと面白い劇団はたくさんある。もう少しひねりや、起承転結の「結」にパンチがないと消化不良気味で客の心は掴めない。酒井氏は前回、1本立てのミニ企画公演でも、その部分は解消されていなかった。ここらで奮起を促したい。

     第1話は話の展開が平凡すぎた。市野々はる果の母親の実在感が良かった。
     第2話のスタイルは三谷幸喜の「12人の優しい日本人」を想起させるが、
    そういう秀作があるだけに、論点が転がっていく面白みがもうひとつ足りない。もっと面白いのかと期待したのだが。細かい点では、ボイスレコーダーの前に役者が後ろ向きに立つが、後ろ向きの必然性を感じない。近頃の小劇場芝居ではなおざりにされているかもしれないが、芝居ではなるべく役者が客にお尻を向けないという暗黙のマナーがあるのだ。正面を向き、一歩前に出る演出でも支障なかったと思う。

     渡辺作品に関しては、彼はこういう作り方が大好きな人。
    ただ、自分のアイディアや演出を本人が楽しんでいる感が強く、
    客への説得力が乏しい。
    HPでの公演情報の作品解説も難解過ぎると思った。

     冒頭の渡辺氏のナレーションは滑舌のせいか音声が不明瞭で、内容も不要に感じた。
    「ことば遊び」の関係からか、登場人物の役名の付け方が不自然で
    特に夫の「鯉雄(こいお)」というのが耳慣れない名前だけに、ガネーシャの
    ナレーションに出てきたときも「人名なのか」意味がすぐにわからなかった。
    パンフレットを読んでいる人ばかりとは限らないので一考されたし。

     全体を通して今回、一番印象に残った役者は村上俊哉。多面性に期待が持てる。
  • 満足度★★

    これで上演するのかあ?
    作風の好き嫌いに個人差があることは当然ですが、
    こんなに練られていない脚本なのはなぜなのかと疑問。
    公演終了なのでネタバレオープンで。

    第一話「帰郷のすすめ」

    連絡もよこさない姉が2年ぶりに帰ってきたら、両親が
    二人の居候を住ませていて頭にきました。という話。

    姉の「見ず知らずの他人を住ますなんて解せない」という
    気持ちを軸に、追求の会話がコメディ調に進みますが、
    「下宿賃貸って、普通に第三者じゃない?」と論点に疑問。

    下手に出ていた両親が「親」の気持ちで逆上でもするかと
    思って見守ってましたが、そういう事件もなく幕。
    シチュエーションコメディというほど、セリフを推敲したような
    印象も受けませんでした。なぜウケるのかが不思議でした。


    第二話 「無節操にひっくり返る。ならばせめて美しく。」

    三話の中では出色の出来。出演者の役回りもはっきりしてます。
    これは短編らしくまとめられていて、大変おもしろかったです。

    誰でも少しは持ってるマイノリティーへの回避が、増幅していて
    素直に想像できる作品。長さもちょうど良かったです。


    第三話 「ガネーシャ・トランスポート」

    前半の雰囲気は嫌いではなかったのに‥

    文字遊びを使うのは、小林賢太郎などが得意としていますが
    アイデアはおもしろいものの、この程度の完成度で、どうして
    上演してしまったんだろうと、かるく怒りすら覚えました。

    絶対に「よし、これで完璧だ」と思ってないはず。思えない。

    不自然だし、驚きもないし、巧妙でもないし、中盤gdgdだし。
    文字入れ替えがただやりたくてやったのか?と疑ってしまう。

    最後もちらかりすぎた話を強制的にきれいに片付けようとする
    感じが否めず、この数十分、なに見せてきたの?という感想。


    「勢いがあって~」という感想文は、内容には不足を感じたという
    婉曲ないい方です。演者さん独り独りはよく練習をしたのだろうと
    努力と気持ちが伝わってくるだけに、中身が残念で仕方ないです。

    次回作に期待を込めて、少し厳しめに感想させてもらいました。

  • 満足度★★★★

    堪能しました
    関係性に絡み取られるような家族意識、安心できそうな共感が変質した緊張感、意識下に潜む恐怖、とか 様々なことを想い巡らせることができました。
    想像していた以上に観劇パワーを要しましたが、果実は大きかったです。
    堪能しました。

  • 満足度★★★★

    新感覚の言葉遊び
    「かえる」に関するショートストーリ2人、ミドルストーリー1本のオムニバス。

    「帰郷のすすめ」は、2年ほど、音信不通だった娘が突然、帰宅(かえる)するところから物語が始まる。久々にかつて自分が使っていた部屋に戻ると、そこには別人の荷物が。その荷物は、娘が突然出て行った寂しさを紛らわせるために、両親が新しい家族として迎え入れた娘と同じ年のころの同居人(赤の他人)の荷物であった。事態を飲み込めずに両親への不振が募るものの、ストレートに思いをぶつけることができずにいる娘、また、十分な説明を行うことができずに娘との距離を測りかねる両親。こ両者をつなぐべ奮闘する妹、そして、KYな同居人。これらのメンバーが織り成すかみ合わない会話の妙。
    笑わせたいのか、笑ってほしくないのか、微妙なラインを行き来する演出がとても面白かった。

    「無節操にひっくり返る。ならばせめて美しく。」は、5人の一般ユーザーが集まったモニターアンケートで、繰り広げられる女と女の勝負。主催者の意図とはまるっきり別に、モニターアンケート常連の二人の女は、お互いが多数意見を取ろうと、主導権争いを行う。ここでの「かえる」は、オセロのように、意見が「ひっくりかえる」ことにちなんでいる。「帰郷のすすめ」ほどではないものの、会話の妙を感じることができる作品。

    「ガネーシャ・トランスポート」は、医療ミスと臓器移植がテーマにした本公演のメイン。「かえる」とは、医療ミスによって、危篤に陥った患者が「生き返る」ことをあらわす。ルイスキャロルのタブレットにヒントを得、臓器移植の是非を巡る倫理観を絡めた、言葉遊びに満ち溢れた脚本は見事の一言。ヒンズー教の、障害を取り去り、財産・幸福をもたらすといわれるガネーシャ神を登場させ、重層的な入れ子状態で展開されるスト-リーは謎解きを含み観客を飽きさせない。

    それぞれに、言葉の妙味を味わうことが出来るなかなかよい舞台であった。

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