実演鑑賞
満足度★★★★
LGBTについては、日本でも大きく問題にされるようになったが、これはLGBT先進国のイギリスの戯曲だ。ちょっと複雑な劇構成になっていて、かの国で問題が立ち上がってきた当初の1958年と、エイズを超えて五十年後の2008年と、二つの時代に同じ名前の登場人物たちがGゲイを生きる問題に直面する。
丁度この五十年の中間のころ、しきりに英国と行き来していた十数年があったので、外側からではあるが、イギリスの日常生活の中で、ほとんどの人がお互いのLGBTを心得て生活している複雑な感情のもろもろも知らなくはない。
この劇は、そういうイギリス社会の上に書かれていて、外側の社会からは、それぞれが性的嗜好を持つわずか四人の登場人物ですら、その実態が推し量れない。翻訳上演の難しい戯曲である。
ドラマは二つの時代のゲイのカップルの出会いと別れ、出発を細やかに描いていて、テーマは理解できるが、ニュアンスまでは伝わらない(こちらの理解が及ばないのだ)。人物も、名前が同じだけで関連がないので把握しにくい。前半が1時間30分。後半が約50分。
初めて見たこのカンパニーは、この戯曲を現代的リアリズムで処理する。セリフは小声で早くささやくようだ。シーンは、性的な嗜好にとらわれる自己の精神との葛藤が中心になっているが、セリフが聞き取りにくい。この劇場は小劇場にしては珍しくタッパも高いが客席の傾斜もきつい。前方の席はいいとして(料金も高い)後方の席(と言っても十列ほどしかないのだが)までは、このセリフでは届かない。技術的にはマイクで拾ってでもセリフが分からないとかなりつらい。俳優も声を上方に逃がす工夫がいる。事情があってか、演出者が主演をやるように変更になっていて、演出者が客席から見ていないのかもしれないがここはやりすぎである。音楽も曲想はわるくないのだが、ミクシング・バランスがよくない。
帰りの地下鉄で向かいの席に若いゲイのカップルが座っていた。今はかなり解放されていてあっけらかんとしている。彼らが立つと、次は母親と男の子、次は二十歳から三十歳代のカップル。そうか、こうやって世界のどこでも人びとは人間同士つながりながら生きていくんだ。とある種の感慨が残る芝居であった。
戯曲は2008年に書かれれてすぐ、日本のtptが日本初演。その時の流れが今回の公園につながっている。tptは80年代後半から海外のあたらしい戯曲の発掘に意欲的で常打ちのベニサンピットが懐かしい。次回公演も期待している。
実演鑑賞
満足度★★★★
1958年と2008年。
テンポ良く交錯する二つの物語が相乗効果を生み出しているのは間違いなく
描かれるのはオリヴァーとフィリップとシルヴィア、3人の物語。
どちらの時代でもオリヴァーとフィリップは同性愛者
どちらの時代でもシルヴィアはこの二人との関係性が深い立ち位置にある。
同性愛は病気とみなされていた時代。
聡明さや知性、人としてのプラス要素が丸ごと“性”に飲み込まれていく様な、何とも言えない息苦しさを覚えた1958年の人間模様。
2008年にはゲイカップルという認識がある程度定着?
少なくともプライドパレードという存在が未来への道筋を示唆している様。
この戯曲が描かれてから更に14年が経っているわけで
多様性を認め合う現在、人間社会は確実に進歩している!そう強く信じたくなる公演でありました。
【side-A CASTを観劇】
実演鑑賞
満足度★★★★
side-B CASTの回観劇。ゲイとその周りの人たちの会話劇。多少分かりづらいところもありますが、LGBTQ問題はさておいて、ちょいとシリアスなBLの舞台化と思えば面白い。深刻な内容だろうけど、ゲスい会話は笑えます。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/07/26 (火) 14:00
座席1階
sideAを鑑賞。セクシュアリティがテーマの舞台だが、結局のところ、問われているのは人間としての生き方なのだろう。激しい会話劇の末に、自分なりに得た結論だ。
登場するゲイカップルのうち、オリバーは真っすぐだ。フィリップは女性と結婚していてバイセクシュアルなのだろうが、激しく揺れ動く胸の内をオリバーの前で吐露する場面が出てくる。その二人の間を取り持つような形になっている女性、フィリップの妻であるシルビアが、物語のカギを握るような形で舞台は進行する。
sideAのシルビアは、元宝塚星組トップスターの陽月華。これがsideBの福田麻由子が演じるとどうなるだろうかと想像したが、まったく違う雰囲気になるような気がする。陽月の演技は切れ味鋭いナイフのようなイメージで、それは出演者だけでなく客席にも向けられた刃のようでもある。
セクシュアリティを語るとき、やはり決め手になるのはその人らしさ、ある意味で人間の尊厳である。舞台でも出てくるが、LGBTQは倒錯者という認識を持たれ、それは今でも変わらない。人間としての生き方、尊厳を勝ち得なければならないというマイノリティーの苦悩は、せりふの端々にあふれ出ている。
役者たちは皆、この難しい舞台を見事に演じきっている。この舞台から何を感じるかは、おそらく千差万別なのだろう。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/07/24 (日) 18:00
side-Bチームを観た。ゲイカップルの過去と現在(?)を巡る壮絶な会話劇。(5分押し)81分(休み11分)57分。
1958年、シルヴィア(福田麻由子)は同僚のオリヴァー(岩男海史)を夫のフィリップ(池岡亮介)に紹介する。2人はゲイカップルになる。2008年、オリヴァーは同棲していたフィリップと別れ、シルヴィアの救いを求める…。同じ名前を持つ2組のゲイカップルを時代を越えて登場させ、それぞれの時代の「標準」の違いを見せる。時代の違いは当パンやチラシを読んでいないと分からないが、演出上はシルヴィアのキャラクターで区別される。セリフ量も膨大で、やや長い芝居だが(当初は休憩込み2時間20分と言われていたが、初日あるあるで休憩込み2時間30分)、役者陣も好演し長さを感じない。舞台美術と、特に照明が秀逸。
若手中心のside-Bを観たが、10歳程度年長のside-Aも観たくなってしまった。
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赤坂レッドシアター『The Pride』観た、良かった…。脚本と翻訳のクセがそのまま出る演出だったので最初はどうかなと思ったけど、後から思い返すとあれはフィリップとオリバーのクローゼットの軋みだったのかもしれない。初めて二丁目に行… https://t.co/aYqUKDP8il
2年以上前