実験シリーズその1 『境界』 【追加公演決定】~これが最後のチャンスです~ 公演情報 実験シリーズその1 『境界』 【追加公演決定】~これが最後のチャンスです~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★

    たっぷりと境界にひたる
    予約をすると、まだお金も払っていないというのに、とても凝った入場券が届き、その“おもてなし”感だけですでに満足してしまった。そして、いろいろと演劇的な可能性に満ちた、ポテンシャルの高い公演だったと思う。

    ネタバレBOX

    ただし、可動式の椅子での自由な場所での観劇を謳いながらも、ある程度、アクト・スペースが限定されていて、作り手側が自ら「境界」を設けていてそれを越えられなかったのは、ちょっと残念。

    また、観客を促すのではなく、勝手に、自発的に動きたくなるような環境を作れていれば、なんて思いも。たとえば、ある席ではピンスポが当たり、まわりから注視されつづけて居づらいとか、あえて見切れる空間を生じさせて移動せねば観られないようにするとか、座っている真横で役者ふたりが怒鳴るような会話をするとか。

    できることなら、最初は檻のこちら側にいた観客が、いつしかみなあちら側に座っていた、みたいな計算はあってもよかったかも。

    さらにいえば、「実験」を標榜するのではなく、これが21世紀演劇の「究極」とか「標準」だ! みたいな、とことん強気な姿勢も欲しかったかも?

    とはいえ、そんなさまざまな可能性に思いを馳せさせてくれる、というのも演劇の魅力なんだろうなあ、と感じさせた段階で勝ち、なのかもしれないけれど。
  • 満足度★★★★

    演劇はどこから始まるのだろう。つまり、その「境界」どこにあるのだろう?
    観劇は、ふつうは客電が落ちて、幕が開いたりしてから始まることが多い。
    ところが、今回のこの観劇(舞台)は、チケットが届いたところから始まっていた。

    そういう意味での「境界」と「実験」を意識させる企てに、思わずにやりとした。

    ・・・いつもの通り。詳しくはネタバレにだらだら(恐ろしく長く)書いてます。

    ネタバレBOX

    チケットはなぜか大きな封筒で届いた。
    「?」と思い、開封すると、なんと今回の舞台の企画書(!)と小さな手形のような木製の手作りのチケットが入っていたのだ。わざわざ私の名前まで入れて。

    私は、とても愉快になったので、その労力に敬意を表して、チケットに麻紐を通して、首からぶら下げて会場を訪れた。
    さらに希望すれば、前日に役者から電話までしてもらえると言う。私はスケジュールが不明確だったので希望しなかったのだが、前日にはメールが届いていた。

    そして当日、チケットをぶら下げていたのだが、劇場はうっかり通り過ぎてしまった。なぜなら、白衣風の男が学習塾らしき建物の前に立っていたので、ここは当然違うだろうと思ったからだ。
    これが、この奇妙な「境界」に踏み入れてしまった第一歩だったのかもしれない。
    あとでわかることなのだが、舞台に立つ役者たちが観客を直接迎え入れていたのだ。やっぱり「境界」という舞台はすでに始まっていた。

    なんでもOKの客席という設定も、観客&客席という空間の「境界」を意識させるのには十分だった。

    「境界」について「実験」と称して行われるいくつかのエピソードは、それほど意外性もなく、特に最初のいくつかは、ちょっとガッカリした(例えば、鏡とか出所とか・・)。

    とにかく気になったのは、そこここに、どことなく昭和レトロ的な匂いがするところなのだ。というか、なんとなく微妙なところがあるのだ。

    例えば、「エレベーター」の話で、「シンドラー製」みたいな台詞が入るのだが、「今それを言う?」と思ってしまう。古くもないけど、新しくもない微妙な台詞。それを言うのはかまわないのだが、それに対してのフォローのひとひねりが足りない気がする。

    「出所」のところでの「シャバ」から「ジャバダバシャバダバー」と歌うのには苦笑しか出なかったし、同じく出所のところの「政治家・・・」と言葉を濁すのも同様だ。
    また、「男と女」のところでは、間にマットを敷いてそこを前転、後転、飛び込み前転などが繰り広げられるという、とてもナイスな展開があるにもかかわらず、締めの音楽が野坂の「黒の舟歌」(「男と女の間には〜」というアノ歌)が流れるのには、「残念」の言葉しか脳裏に浮かばなかった。「ベタすぎて、それはないよな〜」と思ってしまったのだ。・・・ま、若い観客には新鮮さがあるのかもしれないけど。

    こうした匂いが、確信犯的に行われているのかどうかはわからないのだが、確信犯的な使い方ならば、なんとかフォローみたいなものがあったり、徹底してそのセンで責めてくれれば、言うことなかったのだ。

    ひょっとしたら、この劇団はある意味「真面目」すぎるのかもしれない。真面目すぎる展開なのか?

    しかし、退屈だとかつまらないという感覚はなく、結構楽しんだのだ。

    一番面白かったのは、観客との「境界」がなくなった(客いじりとも言う)部分だった。
    いいちこを注ぎにきたり、ピザのくだりなどだ。
    たぶん、15人という少ない人数で役者に密接に向かい合うということから、こんなことを想像してきたからかもしれない。
    というより、せっかくの、この接近性を活かさないテはないのだから。

    その「境界」は、客席と舞台との間にある格子が示していたようだ。それが上がることで、舞台が少しだけ、こちら側にしみ出してくる。

    「境界」という意味では、「眼鏡も一種の境界?」(実験を演じているとき以外全員が眼鏡を掛けている)という台詞を受けて、ラストは、観客との境界がどうなっているのかを含めて、眼鏡を掛けているのか、いないのかをはっきりさせて欲しかった(まちまちだったので)。

    とは、いうものの、先に書いた観客との「境界」であった格子が元の位置に降りてくるときには、驚くべきことに、役者全員が格子のこちら側にいるのだ、つまり観客側に。
    そして、観客にお尻を見せる形で舞台側に挨拶をする。
    それはとても象徴的なラストシーンではないだろうか。

    さらに、舞台での演技が終わり、客電が点いたところで、役者の皆さんが、ピザを勧めたり、ドリンクを注いでくれたり、お手拭きを持ってきてくれたりする。

    これが本当に舞台と観客の「境界」が消えた瞬間である。
    演劇そのものの「企て」として、「観客との境界を消すこと」を意識した上での、今回の「境界」という舞台を選択したのかどうかはわからないが、劇団の観客への真っ直ぐな想いは、確かに「境界を消しつつ」あった。

    最後に、個人の名前が入った封筒を渡され、「実験のレポート」という名の「感想」を送ってくださいと、切手付きの返信封筒まで渡された私たちは、このレポートを書いて提出するまでも、今回の「舞台」の中なのだろう。

    会場を出て、今体験した出来事を反芻しながら帰宅するのだが、そのときにこりっちに書くことが楽しくてしょうがない私は、やはり星の数を考えてしまう。
    舞台の上で行われていたことだけを考えると、星3つかな、と正直思った。

    しかし、飲んだリンゴジュースやピザの味を思い出してもう1つ増やすことにした(ある意味本当で、ある意味冗談)。
    ホンネで言えば、その味に込められた、この劇団の真摯な、生真面目ともいえる姿、すぐ目の前で演じる役者のまなざしに打たれている自分がいたのだ。
    そして、「境界」について演じている舞台の「境界」そのものが拡大して、観客をも包み込むという様は、愉快としか言いようがなかったのだ。

    だって、木製の手形チケットの上に付いていた玉が割れてしまっていたのに気がついた受付の方は、「割れてしまっているようなので、お取り替えします」とまで言ってくれたのだから。チケットは、入場すれば終わりのはずなのに「修理」しようとしてくれるのだからね(ちなみに割れていたように見えた玉は、私がボンドですでに修理していた・笑)。この不思議な感覚は、今回のコンセプトが劇団の根底に流れるコンセプトとマッチしていたのだろう。

    どうでもいいことだけど、お菓子や飲み物の用意をして待っているということに、童話の『泣いた赤鬼』を思い出してしまった。それって、鬼と人間の境界を越えて、人間と仲良くなりたい鬼の、泣けちゃう話なんだよね。
  • 満足度★★★★★

    まさに実験公演!!
    観劇させて頂きました。この作品は観劇する際の禁止事項を取り除いての実験公演でしたが、作品そのものが枠にとらわれることの無い、最初から最後まで実験に富んだ作品でした!それほど広いわけではないアトラクターズ・スタジオに一公演15名限定の公演であり、なおかつ観劇中座席が自由に移動できると言う非常にユニークな試みでありましたが、それがこの作品では十二分に生かされていました!こちらの劇団の魅力の一つである手作り感が最大限に堪能できると言う距離の接近により、作品の面白さが深められていたように感じてしまいました!これまで観劇させて頂いたこちらの劇団の作品でも感じていましたが、いい意味で手作り感のある舞台美術が魅力的に思っておりましたが、その魅力に今回の作品は最大限に近づけるということで、実験公演とはしておりましたが、こちらの劇団の持ち味が余すことなく発揮されていたように思います!そして、作品自体も「境界」と言うテーマをもとに実験の連続からなる意欲的な試みだったと思います。観劇中の禁止事項を撤廃したとは言え、いい意味で静かな緊張感を作品から観劇中絶えず感じておりました!実験と名づけている以上この作品が完全な完成形ではないのでしょうけれども、やはりこの作品の中で用いられた試みの数々は一つ一つ取り上げてみたくなるものが多々ありました!それらを観ていると表現の形態にはまだまだ多くの方向があるものと思えてきました!今回の作品の評価は実験シリーズと名づけられて、非常に分かりやすい作品に仕上げられてはいましたけれども、深く考えれば深く考えてしまうものを感じさせられた試みに満ちた作品に素直に最高評価をつけさせて頂きます!この作品に用いられた試みの中にはこの作品の中だけでしか使われないことが惜しいと感じさせられるものも多くあり、今後のこちらの劇団の公演作品がどのようなものが行なわれることか非常に楽しみになってしまいました!そして、もしかしたら実験シリーズの第二回公演が行なわれることも期待してみたくなってしまいました!今日はその作品までもが実験に満ち溢れた公演を観劇させて頂きました!

  • ドミノ。
    とにかく椅子を移動して観ていい、お菓子食べていい、写真撮っていい、ということだけ頭に入れて行きました。1時間20分。

    ネタバレBOX

    場所がわかりにくいのですがスタッフさんが声をかけてくだすったので無事、地下の会場に潜れました。

    チケットが銭湯の札みたいな手作りの入場手形でありました。しかも自分の名前が押してある徹底ぶり。最後にピザは出てくる、ビールもあるしで友達と行ったほうが遠慮なく食べられるかと。芝居が始まれば、雑談オーケーとあってもやはり静かに観てしまうものです。こういう企画は友人と行くのがより良いと思いました。

    芝居は「その10」まであったかな。ショートが沢山とは想像してなかったので軽い驚きもあって・・・
    「鏡」「距離のとれない人々」は設定もわかりやすいし、絵的にも伝わりやすいのでもっと煮込んで具も入れて時間を長くとったらどうかなーと思いました。今回は実験ということでいろいろなネタを挑戦してみたようです。
    「感想は切手付きの封筒が入ってますのでゆっくりと」という、あったらいいな、の親切がここにはありました。観客の声を聞きたいという真摯な態度があるので芝居はもっと面白くなれるはず!と期待を込めて。
    斎藤真さんが印象に残りました。


  • 満足度★★★

    ビール、焼酎、つまみにピッザ!(^0^)
    今回の演劇は公演中に携帯電話OK,食事OK,飲み物OK,出入り自由、おしゃべりOKなんちって、好き放題OKなのだけれど、地下なので携帯は繋がりません。ビールや飲み物、つまみは劇団が用意してくれています。
    だから、料金を払っても飲む方は元が取れます!(^0^)

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    観客同士、おしゃべりしてもOKなんて触れ込みは、ワタクシにとって言語道断だったから、公演前に観客に釘は刺しときました。だから、観客は静かだった。まあ、15人という少人数だから、騒げないし椅子を動かして移動する人も居ない。やたら笑うご婦人がおりましたが、その方におしゃべりされたら痛いので、やんわりと「ワタクシ、芝居のセリフが聞こえないとストレスなんです。」なんちって釘!(^0^)打っときました!

    境界をテーマに境界の手前と先を表現したコント劇。
    どちらかというとブラックコント。
    短編を「鏡」「罪と罰」「距離のとれない人々」「消防署民営化」「笑顔」「男と女」・・・など超えてはならない境界を演出する。
    正気と狂気の世界。

    今までの舞台とはカラーが違う。今までの舞台は狂気色が色濃かったが、今回は少し正気に近づいた。誰にでも受け入れられる芝居かと。。

    少人数だけに観劇後のビールを飲みながらの和気藹々が嬉しく楽しい!(^0^)ピザは公演終盤に本物のピザ屋が届けにきます。これは演出?と思ったけれど、違う!(^^;)


    二尻久作役の斉藤真の屈折したような笑いが楽しい!

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