満足度★★★★★
作家 アレーグル氏の感想
本作品の作者が来日して公演を観劇しました。ご本人の代理で感想を載せます。劇関係者より
この戯曲は書いている時から私の演出家であり、訳者である岡田正子に向けられるべきだということを私は知っていた。彼女はイメージにかけては、ずば抜けた才能があり、それに、生と死が同時に語られていくような作品では、あのリズム感が必要なのだ。すでに「急流の男」、「人生の始まりは劇場から」、「行き交い」、「アニエス・ベラドンヌ」でも、それが魔術の瞬間となって現われた。
「砂の病」で私と正子の友愛の絆はさらに強まったと言える。先ず何よりも、今回のスペクタクルが美学的にも非常に質の高いものだったし、美術の効率性、照明の美しさ、シンプルでいながらエレガントな衣裳などがこの劇に輝きを与えている。そして、親愛なる正子、今回もまた、音と音楽がせりふに何と調和していたことだろう。砂の病の音楽を最初に聞いた時、心を奪われ、一瞬にして別の世界へ連れて行かれてしまった。
このスペクタクルでのもう一つの力強い要素は、何と言っても役者たちの素晴らしいエキップ(仲間)だ。彼等はみんな、しぐさにしても動き方にしても、簡潔でいて、彼等はまるで自分たちの役柄の中に住みついているように、かくも容易に動きまわっている。私は時として、まるでバレエを見ているような感じをおぼえた。彼等は一人一人が役柄をよく理解し、始終自然体でやってのけている。
演出に関しては、今回は想像をはるかに超えた成功と言える。砂の病への高まりは冷酷なまでにきざまれて行き、私がこの劇の中で言いたかったことがすぐ感じとれた。今回の正子の演出はとても、とても力強いものだ。トップの人たちのエゴに対して、プロック家族が狂気の中で死を目前にして、気高さを保っているのがよく読みとれたし、ママ・プロックが自分の死は承知の上で、娘と夫の手を結ばせるところも、やはり彼女の言い分は正しく、この世界を救えるのは友愛と愛情に他ならないことがよく分かった。正子グループによるスペクタクルは、正に友愛のスペクタクルといえる。
この政治的で社会的でもある物語は言ってみればごく単純なものに過ぎないが、それが見事なまでの有効性をもって上演された。それも役者たちの最良の持ち味で。しかし綿密に考えられた演出で。
正子とグループのみなさんに心の底からお礼を述べたい!
ジャン・ポール・アレーグル
2009年4月20日
満足度★★
こういうのが、フランス現代劇?
阿部ちゃんの「熱海殺人事件」以来のシアターX。
ロビーには、阿部ちゃんの大きなパネルが張ってありました。
縁あって観劇しましたが、こういうのがフランス現代劇、ふーんって
感じっすねぇ。
最初は、風刺画なんかに出てきそうな
皮肉たっぷりのシチュエーションなんかがあって
「ウィットに富んだ、シュールな演劇」なーんて、
雰囲気がありましたが、
そういうのは5分のコントの世界では楽しめるけど、
いつまでも続いていて、
だんだん睡魔との闘い・・・気づくと横の方も後ろの方も、
皆スヤスヤzzz。
フランス人の国民性とか民族性とか、
そういうのがわかった上で成り立っている作品なのでしょう。
そんなトレビアーンな世界とは縁遠い僕には、
作品の奥深さ、あるのかないのかわからないけど、
そういった世界観は理解できませんでした。
サラっと表面上だけ見ていると
話は、日本の小劇場で、散々やっているような
話と思うけど。
初日ということもあって、客席は、
フレンチがお好きな、ちょっと上品なご年配の方と、
フランス文学を学んでいそうな若者が中心。
なんとなく体温が低めな様子の方ばかりで、
普段の小劇場の雰囲気(シアターXは、わからないけど)では
ありませんでしたな。
ちょっと自分には場違いでした。