シド・アンドウ・ナンシー【CoRich舞台芸術まつり2009春 グランプリ受賞作】 公演情報 シド・アンドウ・ナンシー【CoRich舞台芸術まつり2009春 グランプリ受賞作】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-12件 / 12件中
  • 満足度★★★★

    生きることへの切ない思いが、汗と爆笑の中にひたひた満ちる
     MCRの作品を観るのは、プロデュース公演などを含めておよそ8作目となりました。『シド・アンドウ・ナンシー』は、私が観た中で一番完成度が高かったように思います。昨年の「CoRich舞台芸術まつり!2008春」参加作品『シナトラと猫』で気にかかった舞台美術や転換時の演出についても、今作ではライブ感・手作り感が生きており、いわばスタイリッシュな見どころにもなっていました。

     生きることも死ぬこともどうでもいいと思っているヤクザの安藤(中川智明)。急激に太り続けて死に至るという不治の病に冒されたたっちゃん(辰巳智秋)。2人が親友同士だった高校時代の回想シーンを交えながら、状況は違えども互いに死を目前にした2人の男が、命に、人生に、どう決着をつけるのか(決着など訪れず死が彼らをさらっていくのか、それとも…)が描かれます。あらすじだけだと深刻な悲劇のようにも思われますが、実際は爆笑・失笑づくしで、ロマンティックな恋愛のエピソードもありったけ盛り込まれた娯楽作品でした。

     作・演出・出演される櫻井智也さんが書かれるセリフは、小劇場ファンの間で“櫻井節”と呼ばれることがあります。笑いすぎてお腹が苦しくなるほどのギャグに、世間に対する主張がしっかりと織り込まれていたり、粗野で乱暴に聞こえる言葉に、恋のときめきや切ない思いがしたためられていたり。

     組み体操をしたり、本気で(?)叩いたりなど、生々しいハプニングを盛り込んだ見世物の要素も、大いに生かされていました。客席が2方向からはさむ対面式のステージなので、役者と観客との距離がとても近いのです。しかもコントではなく、演劇的な魅力に昇華させているのが素晴らしいと思います。

     ポスト・パフォーマンス・トークは制作の方が司会進行して、観客から事前に質問を受けつけるシステムを採用。赤裸々な劇団内トークを見せるスタイルがお好きなお客様もいらっしゃるかもしれませんが、私は『シナトラと猫』の時よりも濃い内容になって、改善されたように感じました。

     劇中で使用された缶ジュース型のおしるこが、ロビーでバラ売りされていましたので、1本購入。寒い季節になったら飲みます(笑)。また安藤たちのことを思い出して、しみじみ笑いたいと思います。

    ネタバレBOX

     ヤクザの組長(北島広貴)とその子分・小川(おがわじゅんや)のあきれるほどバカなやりとりに爆笑。

     「先に俺行くわ」と言って家族で夜逃げしたナベちゃん(渡辺裕樹)は、大人になって、借金返済のために女(伊達香苗)に臓器を売らせようとしていました。安藤はそれが「自分の先(未来)」なのだと気づきます。過去と現在を描きつつ、実はそこに未来をも見せたように感じ、タイムスリップした気分を味わいました。
  • 満足度★★★★

    秀逸な舞台に感動!
    笑いとドラマが絶妙に組み合わされたシナリオと、丁寧な演出にとても良い感動をいただきました。
    人を愛し、生を全うする意欲を、感じました。
    言葉遊びの軽妙さにもやられました。

  • んん〜。
    アフタートークを聞いて、ああ、やっぱり先が見えずに書いてらしたのだ・・・と、途中から行く先を心配しながら観てる自分がいました。終わりの印象が今まで観た中では薄いかな。けれど役者があそこまでもっていけるのはやっぱり凄くて切れ味スーパードライな演技はさすが。
    パッツリと愛を魅せる上田楓子さん、今までで一番良かったです。
    それから駅前劇場って観にくいのにチケット代が高いと思っていたけど、真ん中にステージ、段差のある席配列によりストレスなく観劇。
    同じ劇団を何度も行くと飽きることもある、けどMCRはなんでか飽きない。次回も行きます。愛あればこその★は3,8 海溝に落とされる時のMCRはもっと凄いから。

  • え~ん
    泣いた。ラストで泣いた。初めて泣いた。やばいです。いろんな受取り方が出来ると思うんですが、とっても、暖かいものを感じました。いろんなものを抱えながらも、少し前を向こうとするその様が、リアルだった。 笑いに関しては、いつも大好きで、今回もマチネは大笑い。流石です。櫻井節。役者さんもいつも大好きなんですが、今回は、特に、中川さんが凄く良かった。嘘偽りのない演技、そして熱演。 全体的には、撮影したソワレより、マチネの方が完成度高かったですね。ソワレは、特に、あのシーン。

    ネタバレBOX

    土台になっている江見さんと福井さんの痛さは尋常じゃないくらい伝わってきた。中川さんの笛ピー2回目に回る時、福井さんの左足膝が板の上に乗っちゃって、めちゃくちゃ痛そうだった。これは、やっぱり2回目は辛いシーンですよね。今回は、撮影ラッシュで来れるのが千秋楽になってしまったのが、残念。何ステか残っている状態であれば、知り合いに勧められたのに・・・。7月ドリルチョコレートも楽しみ♪ 26日マチネをロケハン、ソワレを撮影。
  • 満足度★★★★

    櫻井さんの頭の中
    ようやく観れたMCR公演

    辰巳さん・中川さん・櫻井さんのトライアングルと
    小学生の男の子のようなしょうもなさ
    は期待通り!

    中だるみするシーンがあるのと
    両面客席とした舞台使いが観づらかったせいか
    もう少しスピード感は欲しかったかも





  • 満足度★★★★★

    全演者、全セリフが
    最後まで突っ走る感、すごいなぁ。

  • 満足度★★★★

    笑いの中にもほろ苦く
    中川さんをこんなに長時間観たのは初めてでした。

    どの役も台詞がいい。笑いを起こすも考えさせるも
    パン!と弾かれたように迫ってくる。おもしろかった。

    終始笑いが絶えないんだけど、少し残るほろ苦さ。
    絶品でした。楽しませていただきました!

  • 満足度★★★★★

    筋トレ?
    ってくらいに腹筋が鍛えられた。
    つまりチョー笑った。

    これだけ笑ったの久しぶりだ。
    脚本家の才能に嫉妬した。

    ネタバレBOX

    このおもしろさはいったいなんだ?
    会話の流れ、セリフ・・・とにかく最高だ。

    そして主役の中川智明。
    なにあの落ち着き。
    そして存在感。

    そうやって舞台を楽しんでいる。
    ものすごい余裕を感じた。

    あのスポットライトが当たる場所、あそこは最初から彼の居場所だったかのようだ。

    脇を固める役者陣もすばらしい。
    ってゆーか、キャラ濃いなぁ・・・。

    なにしろ俺、これで笑えない奴とは友達にはなれないと思う、たぶん。
  • 満足度★★★★

    櫻井さん
    作・演の公演は初めて観たが、やはり外さないんだなぁと。

  • 200904251500
    200904251500@駅前劇場

  • 満足度★★★★

    笑い、そのほか
    全編通して笑わされっぱなしでした。
    でも時に切なく、時にとてもロマンチックだったりするから、あちこちのツボを刺激されるのです。
    結末については、意見が分かれそう。

  • 満足度★★★★★

    櫻井ワールドを堪能
     シュールな笑いの中に哀しみが見えた。最初から最後までだれるところがなく、櫻井ワールドを堪能出来た。櫻井智也の作品は一見思いつきやひらめきで作られたように見えて実は奥が深いというのが特徴だが、今回の作品は特に完成度が高い。

     シド・アンド・ナンシーとはパンクの人気グループ、セックスピストルズのベーシストシド・ヴィシャスと彼の恋人であったナンシー・スパンゲンの退廃的な恋の物語を映画化したもの。今回の芝居に直接的にシド・ヴィシャスが出てくるわけではないが、シドとナンシーのお互いがお互いを傷つけ合いながらも愛していくその愛の形をひとつのモチーフにしている。

    ネタバレBOX

     昔の仲良かった友達。馬鹿をやっていた毎日もかけがえのない日々だった。あの仲間たちといつまでもいつまでも楽しい毎日が続くと(続いてほしいと)みんなそう思っていた。しかし、時は流れ気がつけばそのうちの一人(安藤)はやくざになっていた。別になろうと思ってなったわけではない。気がつけばなっていたのだ。

     その安藤の元に昔の仲間が顔を出してくる。みんな気持ちは昔とは変わらない。しかし、それぞれの立場や環境は変わってしまったのだ。それぞれが重い荷物をしょっている。

     昔、あこがれの親友だったたっちゃん。そのみんなのヒーローたっちゃんさえ、今や別人のようであり、毎日300g太っていくという奇病で、死にかけている。変わっていく友達、その中で変わらない友情があり、仲間は仲間のためにどんなことだってやろうとする。やくざの事務所に昔の仲間が安藤を助けるために殴り込みをかけるシーンは笑いながら泣けるシーンだ。

     一度別れ別れとなった仲間が昔のままの仲間に戻るのは簡単なことではない。しかし、昔の仲間が今でも馬鹿をやっている。その馬鹿さ加減が昔同様、いとおしくていとおしくてしょうがないのだ。

    安藤役の中川智明の演技がいい。「めんどくせー」という言葉が口癖の彼は「めんどくせー」と言いながら、人生のレールを転がり落ちている。その悲哀を鍛えられた体と陰影のある表情で見事に表現していた。安藤もまたシド・ヴィシヤスなのである。

     櫻井智也の芝居は、安易に面白いとか笑えたとか言う表現が使えない。櫻井の中には常に退廃的なものへの憧れ、不健全なものへの憧れがあるのだ。だから彼の書く芝居には常に毒が隠され、笑えば笑うほど、面白ければ面白いほど、胸が締め付けられるという構造だ。

     毎日300gずつ太っていくという奇病。これをさらっと考えつくところが天才櫻井智也の凄さである。白血病やガンに冒された主人公であればみんな泣ける。しかし、いかにも健康そうにどんどん太って死に至るという病いは同情さえしにくい。だれも同情しにくい、奇病にかかるなんて、なんて哀しいことだろう。そして現実世界を見れば、今日本は戦争もなく、飢餓もなく、極度の貧困もない。しかし、科学の進歩だの技術の進歩だのと言ってぶくぶくと太りながら、確実に崩壊に向かっているのである。

     作者がそんなことを象徴的に描いたというわけではないが、この作者がエピソードで描くもの、そして、語る言葉のひとつひとつが自然に、若者にとっての人生論になり、また文明評になっているのだ。今、その作品を見逃すことの出来ない作家の一人だ。

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