ビルマの竪琴 公演情報 ビルマの竪琴」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
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  • 映像鑑賞

    満足度★★★★★

    映像で鑑賞。劇場に行かれず大そう悔んだが映像配信と聞いて一も二もなく視聴券購入。時間のある日曜夜ゆったりと鑑賞した。
    小説も読まず映画も観ていなかった自分には、シンプルな物語素材と構成による本作は新鮮で、シンプルである事の強さに感じ入った。歌われる唱歌もシンプルな旋律のものばかりだが素朴に琴線を叩いて来る強さがある。
    演劇のカテゴリー的には新劇の範疇になろう演目、冒頭流れるインストの旋律だけの音楽が、一気に「現代」の時間へと物語を引き寄せた。
    舞台はニッパの葉で織った小屋と、薄茶けた兵隊服、背後は恐らく映写でもって和紙を刷毛で汚したような肌合いに、遠く高山の頂き付近と見える稜線がさっと墨で描かれ、全体で見事に調和した絵となり自然の広大さも感じさせる。既に終戦と間もなく知らされる時期、兵士らは長引く駐屯の殺伐を合唱で和ませている・・やや浮世離れした閉じた世界と、外界との対照がいい。
    水島上等兵という特異な一人の存在の投げかけるものを、受け止める余地が隊員たちにある。これらの人間像は「戦後文学」(と言われるカテゴリー)の中で、あるいは現実の日本人においても一つのモデルであり、平和憲法を頂く日本の戦後レジーム(安倍が用いたネガティブな意味でなく)の平和思想を象徴するようにも思う。
    水島は「目にしてきたもの」を心の内に秘め持つようだが、具体的なエピソードとしては語らず思想の問題として孤独に乗り越えようとし、仏教へ傾斜する。そして彼を遠い人のように眺める凡人らは、しかしビルマに残るという水島を「忘れない」という決意をする。
    戦争の惨禍に見合う決意を、今描くとするなら、「水島を忘れない」ではなく「水島が何をどう見たか」を忘れないと言わせたい。だが捕虜生活を終えた兵士らには彼を忘れないという宣言が精一杯の良心の発露であったと想像する。
    戦争はそれが終わった時、生存者に様々な恩恵も与えた。だが日本はその恩恵を使い果たしてしまった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ミャンマーで軍事政権による虐殺がリアルタイムで行われており、その背後には中国の影が見え隠れする今現在。
    『ビルマの竪琴』は市川崑の新旧映画ニ本しか知らず、今回改めて舞台版を観ると良く出来た仏教説話のよう。戦場を体験していない著者(竹山道雄)が書いた児童文学なのだが、それ故に童話のような美しさがある。
    原作は水島が人食い土人に捕らえられたりもっと荒唐無稽な様子で、文化座版は隊員達の合唱による“歌”の連なりをメインに据えている。
    吃りの優しい男、音痴の軍曹、頑なに合唱を拒否するがいざ歌ったら素晴らしいバリトンボイスを響かせる隊員など一人ひとりのキャラが立っている。
    歌による人間性の確保、軍隊と僧侶の文化の対峙、自力と他力の哲学、英国人の讃美歌に対し顔を背け目を逸らす日本人の宗教観の脆弱さ。
    このネタを岡本喜八が調理すると『血と砂』になるのだろう。
    この作品をずっと後世に残す為ならば、もっと構成に手を加えても良かったのではとも思う。

    ネタバレBOX

    当時の日本人であっても、内地では情報統制により戦場の現実を知ることはなかった。終戦ニ年後に連載開始のこの作品にしても凡そ想像で書いたと云う。多分著者がインパール作戦に参加していたならこんな物語にはならなかったであろう。日本軍の死者の殆どが餓死とも言われている地獄の戦場だ。

    食料補給の交渉に現地の村に出向いた水島が帰って来ない。あと一時間待っても連絡がなかったら、村に侵攻すると隊長が決断。敵兵ではない村民を虐殺することにも成りかねない緊迫した事態。無言の重圧の中、暗闇で一人の隊員が歌い出す。「やめろ」と止める隊長。だが他の隊員も続々と加わり歌い出し、いつしか合唱に。後に一人の隊員が述懐する。「あの時、みんな歌うことで人間性を保とうとしていたのでしょう」
    名曲『埴生の宿』を合唱していると、周囲を英国兵に囲まれていることに気付く小隊。「最早これまで」と玉砕覚悟で歌いながら戦闘準備。すると英国兵も『埴生の宿』の原曲を英語で合唱し始める。それに竪琴で伴奏を合わせる水島。英国兵がやって来て、すでに終戦したことを告げる。
    放浪する水島、白骨街道や山や川に溢れた日本兵の無惨な死体の山から目を背けて逃げてくる。辿り着いた英国軍の病院から聴こえる看護婦達の美しい讃美歌。敵兵であった日本兵の遺体を弔っている。神に祈りを捧げる英国人に衝撃を受ける水島。日本人である自分は何故何もしてやれないのか?
    “歌”による名シーンが美しい。
    帰国する小隊に水島の連れていたインコが届けられ、『ああ、やっぱり自分は帰る訳にはいかない』と伝えるエピソードはカットされていた。
    軍隊に入って力を得、自ら世界を変えていく方法論と仏門に入って自分の無力さを受け入れあるがままの世界を受け止めていく方法論。自力と他力の哲学の物語でもある。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2021/04/20 (火) 14:00

    座席1階

    竹山道雄の名作の舞台化。文化座創立80年記念の公演という。文化座は戦時中に創設され、満州にわたって演劇を続けた。引き揚げるときの苦労は、まさに他人事ではなく劇団のDNAとして刻まれている。この演目が創立80年として選んだのも、文化座の歴史を体現している。

    それだけに、熱のこもった舞台であった。この演劇の肝ともいえる合唱シーンは卓越している。「埴生の宿」、ラストシーンの「仰げば尊し」。どの楽曲も見事な男性ハーモニーで心を打たれる。
    主人公の水島上等兵を演じた藤原章寛の実直な演技が光る。隊長役の白幡大介もぶれることのない役どころで印象に残った。埴生の宿を敵味方が合唱するシーンは、物語の筋をわかっていても感動できる場面だ。

    壮絶だった先の戦争でも、苛烈を極めたと言われるインパール作戦。無謀な作戦に犠牲を強いられるのはいつも末端の将兵である。無謀な外交の犠牲になるのも国民であろう。
    当時の人たちはそういう考えに及ぶことはなかったと思うが、一体何のための戦争なのか、何のために死闘を尽くすのか。それは、教訓として残っている。戦争を避けるための道具が外交であるなら、今の日本の外交のファーストプライオリティーは「非戦」になっているのだろうか。戦いを避けるための努力が外交交渉の中で行われているのだろうか。首相訪米のニュースなどを見るにつけ、とても不安になる。
    インパール作戦の教訓を未来のために学び続ける責任が、日本国民にはある。そうした中での「ビルマの竪琴」は、胸に刻むべき舞台だ。戦争に翻弄された歴史を持つ文化座だからこその力作に、拍手を送りたい。実際、私が見た回もスタンディングオベーションという空気の拍手が続いていた。

    俳優座劇場の席は半減させての感染対策。客席の年齢層は高かった。本当にいい舞台だ。もっと若い世代に見てほしい。

この公演に関するtwitter

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  1. 文化座「ビルマの竪琴」(脚本: 杉浦久幸、演出: 鵜山仁、音楽: 高崎真介)、無事終演いたしました。今回は音楽が企画の肝ということで、音楽の要素に随分手間ひまをかけて製作されました。 とは言え、音楽劇でもミュージカルでもない演劇… https://t.co/ZBewcmwG5n

    約3年前

  2. 緊急事態宣言の初日、姫路実加さん出演の文化座「ビルマの竪琴」千穐楽観劇。 観られないだろうと思っていたが文化座さんの決断に感謝。合唱の度に涙が涌き出て止まらない。心洗われたい方は是非配信で! からの~移動居酒屋~大漁の宴弁当が宮城… https://t.co/6fFfQLWYJh

    約3年前

  3. 文化座『ビルマの竪琴』の千穐楽を観た。直接反戦を訴えるより、厭戦を感じさせる杉浦の脚本はよかった。藤原の演じる水島上等兵にそれが現れていた。琴音もいい。日本に帰りたいが、亡くなったビルマの同胞を放っておいていいのかと。これから配信があるので、ご覧になれなかった方はぜひご覧下さい!

    約3年前

  4. 続き→ 話題の公演 ~4/30 青年団リンク やしゃご/てくてくと【4月28日~4月30日…/4.5(4) ~4/25 劇団文化座/ビルマの竪琴/4.5(3) #東京観劇カレンダー

    約3年前

  5. 文化座「ビルマの竪琴」 素晴らしかった。 今日が千秋楽との事でした。 無事に観終わって、感動醒めやらぬままノンストップで帰宅中。 演劇界の今後の安全と存続を祈って✨

    約3年前

  6. 文化座「ビルマの竪琴」を観てから、ミャンマーの情勢とかも考えるべきこと沢山なんだけど、昔戦争で命を落とした若者達のこと、敗戦後日本を建て直すために戦ってくれた人達のことを考えてる。コロナ対策も五輪開催も日本の負けは見えてる中で、竹槍持たずに私達に出来ることはなんなのだろうか。

    約3年前

  7. 話題の公演 https://t.co/anAAnEhbOF ~4/25 ブロードウェイ・バウンズ/RED WING/5.0(2) ~4/25 劇団文化座/ビルマの竪琴/5.0(2) ~4/30 青年団リンク やしゃご/てくてくと/5.0(2) →続く #東京観劇カレンダー

    約3年前

  8. 文化座「ビルマの竪琴」観てきた 泣いた。合唱は人を繋ぐ 中村役?の人の声がほっこりした はじまった瞬間から彼の地彼の時に一瞬でトリップした。美術音人がすっと信じられるもので心地よかった ビルマ人も素敵だった 映画もみよっ ミャンマーのこと今だからもっと知りたくなった

    約3年前

  9. 話題の公演 https://t.co/anAAnEhbOF ~4/25 劇団文化座/ビルマの竪琴/5.0(2) ~4/30 青年団リンク やしゃご/てくてくと/5.0(2) ~4/25 iaku/逢いにいくの、雨だけど/4.8(5) #東京観劇カレンダー

    約3年前

  10. 話題の公演 https://t.co/anAAnEhbOF ~4/25 劇団文化座/ビルマの竪琴/5.0(2) ~4/25 iaku/逢いにいくの、雨だけど/4.8(5) #東京観劇カレンダー

    約3年前

  11. 昨日、六本木俳優座での劇団文化座「ビルマの竪琴」を観劇。 水島上等兵は、日本の戦争責任を全て背負っていた。 為政者が国民(労働者)に責任を持った、コロナ対策していたら、第三回の緊急事態宣言を出さなくてすんだのでは。 改めて日本の戦… https://t.co/zglVs8v4y0

    約3年前

  12. 文化座「ビルマの竪琴」。昨日は妹と母が来ました。 他にも色々な知り合いが来てくださったようで嬉しい夜になりました。 23日、昼夜があと少し残席があるとのこと。この機会に是非ご覧ください!こちらに連絡していただいても対応いたします。 https://t.co/cikcWyhOHB

    約3年前

  13. 劇団文化座「ビルマの竪琴」観てきました! ポーに出演して下さった沖永さんご出演です 観れて本当に良かった… とても素敵な作品でした! そう、忘れてはいけない。 星がとても綺麗でした 25日までです!ぜひぜひ!! https://t.co/fbIdN7etO3 #劇団文化座

    約3年前

  14. 今日は桑原泰さんが出演している、劇団文化座「ビルマの竪琴」を観させていただきました! この作品は戦争の話ですが、悲しいよりも何か暖かくもあり切ないような、そんな気持ちになり、観ている途中で何度も心打たれる場面がありました。 こ… https://t.co/v7sKJXDgfc

    約3年前

  15. ずっと出演させて頂いている劇団もっきりやの劇作家、杉浦久幸氏脚本による https://t.co/IKlE1qdZm9

    約3年前

  16. 文化座「ビルマの竪琴」 感動‼️ ぐっときました🥲 場所: 俳優座劇場 https://t.co/E7s6U4M11L

    約3年前

  17. アメブロを投稿しました。 『劇団文化座「ビルマの竪琴」観劇』 https://t.co/9HhVunqdOV #アメブロ

    約3年前

  18. 俳優座劇場で、文化座「ビルマの竪琴」拝見。現代の俳優に戦争のリアリズムを求めるのは無理な話。それより、現代でもなお続き日々目撃しているインパール的病理、ミャンマーの惨状が去来し、今日的舞台になった。 https://t.co/t3FpxPiLW4

    約3年前

  19. 【活動報告】 先日、劇団文化座様の舞台「ビルマの竪琴」に使用される合唱のレコーディングに行って参りました!🎙️ ワグネルは、このように演奏のご依頼をいただくことが度々あります!✨ 本番の舞台は4/15(木)からスタートしますの… https://t.co/PSfDcz8bJx

    約3年前

  20. 文化座「ビルマの竪琴」、稽古場最終日でした! 充実の舞台になってきました。是非観ていただきたいです。客席を半分でお届けするので、ご観劇検討中の方はなるべくお早目にお知らせください。劇場でお待ちしております。 https://t.co/c5iz1Y3yPB

    約3年前

  21. 水先案内人 大島幸久がセレクト いま、最高の一本 劇団文化座『ビルマの竪琴』。 https://t.co/tVfNCJcYVV #ぴあアプリ #ぴあステージ #劇団文化座

    約3年前

  22. 稽古も大詰め、文化座「ビルマの竪琴」。 レコーディング第4弾です。最初の劇団女優さんによる女性コーラス、先日のメインレコーディング、朝川さんのハープに続いて、最後はある場面の男性コーラス。鵜山さんの後輩、慶應ワグネルソサィティ男声… https://t.co/11x1uAZbI4

    約3年前

  23. 昨日は文化座「ビルマの竪琴」のレコーディングでした!サウンドイン Bスタ。エンジニアは古川健司さん、演奏は長崎真音さん、指揮は福井雄一さん。今回はここに朝川朋之さんのハープを明日、鵜山さんの後輩ワグネル・ソサィティ男声合唱団の歌を… https://t.co/uV9QLhaWGD

    約3年前

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