公演情報
「フリムンシスターズ【12月1日(火)と12月2日(水)の大阪公演中止】」の観てきた!クチコミ一覧
満足度★★★★★
劇場で芝居を観る愉快を、本当に久しぶりに味わった。
松尾スズキのコクーン芸術監督就任第一作。「キレイ」で当てたのはもう二十年も前か。それとは全く違うテイストで、かつての松尾大人計画の味を残しながらも、新しいコクーンの出発を期待させる新作ミュージカルの登場である。新しく、若々しく、心弾む。
何よりもいいのは、現在の状況の中でまったく委縮していない。「いい加減な指示なんかには従わないで自由でいよう」という趣旨の曲もあるが、スタッフもキャストも舞台の上でのびのびとはじけている。そこが今の時期には素晴らしい劇場からの贈り物になった。
舞台の大枠はゲイの信長(皆川猿時)が仕切るショーパブになっていて、物語や人物紹介はほとんど、彼によってされる。正面に舞台に当たる空間があって、そこで芝居もあるし、歌もある。よくある構成舞台なのだが、舞台の色使いや枠取りの美術が素晴らしい。その上の二重にバンド(6名編成)がいる。物語は西新宿の地方の若者が集う吹き溜まりのような地区にあるコンビニとその二階にある従業員の部屋から始まる。そこに住んで、禿のコンビニ店長(オクイジョージ)との情事にふける沖縄出身の売り子(長澤まさみ)、10年前の妹への交通事故でスターの座を追われたかつての大女優(秋山奈津子)と、そのゲイのマネージャー(阿部サダオ)が久しぶりの出演の稽古に臨む話を軸に展開する。物語は一日半なのだが、その間に、登場人物たちの過去がほとんどクライマックスの連続のように歌と芝居で、挿入されるので、展開は波乱万丈、それを追ってもあまり意味はないが、要するに、この三人と彼らを取り巻く現在の社会からこぼれおちたひとびとたちは沖縄言葉で「フリムン」(狂う)にならなければ生きていけないのである。
そのフリムンぶりは、踊りであったり、音楽であったり、時には「後ろからズドン」という曲の物騒な歌の警官の上司殺人だったり、コンビニで売っているコンドームを盗む奴隷労働の現場とか、後ろからやって、と下ネタだったり、伊勢丹のパッケージを衣装にした伊勢丹の上品さを守る会を名乗るやくざ集団だったり、ユタのお告げが現実になったり、半端ないのだが、でたらめに見えながら今の空気をはらんだ統一感があって、素直に観客は乗っていけるのだ。暗くなりがちの話で、松尾スズキの過去の小劇場作品は暗さに居直ったような凄みがあったが今回は、暗さを笑い飛ばして前へ進んでいく。俳優もみな適役。主演の三人は、それぞれ出身は違うが、うまいことでは定評がある何でもできる人たちでその力を十分発揮している。観客も巻き込まれて陽気になる。
それは、脚本だけではない。
この舞台のスタッフはあまり知らない人たちだ。私が記憶していたのは振付の井出茂太くらいで、美術の池田ともゆきも音楽の渡邊祟も知らなかったが、立派に大劇場をこなす。キャストは脇は大人計画が固めているがそれでも中には歌唱力で客席がどよめく妹役の笠松はるのような新星がいる。細部に至るまで華々しいのだ。
私は、オンシアター自由劇場が初めて「上海バンスキング」で博品館劇場へ進出した公演の劇場の熱狂を思い出した。この舞台には劇場とともに時代が動いていく感じがある。なるべく早い機会に再演を期待している。
満足度★★★★★
ミュージカルは少し苦手意識がありましたが、
この松尾スズキさんのミュージカルは毒が効いていて
笑いも満載で面白かったです。
長澤まさみと阿部サダヲが出てくると空気が変わりますね。
設定が意味不明でお客が付いていけなくなることなく、
目的がしっかりしているのでわかりやすかった。
最後は奇麗にまとまって終わったのでスッキリした。
満足度★★★★★
ギャグと笑いと毒にくるんで、新宿二丁目のゲイ街や沖縄の米軍基地にまつわる差別や悲しみを描いていく。人生で挫折した登場人物たちの、再起の物語。自由への新たな一歩が最後は明るく華やかに歌い上げられる。松尾スズキには珍しい、メッセージがくっきりとした向日的な作品。たいへんおもしろかった。
ミュージカルなので、歌の場面も物語を盛り上げ、大いに感情を高まらせてくれた。猥雑で下ネタ連発の、少々長い前日譚のあれこれの後、冴えないコンビ店員(実は沖縄のユタの=長澤まさみ)と、落ち目の大女優(秋山菜津子)と付き人のゲイ(阿部サダヲ)が出会う。その第一幕の後半、長澤まさみが街中を突っ走っていく「うちはフリムン」から、物語が一気に活気づく。登場人物をリアルに造形し、観客の感情移入で、その世界を共に生きるというリアリズム演劇ではないので(いうまでもありませんが)、壮大なおふざけの中に、笑いと悲しみ、社会と歴史がうむ切ないあつれき、そしてあすを生きる活力がうまれてくる。デフォルメや人物像の単純化も多いので、そこは要注意。しかし、作者の視線は基本的にあたたかい。
「後ろからズドン」で、どんどん人物が死ぬが、死ぬことに悲惨はない。死んだ人は皆、派手な衣装で舞台に現れて、芝居を盛り上げる。ドンパチの見せ場が多く、最後は爆発・火災まであって、観客へのスペクタクルなサービス満点。はやめちゃとも言える様々な伏線をちゃんと最後は回収して、衣装も華やかな大団円だった。
長澤まさみは可愛いだけでなく、大いにはっちゃけていた。秋山菜津子も緩急自在にぶたいを牽引。おねえと江戸っ子をくるくるかわる阿部サダヲのギャグも絶品だった。ゲイの親分・信長とヤクザの親玉・徳川を演じ分けた、存在感たっぷりの皆川猿時の芸達者も素晴らしかった。そして、芸大声楽科で学び元劇団四季の笠松はるの歌が、ずば抜けて良かった。休憩20分含め3時間30分だが、長さを感じなかった。特に第2幕はもっとみていたいほど。