酔鯨云々 公演情報 「酔鯨云々」の観てきた!クチコミ一覧

★ 満足度の平均 ★ ★ ★ ★ ★ 4.4
1-7件 / 7件中
  • 満足度★★★★

    16日14時開演回(千穐楽、2時間)を拝見。

    よさこい鳴子踊りに、土佐弁に、登場人物の一人一人に脈打つ高知の気風…圧倒的な熱気で観客を席巻していった2時間。粗削りとはいえ、本作が「商業演劇」だったならば、上々の出来栄えかと。

    だが、本作は、勿論、娯楽中心の「商業演劇」ではない。
    舞台床面の「旭日旗」デザイン
    大量殺人犯が身にまとう紅いジャージ上下が象徴するのは「日の丸」
    劇中、特に「後藤梗子」との口論の端々から滲み出る「大浜六郎」の思想…
    敵討ちなり・「お国のために」なりといった、古来から我が国に根付く、自己犠牲さえも厭わない「精神的伝統」を天皇陛下に具現化させた上での刺殺=「全否定」こそが、作者が本作に託したメッセージだと、私なりに理解させてもらった。
    ただし、(特に最後の陛下降臨のシーンなどは)過大なテーマに脚本が位負けしていたように感じられた。

    ネタバレBOX

    なお、演じ手では
    軽妙洒脱な土肥役を好演の
    松田洋治さん
    DULL-COLORED POPの福島3部作・第1部『1961年:夜に昇る太陽』での純情可憐な少女から一転、凛とした女将を演じた
    倉橋愛実さん
    そして、こんな凄い座組の中でもキチンと存在感を示した
    相原佳花さん
    のお三方が特に印象に残った。

    【配役】
    大浜六郎(会社経営。伝統保守的思想の持ち主で策士。一人息子を殺された)
    …大滝寛さん
    土肥慎二(法務省広報官…のフリをした、六郎経営の会社の社員)
    …松田洋治さん
    後藤梗子(リベラル思想の持ち主。殺されはしなかったものの、娘に精神的な傷を負わされた)
    …小林あやさん
    西村千花(梗子の娘の友人で知的障がい者。殺傷現場で受けた傷跡が今も残る。琢馬と相思相愛)
    …相原佳花さん
    山本琢馬(加害者の父親の会社から仕事をもらっていた左官。娘の死後、悲嘆に暮れる妻から心が離れ、離婚。亡くなった娘の友人である千花に惹かれている)
    …鎌倉太郎さん
    桜井守行(出馬予定の政治家の私設秘書。当人が剣道の有段者であることが知れると、雇い主である政治家の意図を六郎たちに推察され…)
    …鍜治本大樹さん
    中岡結美(琢馬の別れた妻。千花にあからさまに敵意を示す。職業は高齢者介護)
    …坂井香奈美さん
    高坂峯子(料亭「酔鯨」の女将。土佐の女らしく、肝が据わっている)
    …倉橋愛実さん
    渡辺隼人(加害者の父親が経営する建設会社の社員≒ヤクザ)
    …石黒光さん
    大石洋多(加害者の父親が経営する建設会社の社員。隼人の舎弟)
    …鹿野宗健さん
    廣井新助、天皇、他
    …照井健仁さん(「影の主役」を熱演!)
  • 満足度★★★

    凄まじい熱量の濃密な時間と言葉の暴力の嵐。

    己の目的のために人を傷付けるのも厭わない言葉を発する人の中にも確かな正義がある。

    だから相容れない言葉も傾聴すべきと思うものの、真意なのか甘言なのか悩まされ騙されてなるものかと勘ぐってしまう。

    信頼関係がない人の言葉は届くことなく、悪意のみが溢れて主張は平行線を漂ってしまう。

    自分の主張を理解してもらう為には、まず人の主張を受け止めなきゃと思いながら観てたら、人智を超えた結末に言葉を失いました。

    ネタバレBOX

    ラストの陛下のくだりで陛下の台詞が聴き取れないこともあり、政治的な思想のない私でも象徴たる陛下に対して不敬に当たるのではないかと興醒めしてしまいました。

    帰りに貰った戯曲を読んでからは納得しましたが、ひき込まれた舞台だったからこそ、最後の最後に突き放された感は半端なかったです。
  • 満足度★★★★

    文化庁主催の戯曲新人賞の入選作である。
    演劇界と官庁(政府行政機関)との間には長い確執の歴史がある。そのぎくしゃくぶりは、いまもパンフの裏にある主催者挨拶にも表れているが、演劇側も新劇団が軸となっている公益社団の劇団協議会が共同主催して、時代に合った関係を築こうとしている。
    文化庁の旗印は時代の文化を創造する新進芸術家を育成する、となっているが、戯曲は上演されてこそで、戯曲が演劇にがなるまでフォローしなくては意味がない。
    そこで、中野の小劇場を抑えて、劇団側も中堅の俳優を出し、演出もそこそこの若手でとにかく結果をと、やってみる。形だけは公共の文化振興の体裁だけは整える。
    演劇の中の戯曲の在り方を知らないイベント化である。江戸川乱歩賞とはわけが違うのに気がっつかないふりをしている。
    国立劇場でも、創作歌舞伎をもう何十年も新人募集しているが、その後使える本ができたという話も、いい作家が生まれたという話も聞かない。
    本気で応募した人たちが気の毒である。演劇側からすれば、正直、十万円の賞金で、いいホンができるはずないよな、と思っているし、官庁もこれでは演劇界を懐柔できない、と思っている。それなのにだらだらと意味のないイベントを続ける。コンクールなら、民間の利賀村の演出コンクールのほうがはるかに打率が高い。
    戯曲以外では実績が上がった仕事もある。国立劇場の歌舞伎の研修生制度は大きな成果を上げて今や、国立の研修生がいなければ幕があかない(ということもないだろうが)といわれている。新国立の俳優養成でもすでに確かな脇役は生まれてきている。それぞれのアーカイブも充実してきた。どれも幕内の専門家が深くかかわっていて、文化庁の小役人が「ご挨拶」したり、組織に口出し(天下り)していないからである。
    戯曲に関して、文化を創造する新進芸術家のために「目に見える」事業をというなら、
    帰りに、出口で、脚本を無料で配っていたように、小劇場で、観客に脚本を配る助成金を出す、というのはどうだろう。小劇場でもいくつかの劇団は千円で、脚本を売っている。売ってほしくない劇団もあるだろうが、舞台で上演した作品の戯曲に印刷代を助成する、というだけで、戯曲が広く市中で親しまれるようになるだろう。今回の作者の手元にも、書き始める前の段階で畑澤聖吾の「どんとゆけ」の台本は届いていただろう.そうすれば、今回のように、畑澤作品と同じようなシチュエーションの弱さがそのまま出てしまうようなことはなかったに違いない。
    こういうところにも文化庁の「演劇という芸術」も、「興行や教育手段としての演劇」も全く分かっていないダメサ加減が現れている。

  • 満足度★★★★★

    良かったです。追記予定ですが、考えたことがすぐ文章になればいいのに・・・

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/02/13 (木) 19:00

    2018年「日本の劇」戯曲賞最優秀賞受賞作品。
    重いテーマを個人の感情に引き寄せるのは
    勢いのある高知弁と畳みかけるような台詞。
    ところどころにクスリとさせるユーモアを差し込みつつ
    自分はどちら側につくだろうと考えさせる。
    キャラと言葉は生き物であり、どちらも土地に根差している。
    それを強烈に印象付けて素晴らしい。
    中屋敷さんの演出がまた秀逸。

    ネタバレBOX

    舞台中央に旭日旗の柄、真っ赤な上下の若い男が登場する。
    この赤い男は、人々が集まる料亭の座敷の中央に陣取り
    膝を抱えて話を聴いていたかと思えば
    人の話に合わせて口パクで台詞をなぞったりする。
    他の出演者からは見えない体の、不思議な存在。

    死刑制度が廃止されて8年、犯罪被害者や遺族の会、そして世論の中から
    「死刑が無いなら自分が犯罪者となって復讐する」
    という声が上がり、ついに“仇討ち”の復活を望むようになる。
    出来た法律が「生命再興法」という合法的仇討ち。

    高知県で起きた無差別殺人事件の遺族が料亭に集まり、
    仇討ちに誰が志願するかを相談する。
    反対する者と激しいやり取りが続く中、まだ来ない一人に
    志願させようと画策が始まる・・・。

    受刑者と遺族は、白装束に着替え帯刀して向き合う、という
    何とも古風な方法が可笑しい。
    おまけに仇討ち志願者はクーポン券がもらえる、とか言うので
    結構、国が考えそうなことだと笑ってしまった。

    高知弁にはストレートな物言いが良く似合う。
    本音以外口にするものか、という力を感じる。
    キャラも強いし口調も強い。
    役者さんは疲れるだろうな。

    ラストの“天皇降臨”には思わずポカ~ンだったが
    考えてみれば仇討ちといい、志願の押し付け合いといい
    極めて日本的感情のような気がする。
    そういうことは国が法の下でやればいいのに、
    的なところも含め。
    天皇の登場はその象徴のようなものか。

    亡くなった方のプロフィールを丁寧に拾う
    新聞の社会面が示すように
    日本は死に対してとてもウエットだ。
    義理人情や自己犠牲、そして究極は“お国のために散る”・・・。
    そう考えるとあのラストシーンは
    そんな日本人を揶揄しているように見えて来る。

    中屋敷さんの演出がとても面白かった。
    赤い男が、見えない存在としてずっとあの輪の中に居る。
    加害者であり、被害者であり、日本人であった。






  • 満足度★★★★★

    文化庁に忖度しているのか、していないのか、シニカルでした。

    ネタバレBOX

    死刑制度が廃止された代わりに遺族に仇討ちが認められ法制度化された日本が舞台。通り魔殺人事件の被害者が集まった会合で、受刑者に対して誰も仇討ちに名乗り出ない中、遅れてくるはずの男に名乗り出させようと画策する話。

    舞台床には旭日模様、ラストは模造刀とは言え天皇陛下を刺して、意味不明ながら何か意味を持たせようとしているような、いないような。

    原発事故が起きてからの原発反対運動のような、仇討ちで人が死んでからこの生命再興法反対運動が盛り上がるだろうという指摘は痛いところを突いていました。

    黒いヤクザが二人来たところで、ゴドーじゃん、待っている男は来ないなと思いました。

    生命再興法については、どのような意味でどのような漢字を書くのだろうか、聞いていてイメージが湧きませんでした。劇中で言及してほしかったです。ですが、文化庁が絡むと太っ腹、帰りに脚本が配られ、漢字は分かったというわけです。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    今年早くも三回目の観劇となった死刑制度もの。
    ポカンとするラストだったが、四国で活動されてる若手脚本家の大賞受賞作に悪い評価は出来ん。
    上演期間中ずっとかは分からないけど、終演後、上演台本無料で配布してました。

    花を摘むか育てるかは観客云々として、一つだけ意見を。
    前半の9割近く、主要な男女の会話を観客に背を向けたまま進行させる演出は正解だったんだろうか。

    それと、嫌な役の二人組の兄ちゃん達。
    観客お見送りする笑顔は、気さくで人の好さそうな兄ちゃん達そのものでした。役者ってこうゆう役上手くやると、本当損すると思いました。

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