アリはフリスクを食べない 公演情報 アリはフリスクを食べない」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★

    再演ということだが、私は初見。以前、伊藤企画公演「きゃんと、すたんどみー、なう。」を観た際に主人公が知的障碍者であった。今作も知的障碍者の兄を持つ弟、その彼女。幼馴染や長く付き合いのある人々のある一場面。
    敢えて、「場面」といおう。きっと、私が観たこの「場面」は決してどらちドラマティックな事や、センセーショナルな事ではない。長く続いている生活の「一場面」に過ぎない。だから、小松台東や、ホエイ、のようなじりじりするけど、それが特別に珍しい事柄ではない。だからこそ、ある種身近であるけど、「見ようとしない事柄」だったりする気がした。当事者であったら、キツイ事がある。その状況を打破するのに、魔法使いが出てくる事は無いし、起きたら、全て夢でした的な事もない。そこには、ごく近くに存在する心の動きや、吐き出した言葉が目の前にある。理屈ではわかりきってる事が、本当に正しいか、正しくないか劇中の林先生の台詞が回る。
    歩が言う言葉も嘘はなく、しかし、当事者でない私にはやはり、正直、遠くの言葉に聞こえてしまう。
    障碍者の身内と障碍者と接点がある人々の共通項。
    観ることで、一方通行の見方が変わるとか、共通項が、もっと、広くなることが、健常者、障碍者という「壁」みたいなものが
    低くなるのかもと、ぼんやり思う。

  • 満足度★★★★★

    この人の創る舞台は、なぜこんなにも切実なのだろう。「リアル」などという言葉はいまさら使いたくないけれど、でもその言葉がこれほどピッタリくる芝居を私は他に知らない。

    知的障害のある兄と、その兄の世話をするために司法試験を諦めた弟の暮らすアパート。

    弟の婚約者、兄弟がアルバイトしている工場の社長や同僚。兄弟の幼馴染やその他彼らの周囲の人々。登場人物それぞれの言葉や行動にウソがない。いや、そんな簡単な言葉では伝えきれない不思議な真実味がある。

    母を亡くしてグループホームに入っていた兄とともに暮らすため司法試験を目指すことを諦めた弟。しかし、婚約者の両親の反対にあってとうとう兄と離れて暮らすことを決める。その決断に向かうまでの細やかな機微を伝えるいくつもの場面。

    一方で、兄の側の想いもなおさら丁重に描かれていく。自分自身に対する歯痒さ、彼自身の恋、苛立ちや不安。

    小さなアパートの中で人々は言葉を交わし、迷い、喜びや悲しみ、怒りなどと明確に名付けることのできない曖昧な思いを抱えて繋がっていく。

    ままならないこの世界で生きる人々の息づかいが聞こえる。そういう時間だった。

  • 満足度★★★★★

    自分がその場に居合わせているようで、ひたすら苦しかった。強く胸を打たれた。

  • 満足度★★★★★

    とてもとても意地悪な脚本
    知的障害を持つ兄と暮らす弟、そして彼らを取り巻く人々
    何もかもの情報を与えられていない中で観客は
    その関係性に理想を少し求めたり苦しさを知ったり
    結局取り巻く彼らと同じに自分の理想を重ねていく

    僕は知的障害者のことをよく知らない
    世界がどう見えるのか、同じものを見てどう考えるのか
    何も知らない
    でもそれは知的障害者にだけではない
    僕は自分以外の人の世界の見え方を知らない
    何を考えて、その人が何なのか、誰も彼もを知らない
    だから人をどう認識するかだ
    「人の気持ちになってと考えろ」とよく言うけれど
    そこで考えた気持ちは結局自分のものだ
    誰かと知ろうとするには、まずはそこに人がいることを知らなければいけない
    自分にはわからない人がいることを知らなければいけない
    この作品で描かれた人たちはただ多くの中の一つの状況に過ぎない
    だから正解も間違えも答えもない
    自分以外の誰かに気付く、そんな作品だった

  • 満足度★★★★

    岡野康弘(Mrs.fictions)さん、工藤さやさん他、面白さ折り紙付き・お笑いセンスが高い俳優が揃ったミラクルな座組み。
    とても楽しく拝見したが、現実はもっとドロドロで綺麗ごとや誠実さなど消し飛ぶよと自身の経験と重ねてしまったり、・・。
    岡野康弘(Mrs.fictions)さんのパートを観るだけでも3500円の価値あり!!

  • 満足度★★★★★

    やしゃご『アリはフリスクを食べない』@こまばアゴラ劇場

    親が亡くなり知的障害を持つ兄と暮らすことになった弟と、彼らを取り巻く人々の話。

    説明なしにそれぞれの関係と背景を見せていく、脚本の上手さ。

    (実世界では、あたり前のことなのだが)誰もが1つの役割としての性格や設定を持つのではなく、ちょっとしたエピソードや台詞・会話によって、その人物像に深みを持たせている。
    だからリアルであり、人間の(他人の目から見た)可笑しさ、哀しさが感じられる。

    (ネタバレBOXへ)

    ネタバレBOX

    登場人物たちの配置も見事だ。例えば加奈子の母がいることで、障害者を家族に持つということを、智幸と歩の兄弟からの視線だけでないものを見せてくれるし、母の「触らないで」の一言も、それだけで物語全体への意味を持ったりもする。

    「正論」として振りかざす手の空虚さを感じつつも、その正論に共感したり、でも「しょうがない」という気持ちにも納得したりする。
    もし自分が同じ立場であったとしても、やっぱり正論を振りかざしてしまいそうだし、苦渋の決断もするであろう。

    つい「誰が悪い」とか「何が悪い」と「悪いもの・こと」を追いがちであるが、この物語を観ることで、そうした考え方が果たして良いのであろうかと疑問を投げかけてくる。
    つまりそれを追うことが、差別につながってしまうということにも気づかされるのだ。

    他人から見る場所からは、正解は見えない。
    それぞれが、それぞれの立場で考えることが正解なのだろう。

    「私たちだったらどうするか?」「私だったら何という言葉を発するのか」という投げかけを受けて、帰り道もずっと考えるというのも良いことだった。

    知的障害を持つ兄役の辻響平さんがとても良かった。
    弟・歩の婚約者を演じた幡美優さんの後半の絞り出すような台詞もいい。
    兄弟の幼なじみ・舘そらみさんの自然体の優しさが良いから、ラストにちょっと哀しくなってしまう。
    工場の社長・工藤さやさんの、工場を急に任され、実は少し無理しているのかも感もいい。
    知的障害があり兄弟と同僚役の井上みなみさんのインノセントさからくる叫びが、ヒリヒリする。
    三上(男のほうの)役の尾崎宇内さんの「何かが起こりそう」さを孕む、ヒヤリとした冷たさがたまらない。
  • 満足度★★★★

    演技力は素晴らしかったです。

    ネタバレBOX

    恋人と結婚したいがために、恋人の父親の意向を踏まえ知的障害者である兄を施設に入れることを決断した弟の話。

    障害者を受け入れている社長の気持ちも分かりますが、様々な考え方があるのですから、弟と恋人の決断に対する暴言は言い過ぎだと思います。出生前診断については、そのような制度がある以上利用する人がいるのは当然のことです。

    知的障害者に、薬の横流しをそそのかす輩が接触してくるというのは目から鱗でした。

    今後、幼馴染の女性が施設に遊びに行くかですね。
  • 満足度★★★★★

    アゴラ劇場に生活感の滲み出たリアルなアパート部屋が出現。
    そこに暮らすのは知的障害者の兄と、その弟。
    時には和やかで時には気まずく、時には賑やかで時には「えぇっ!!」
    そこには幾つもの日常が息づいていて、まさにリアルofリアルの空間世界。
    とは言っても例えば人様の部屋をじ~っと日々観察したところで、こんなにも感情を揺さぶられる事はないわけで・・・
    これが演劇の生み出す魅せるテクニックというやつか。
    哀しく切ないのだけれど溜息が漏れる程に「う~ん凄い!」つまりはパーフェクトだと思えました。

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/09/02 (月) 19:30

     重い話題を扱った作品だった。やしゃごの前身である青年団リンク伊藤企画の2014年の旗揚げ公演の再演。知的障がい者の兄とその弟を取り巻く人々の群像劇。勿論、軸になるのは兄弟だが、他の人々もそれぞれの事情を抱える。そんな中で、兄の誕生日を祝うパーティーの日に、施設に入れる話を持ち出す弟だが…、という展開は、ありうると思えるものだが、巧みな脚本が巧い。障がいを持つことの重さと真摯に向き合った作品は、面白い、という表現は適切ではないが、いい芝居を見せてもらったと思える110分だった。

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