舞台芸術まつり!2017春

オフィスマウンテン

オフィスマウンテン(静岡県)

作品タイトル「ホールドミーおよしお

平均合計点:24.6
川添史子
鈴木理映子
高野しのぶ
橘 康仁
山﨑健太

川添史子

満足度★★★★

「全身がアンテナなのでわ!」というような俳優たちの演技体にびっくりしました。役者のつまらないかっこつけが入り込む隙のない、高い集中力! それゆえに逆に際立つ存在感! 言葉や音や空気によってぐにゃりと変化していく面白い身体! こういったユニークな作風は、「ストイック」になりがちですが、ユーモアが舞台に風通しのよさを生んでいました。独特の文体を持つ戯曲は、「個性的な言語感覚」と「ただのダジャレ?」の狭間をいったりきたりしつつ、確実にこの世界を立体化するために必要な旋律を持っています。

ネタバレBOX

トイレでるるぶを読み続け北海道に思いをはせる男、男子グループでドライブしながらフェスに向かうフリーター、共産党に投票しつづけている売れない役者…雲が浮かぶような登場人物たちの語りは、落語を聴くように想像力を刺激します。もうとにかく最後まで目が離せない、オリジナリティーも完成度も高い世界でした。

鈴木理映子

満足度★★★★★

日常を語りつつ、ちょっと脱臼してみせるダジャレ混じりのせりふ。その言葉とは一見かかわりなく、怪しく蠢き、表情を変える身体。テキストと身体を(解りやすい)意味によって統合しない、という演劇実験は、これまでにも数多く存在しましたが、そのほとんどの主戦場は稽古場。観客にもそれとわかる成果を見せる作品はなかなかなかったと思います。ですからこの芝居で目の当たりにした俳優たちの姿、またそれを「パフォーマンス」として成立させる空間づくりには、驚き、圧倒されました。
トイレでるるぶ読んで旅行気分とか、フェスに向かう男たちのトホホも含んだ道程とか。テキストに書かれた緩い日常の断章が、複雑に変わり続ける身体によってこそ具現化し、そこにいる人々の不安定な立場、関係性を暗示していく。この世界観をどう受け止めるかは、観る人の世代や文化的背景によっても異なるのかもしれませんが、少なくとも私はそのプロセスを見守ることに集中し、楽しむことができました。
ここで開拓されたこと、その出発点は、複雑で微妙な身体表現の可能性だったと思います。しかし、それが成功すればするほど、とても強い空間づくりができていく……という一種の矛盾についても、観劇後は思いを巡らせました。演出家の意図の行き渡った強い空間は私も好きです。が、それと同時に、どこか(間の)抜けたような自由さも感じたい。贅沢かもしれませんが、この綱引きのバリエーションを、もっと観たい、感じたいとも思いました。たぶん、オフィスマウンテンは、今、もっともスリリングにそれを見せられる集団のひとつではないでしょうか。

高野しのぶ

満足度★★★

細長いシートが上手にぶら下がっている以外はほぼ何もないSTスポットの白い空間に、現代の普段着姿の若者7人が登場します。役を演じる俳優、踊りを踊るダンサーというより、パフォーマー(演技者)と呼ぶのがふさわしそうな存在の仕方です。演者がいて観客がいますから、まぎれもない演劇作品ですが、作品全体が観客を含めた実験であり、インスタレーションのようだとも思いました。

作・演出の山縣太一さんは数年前にチェルフィッチュや遊園地再生事業団の公演で拝見していましたが、今回は出演されていません。ご本人が出演するオフィスマウンテンの公演も観てみたいと思いました。

ロビーでこの公演のサウンドトラック付きの台本を購入(1000円)。音楽・出演の大谷能生さんがサインしてくださいました。

ネタバレBOX

役柄は野外音楽フェスに行く男性たち、キャバクラに行く男性たち、そしてキャバ嬢たちなど。大谷能生さんの役は音楽フェスに出演する人です。

出演者は観客という他者の前で、自分の心身をさらしていました。手足の動きも表情の変化も、胸(乳首?)をつまんだ時の体の反射も、使えるもの・ことは全て使うというハングリー精神を感じました。演技の求道者たちをじっと見つめる時間だったように思います。音楽も照明も、彼らの演技の補助をするとか、作品の方向を定めるとかでなく、同じ出演者としてそこにあるようでした。

戯曲は基本的に独白で構成されており、現代日本、特に首都圏の過去数十年と現在とが、若者のシニカルな話し言葉から浮かび上がります。ダジャレの言葉のセンスが独特で、とても面白いです。たとえば「言い訳、おすそ分け、ヨイトマケ、パケ放題」で笑っちゃいました。語尾が変化するのも楽しかったですね。言葉の意味をそのまま届けるような演技ではなかったので、言葉と意味、演技、動作を別々のものとして味わいました。

出演者の中では稲継美保さんが特に印象に残りました。観客とともにある柔軟さと攻めの姿勢が動き続ける体に同居していて、挑発的な視線に私自身が影響を受けました。

終盤になって照明が明滅を繰り返し、不穏な雰囲気が高まってくるのが良かったです。

橘 康仁

満足度★★★★

とてもとても不思議な舞台でした。言語と身体性がこういう形で表現されるのはすごいと思いました。4ヶ月週二で稽古したと聞いて、尚驚きました。

山﨑健太

満足度★★★★

なんだかわからないが凄まじいものと対峙させられる稀有な時間だった。眼前で蠢く俳優や音、光は私の中に蠢く異物をも感じさせ、このような時間は他でなかなか体験したことがない。俳優の身体の一部が独立した生き物のように見える場面もあれば俳優を含めた空間全体が一つの生き物のように見える場面もあり、俳優の身体と周囲の空間との関わりの可能性の底知れなさを感じた。
昨年の『ドッグマンノーライフ』は観ていないのだが、一作目『海底で履く靴には紐がない』と比べると出演俳優の多くが「山縣メソッド」を我がものとしているように見え、長い稽古期間と継続した活動の成果が十分に見える作品だった。

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