鏡ヶ池操松影―江島屋騒動- 公演情報 遊戯空間「鏡ヶ池操松影―江島屋騒動-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    三遊亭圓朝作の「鏡ケ池操松影」の中にある「江島屋騒動」を中心に「怪異」の物語を紡ぐ。迫力ある語りによる心情表現、圧倒的な情景描写が 観て/聴いている者の心を捉えて離さない。怪異の世界観であるが、その奥底には人間の欲望やエゴが渦巻いている。それは一面 人の本質であり 生きている限り持つであろう感情、それを十二分に引き出したと言っても過言ではない。

    当日パンフによれば「鏡ケ池操松影」は、膨大な登場人物とエピソードが交錯する長編で、公演では「江島屋騒動」を中心にコンパクトにまとめ上げたとある。遊戯空間は、前作「牡丹の花は匂えども」で 三遊亭圓朝の人物像を描いており、今回は彼の創作ものを上演するという妙。勿論 本作は妖話会stage-6として独立しているから、この朗読だけ聴いても十分楽しめる。物語(脚本-構成・演出)の面白さは言うまでもないが、登場人物と情景描写は語り手による表現力、そして生演奏(和楽器)による音響が効果的に支える。拍子木や助(スケ)板を叩くことで場面転換を表す。
    見(聴き)応え十分。
    (上演時間1時間50分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は 入口の反対側に雛壇を設え、横並びに4人。語り手の前に譜面台があり台本を置く。上(右)手から演奏の設楽瞬山サン、加藤翠サン、中村ひろみサン、篠本賢一サン、全員和装である。特に女性2人は 留袖に金帯という祝い事に着るようなもの、それが物語の中で重要な役割(幽霊)を担う母親をイメージさせる。天井からは半透明のビニールの切れ端が垂れ下がっている。
    客席はいつも演技をする板上に椅子が置かれ、映画スクリーン(雛壇)を見上げるような感じ。それによって 脇目も振らず集中して聴くことになる。全体的に薄暗く、怪異な雰囲気を漂わすと同時に 語り手へのスポットライトという効果をもたらす。なお、語り手は 登場人物の性差に関係なく、場面ごとに交代して朗読する。

    倉岡元仲という大悪党と怪異の中心となる江島屋を紐付け、後々 江島屋の養子となる野口安次郎 のち治平の仇討ちといった3つの話を凝縮して構成し直している。中心となる「江島屋騒動」は、江戸にある大店の古着屋が舞台。見た目は綺麗だが「偽物(イカモノ)」と呼ばれるまがい物を売り、暴利を得ている。下総国・大貫村のお里という娘が、名主の倅と婚礼を挙げることになり、この江島屋で着物を購入する。婚礼の当日、その着物が 雨に濡れていたこともあり腰から下が破けてしまう。恥をかいた娘は悲観して身投げしてしまう。その母が江島屋を呪い破滅へ といった物語。

    闇と業の深さ そこに人間の心が映し出される。きれいごとだけでは生きられない、逆に言えが欲望とエゴを浮き彫りにすることによって人間の心底が立ち上がる。社会(世間)的に悪と思われていることと 怪異を切り結ぶことによって、現代的で人間の業や社会の闇をあぶり出す物語になっている。そして人が抱える葛藤や平穏 それが奇妙なリアリティをもって表出する。そこに舞台ならではの面白さ醍醐味を感じる。

    少年の頃、大金を奪われ父をも殺された野口安次郎が倉岡元仲を鏡ケ池の畔で仇討ちすることになるが、元仲の悪行を記した紙を拾い上げるところは唐突で それ以降は急転直下の展開。パンフには3つの因縁が鏡ケ池へ流れ込むように構成したとある。語りに 尺八や能管といった楽器で情景などを効果付けるが、音楽に負けず劣らず声量に力がある。驚き叫びといった語り 同時に顔を歪めたり目を剥く、といった豊かな表情。そこにこの公演の魅力ー圧倒的な没入感ーを感じる。狂気は人の人生を狂わすが、その因果は巡り回ってくる。その戦慄と興奮の絶頂が堪能できる公演。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2026/09/20 13:37

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