とりどりの咲く歌 公演情報 スミカ「とりどりの咲く歌」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    個々の瑞々しさ
    どのシーンにも
    息を呑むような空気の実存感があって・・・。

    その満ちかたの
    深さとやわらかさに
    しっかりと包まれました

    ネタバレBOX

    祖母と孫をめぐる
    いくつものシーン。
    それらは記憶の断片のように
    緩やかに崩れた時間軸の中で
    舞台に浮かび上がってきます。

    花を育てることや
    料理の仕方、
    警察官の恋心・・・・、
    現実の肌合いが舞台に満ちる中で、
    二人の生活の息遣いや感覚が
    ある種の温度をもって伝わってくる。

    概念で考えると
    とても辛くて切ない物語。
    日和見のように進んでいく記憶の滅失や
    主人公の当惑や抱えるものは
    戻ることなく歩み続け、膨らんでいくもの。
    それはなす術のない事だし
    残酷なことにも思える。

    でも、舞台は、
    そんな概念に染められるのではなく
    時間の肌触りのようなものを
    感覚の広がりのままに
    観る側に伝えていきます。
    交番のシーンに描かれた日常から
    その時々の生活の実感が広がる。
    祖母の異変に気付いた時の驚愕、
    痴呆が進んでいく不安、
    とまどい、苛立ち、
    忘却のなかにも薫る愛情の質感や
    次第に失われていくもの。
    祖母や孫を取り巻く
    街の雰囲気まで含めて
    それらが語られるというよりは
    いくつもの肌触りをもった
    記憶の質感のなかで観る側に伝わってくるです。

    祖母の気持ちの断片が
    花の育て方を書きつけた紙片に込められて、
    あるいはケチャップを買い込む姿に
    よしんば機能しなくなった想いであっても
    孫を思う気持ちが孫の諦観と重なりあって。
    祖母の抗いや愛情の奥行きが
    孫や警察官たちの想いとひとつの時に
    編みあがっていく。

    それは、
    ひとつづつ、それぞれに咲くがごとくの
    シーンに費やされた時間でなければ描きえない
    感覚・・・。

    舞台の上手に創られた造形に
    その姿をみつめる存在がおかれて
    出来事と共鳴していく姿が
    物語の視座をすっきりと現わしてくれる。

    なんだろ、
    たとえばつらかっとか楽しかったとかいう
    感覚のタグが外れて
    ひとつずつの刹那の
    細かい粒子で描かれた実存感やいとおしさが
    そのままに観る側に残る。
    気が付けば
    ただひたすらに
    舞台上の個々の出来事の感覚に
    取り込まれておりました

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    2011/03/10 07:15

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