サザンカの見える窓のある部屋 公演情報 カムヰヤッセン「サザンカの見える窓のある部屋」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    記憶
    人間の記憶は案外、曖昧だったりする。苦しいことや悲しいことは記憶から消去しようと努力するのが脳の働きだから人間は絶望的な出来事を経験しても、どうにかして生きていけるのかもしれない。

    今回の物語はある家族の情景を「記憶」というキーワードをもとに描いた近未来的な作品だった。

    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    人間の脳にチップを埋め込み都合の悪い記憶を改ざんする事も、新しく加えることも出来る研究者・宮下は自分と自分の子供達にチップを埋めて人体実験を続ける傍ら、ある日、同じチップの研究をしているという夫婦が訪れる。

    彼らは実は宮下の長男だったが宮下には肝心の記憶がない。それは遠い昔、長男が勘当同然で家出をしたその日に、宮下の次男がデータを改ざんし記憶を消してしまったからだった。

    改ざんした記憶から本来の脳の記憶を引き出して消してしまった記憶をどのように再生するかを扱ったテーマだが、物語が進むうちに次男が父親に対する深層心理やら、長男の過去の出来事、宮下の過去の出来事が徐々に暴かれていく。

    どちらかというと中盤から後半にかけての記憶の操作ごっこのような描写が絶妙で観ていてワクワクした。終盤、どうしたって長男を思い出せない父親が長男の癖でイラつき注意する場面で、記憶を蘇らせる展開は見事だった。ここで一気に今までの本当の過去が走馬灯のように駆け巡る。それは上から下がっていた記憶の小道具が落ちた瞬間と同時だ。

    記憶チップの意味と同時に家族という血の繋がりも表現した舞台で終盤、ホロリ・・とする。温かみのある人間くさい物語だ。良いと思う。

    もしも、記憶がなくなったとしたら、それは空洞の世界だ。そんな事を考えるとアナ恐ろしい世界だが、近未来はそうなるのだろうか?素敵な記憶しか知らない楽しい世界が・・。

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    2011/03/04 17:56

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