公演情報
TRASHMASTERS「「TOKYO SLUM」」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
久々の生トラッシュ。この所(約3年)配信映像を観る限りであるが、中津留氏の作劇がセンセーショナル優位からリアリティを土台にしたドラマへ、自然な場面の連なりと問題抽出の秀逸さに感心しきりであったが、あるいは映像鑑賞によるものかと思いきや実演鑑賞でも同じ印象であった。東京スラムとは東京というスラムの意と推察した通り、場所こそある特定の(現実に存在する場所を想起させるが)場所で話が展開するが(しっかり接点のある人間の逸話が並行してでなく一つ一つ積み上がる不可逆な展開をさせながら同じ場所で進んで行くのが見事である)、日本の「今」をガッシと掴んで人物たちなりにコミットさせている。就職難、薄給と過重労働、表面上幾ら取り繕おうと左前の日本経済が、劇では言及されないのに「戦争」というものが近く感じられる。
一方弱さを秘めつつも自分の脚で立ち力強く生きる姿を、現実の洗礼を浴びせながらも敗北に埋もれる滅びの美学に頼らず、盛り過ぎにもならず描かれた。何を大切に生きたいか、心奥で共有し合い、信頼をもって手を携えて行く輪の形成が出来過ぎに見えないのは、人がそのようになり得る理由を踏まえているからなのだろう。
新自由主義の申し子のような「目的無き利潤追求の機械」と化した男が、この芝居ではラスボス的存在だが、彼が数年前立ち上げた人材派遣会社の経営が根本的破綻と背中合わせである事が、辞めて行った主人公の社員との対面により露になる。経営の本質がカネ以前に「人」である、という哲学の後押しあってラスボスは懐柔されるが、現実はそう簡単には運ぶまい。巨大資本と結託した政治が見えない中に構築する「巨悪」は、吹けば飛ぶ派遣会社が人道的経営をしようが、丸腰の我々から搾り取る仕組は維持再生産される。が、スラムのあるこの町で、人が生きる圏内で、仲間が形成され相互扶助がその大層な四文字熟語を持ち出さずとも日常の呼吸の中に息づく風景は、何故か確かなものに見えた。絵空事と一蹴し難い実在感を残した。例外的に飄々とした人物が揃った感はあるが、よくよく思い出してみれば、何十年か前はこういう人間が粋さを競うていたような気もする(バブル期特有の世の風潮であったかも知れぬが。。)
とすれば、物理的豊かさが精神も豊かにしたという事になるか。成長は止まり、貧すれば貪する・・真っ先に貪したのは経済界であろうかな。