大礼服・壜の中の鳥 公演情報 巴プロデュース「大礼服・壜の中の鳥」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2026/07/24 (金) 19:00

     『赤糸で縫いとじられた物語 寺山修司幻想童話集』の第1話として発表された「壜の中の鳥」では、朗読劇の冒頭から中盤にかけて、学者や学校の先生等が何の前触れもなく鳥になってしまう、そして疾走した夫も鳥になってしまったりといった不可解で不条理なことが次々に起こる。ニュースになり、目撃証言も取り上げられる辺り、フィクメンタリーの様相を呈していて面白かった。
     しかし本題は寧ろ、そうした中で起きるあるメルヘンチックな純愛悲劇のお互い好き同士の少年と少女の物語だと感じた。
     この入れ子構造に仕掛けられた物語の仕組みは、童話集のようなものであっても寺山修司らしさを強く感じた。
     しかし、普段の寺山戯曲等はもっと複雑で分かりづらく、実験的なことが多いが、今回の話は、寺山にしては内容が理解しやすかった。
     最初、少年が急に鳥になったことを知った少女は嘆き悲しみ、自分も少年と同じように鳥になって鳥になった少年と仲睦まじくいられるように願うが、鳥になった少年は、また人間に戻って少女と一緒にいられるように願うというすれ違いにより、悲劇的な終わり方になっていき、メルヘンチックで牧歌的ながら、そのどうにもならない終わり方に、胸が痛んだ。

    寺山修司がラジオドラマとして書き下ろした「大礼服」では、少女の婚約者の刑事が、どこか存在が謎めいた透明人間の大礼服の男を血眼になって探し、少年探偵団も出てきたりと、寺山修司の大抵の劇作では、幻想怪奇、エログロナンセンスだが、あんまり笑いは多くなく、幻想性や叙情性が殊更に強調され、例えそれが近親相姦等の禁忌を扱っていても美しく描かれることが多いのだが、今回のラジオドラマでは非常に大衆的な感じで、笑いも多く、初めて寺山作品に触れる人であっても、抵抗感なく観れるのではないかと感じた。
     しかし、大礼服の男を巡って、街の秩序を保つ権力側でもある警察が慌てふためき、対策を思案する様が、何処か皮肉が効いている気がして、面白かった。

     また、場所が南青山MANDALAというライブハウスのMANDALAの系列の中でも、お洒落でとても高級感の漂う感じで、スタンディングではなく、一部ソファまで用意されたラグジュアリーな空間で、お酒を飲みつつ、その非日常感の中で、寺山修司の朗読劇という異質な組み合わせが、意外にも悪目立ちするというより溶け込んでいて、どんなラグジュアリーな空間でも寺山の作品を演ると、自然と寺山色に染まっていく感じが、寺山修司の凄さを感じた。

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