ゴールデン・エイジ 公演情報 劇団俳小「ゴールデン・エイジ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2024年7月、チケット買っていたのに中止。俳小はこれが何度もある。今回やっと観れた。十八番のオーストラリア演劇、先住民アボリジナルの物語だと勝手に思って観ていたら全く違う。これ何の話?訳が分からない衝撃。『ミッドサマー』を思い出した。何なのかさっぱり判らないがメチャクチャ面白い。(第二幕できちんと判る仕掛け)。無茶苦茶アングラ。翻訳の佐和田敬司氏がいろいろ仕掛けたのか?この言語を丸暗記して話す役者陣にRESPECT。美術もセンスあって見事。古代ギリシアのドーリア式の折れた柱。網目状の芝生シートに鬱蒼と生い茂るリーフラティス。手作り感のある鉄柵門。スピーディーな場面転換を可能とする軽量なアイディア美術。芝生シートをこう被せて使うとは。

    主演の遊佐明史氏はもう貫禄。
    MVPは小飯塚貴世江さん。凄い。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    オーストラリア大陸南東部すぐ南の離島、タスマニア。1901年にオーストラリア連邦タスマニア州となる。元々、英国の流刑植民地だったオーストラリア。1830年、そこで更なる罪を重ねた再犯者や重罪人の為、タスマニア南東の半島に流刑植民地ポート・アーサーを建設。地形を利用した脱出不可能の刑務所。そんな地でも脱獄に成功した者はいた。この物語の時代は1939年、第二次世界大戦にオーストラリアが参戦し、ナチス・ドイツに宣戦布告しようとする時。

    タスマニア州ホバートの名士である裕福な医師の息子で地質学者のピーター(手塚耕一郎氏)。メルボルンにて母親一人の貧しい家庭で育った橋梁工事設計者のフランシス(遊佐明史氏)。二人は親友で軍入隊の前に記念旅行へと出掛ける。タスマニア南西部の密林、1850年代に短期間だけ金鉱が掘られていた地域。偶然見付けた奇妙な死体。口の中に砂金が詰め込まれている。やって来た女(小飯塚貴世江〈こいいづかきよえ〉さん)は19世紀のかなり汚れた古いドレスを身にまとっている。逃げる女の後を追うフランシス。19世紀半ばからおよそ80年孤立して暮らして来た集団の末裔、6人との出逢い。言葉が通じない。不具者が多い。謎の儀式。このままでは一族が滅亡してしまうことから集団の長であるエア(片桐雅子さん)はこの地から離れる決断を下す。
    「ハウジクは終われり」
    効果的に繰り返される台詞。
    「放逐(追放)は終われり」だった。

    族長エア(片桐雅子さん)
    闘いを愛する老人メローン(大久保たかひろ氏)
    性器が奇形の為、性的不能、喋れないマック(佐京翔也氏)
    ベッシェブ(小飯塚貴世江さん)
    エンジェル(山崎稚葉さん)
    這いずり回る一番障害が重いステフ(根本浩平氏)

    医師であり文化人類学者でもあるウィリアム・アーチャー(永井誠氏)は彼等の言語を研究し彼等の歴史を推論する。ポート・アーサー脱獄に成功した者の中に先天的口蓋裂の男がいた。彼は自分の国を創ろうとした。囚人や旅芸人、鉱夫、棄民達のコミューンは近親婚を繰り返し、歪な文化を継承していく。性的不具者や舌の異常で喋れない者の誕生。口頭伝承による歴史の共有も子孫も望めなくなる。エアの判断で国に保護された彼等はニューノーフォークの精神病院内に併設された隔離所に収容される。

    冒頭とラストに上演される『タウリケのイピゲネイア』。紀元前413年、古代ギリシアのエウリピデス作。米倉紀之子(きしこ)さんは黒木瞳や北川綾巴っぽい美人。屋敷の庭園に作られたステージで寄付を募る慈善活動として演劇を上演している。
    山崎稚葉(わかば)さんは玉井詩織系の顔。
    片桐雅子さんは歌唱指導としてよく名前を見る。今回のミステリアスな役は高野美由紀さんっぽかった。
    手塚耕一郎氏は佐藤二朗に見えた。
    大久保たかひろ氏は怪優。人となりが垣間見えない。
    根本浩平氏はおぞましい役をやり切った。
    小飯塚貴世江さんは要求度の高い難役をよくぞこなした。
    俳小は良い役者抱えているのに公演が少ない。今回制作の西本さおりさんの舞台が観たい人も多い筈。

    元の作品を観てみたい。今作は翻訳の過程で日本語っぽいが意味が通じない言語に変換されている。(※オリジナルではビクトリア朝時代のコックニー訛りを変形させ最初は理解出来ないが突然意味が分かるようになる言語を狙って作ったらしい)。どこか中国圏っぽい所作。劇も京劇のような動き。戦いもレスリングというよりも柔術。日本人に伝わるようにかなりアレンジした筈。忠実に映画化したら相当面白いと思う。第二幕の終盤で、第一幕に演っていたものは『リア王』のハッピーエンド・ヴァージョンだったと分かる。それを知った上でもう一度観たいと思った。(※ネイハム・テイトが『リア王』をハッピーエンドに改作した『リア王一代記』のこと。当時この改作版の方が『リア王』とされていた)。

    文明社会で肉体も精神も病んでいく一族の滅亡。幸せに見えたのは外見(そとみ)だけで中身は空っぽの街。目に見えないものにこそ生きる歓びがあった。

    『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』というクリストファー・ランバート主演の映画がある。原作通りにターザンを実写化したシリアスなもの。彼が人間社会に馴染めず苦悩する姿が丁寧に描かれ、ラストは文明に別れを告げ独り密林に帰る姿。この名作を思い出した。

    伝わり辛いのはフランシス(遊佐明史氏)がベッシェブ(小飯塚貴世江さん)を真剣に愛すようになった過程と理由。そこを観客と共有させないことには片手落ち。貧しく惨めな暮らしから成り上がる為に勝負に勝つことに異常に執心。勝って勝って勝ってその先に大いなる幸福があると信じた。そんな男が無垢な彼女の魂でしか自分の奇形の自意識は救われないのだと自覚する過程。それがラストに繋がる。(※『タウリケのイピゲネイア』のイピゲネイアと弟オレステスの逃亡を二人と掛けている)。
    ※個人的にはラストは『道』で良かったと思う。ジェルソミーナを想って夜の浜辺で泣き崩れるザンパノ。

    佐和田敬司氏がパンフにこの物語の発想の起点は作者がある研究者に聞かされた話と書く。「第二次大戦直前にタスマニア南西部の荒野にて数世代文明と孤立していた集団が発見される。だが戦時下の情報統制に遭いその事実は隠蔽された」。時期はオーストラリアがナチス・ドイツに宣戦布告する直前。ダーウィンの「進化論」の影響から「社会進化論」が生まれ、「優生学(=優生思想)」を掲げたナチス・ドイツが欧州を席巻していた。劣性人種の繁殖の制限=ホロコーストに向かう彼等を批判する立場であったオーストラリア。だが発見された集団はまるで精神障害者のよう。文明と教育がないと人間は退化するのか。これを発表することは「優生学」の正しさを肯定しかねないと考え、精神病院に隔離して黙殺。この話の真偽は不明。

    現在ではインド領北センチネル島に暮らすセンチネル族が最後の未接触部族とされる。50〜200人いると推定されるが言語も歴史も未だに不明。

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    2026/08/07 23:44

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