舞台版『千年女優』(大阪凱旋公演は5/11) 公演情報 TAKE IT EASY!「舞台版『千年女優』(大阪凱旋公演は5/11)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「女優」は、千年を走り抜け、千年を生きる
    あのアニメ『千年女優』が見事に舞台化されていた。
    しかも本当に5人だけで演じきるのだ。

    アニメとほぼ同じ95分の上演時間で。

    舞台を観て、改めて今敏監督の凄さをも実感した。
    アニメのほうのファンも、舞台を観ながら映像が1カット1カット脳裏をよぎり、満足できる作品ではないだろうか、とも思った。

    ネタバレBOX

    映画の台詞は全部入っていたようだ。
    追加されていたのは、舞台では見せられない、映像的なシーン(姿形とか、何が起こっているとか)の説明と、「笑い」の部分。

    この「笑い」の部分に関しては、賛否が分かれるのではないだろうか。
    それほど大きくは笑えなかったということもあるし(もちろん笑ったところもあるのだが)、何もそこまで追加しなくても、とも思うのだ。
    もう、これは関西人の血のようなものなのかもしれない(笑)。関西人のサービス精神の現れかも。

    サービス精神と言えば、途中でキャストの設定が破綻し、観客に誰が誰を演じるかを指名させるという、 ナマの舞台であることを活かしたスリリングな仕掛けも加えられていた。その設定に従って配役が決まり、そのパートを演じていくのだ。つまり、その場シャッフルだ。

    5人の女優たちは、それぞれがもともといろいろな役を演じていて、主人公の千代子も当然5人が演じているのだから、シャッフルと言っても、単に役を変わるだけではく、次のシーンでは、その役をやった人が担当する別の役までも含めて演じなくてはならないので(5人しかいないのだから、役割は割り振りどおりに行われないと先に進まないので)、その困難さは相当のものであろう。

    5人の女優さんたちは、それぞれがとてもバランスが良く、コンビネーションもさすが。容姿の違いなどもうまく活かしていたと思う。
    しかし、一番感心したのは、緊張感があることと一生懸命であることだ。もちろん、これだけ細かく役割が設定され、同時に動作を行う場面も多いのだから、緊張するのはあたりまえとしても、舞台の数をこなすと顔を見せる、慣れからくる流す、というようなことは微塵も感じなかったのだ。
    それが、観客の胸にストレートに届き、この感動を生むのであろう。

    お芝居の醍醐味は、そう設定されれば、時間も場所も、年齢、性別、そして生物、無生物さえも自由自在なことである。
    そういう意味で、この作品はまさに舞台向きであったとも言える。
    その芝居のルールとテクニックとをすべて動員してこの舞台は組み上がっていた。

    それらをすべて取り込んで、舞台は一気に加速していく。アニメであった細かいカット割りもすべて再現されていたと思っていい。
    文字どおり、千代子が(アニメ同様に)舞台を走り抜けるのだ。

    もっとも、舞台の冒頭は、そうした「お芝居のルール」を観客にわからせるために、やや説明的すぎるきらいもあるのだが、これは、アニメからのファン(たぶんお芝居を観る経験の少ない方)のための配慮でもあるのだろう。ちょっとしたルール説明が済めば、あとはアニメの情報を持っている観客ならば、一気にその世界に飛び込むことができるからだ。

    しかし、この冒頭の説明的なシーンを入れたのは、そうした観客への配慮もあったと思うのだが、アニメでも感じた、ラストへ向けての凄まじい疾走感からくるカタルシスを演出するための助走となり、さらにスピード感を感じさせるためには必要なパートであったのではなかったかと思う。
    そういう意味まで含めて、実にうまくできていた脚本と演出であったと思う。

    そして、彼女たち「女優」は、千年を走り抜け、千年を生きるのだ。

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    2011/02/19 06:37

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