じべた 公演情報 椿組「じべた」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2026/05/26 (火) 19:00

     この地球は地続きであった。そして海ができ、川が出来、島国もうまれた。そしてそのじべたの境界をめぐり争いが起こった。・・・・今も続いている。谷川俊太郎・黒田征太郎の絵本「じべた」から触発された戯曲ということで、しかも、泥臭くて、人間臭い濃密な群像劇を得意とする椿組による公演ということで、観る前から、どんな化学反応が起こるのか、期待しかなかった。

     じべたの上では自分の土地を守るため、また土地を広げるための戦争が絶えず続いている。
     そこに住む人々。
     武器工場を営む家族。家族の三女は絵本作家になりたかった、しかし、家族からの反対をうけ、工場で働き始める。その工事では、様々な事情を抱えている人たちが働いてる。
     出征した夫の帰りを待つ、妻と子どもの二人だけの家族。
     戦争に疑問を持ち、協力者を求める戦争帰りの男。戦争から帰還した者。戦争を受け入れる者。この土地では、戦争に加担する事が仕事であるという話を軸にした、主に3つの家族と工場、個性豊かな工場勤務の人たちに焦点を当てた群像劇だった。

     劇中、この土地で生きることは、この土地での仕事を受け入れることと言うような台詞があり、そういった在り方に大山夜子は内心反発するが、仕事をしないわけにもいかないと、じぶんが勤める工場が殺傷能力の高い武器の製造をしていることを知りつつ、黙々と仕事をこなし、何かにつけて弟の大山大地が工場主任の大山朝子に食ってかかり、喧嘩して、自分は戦争に加担する武器工場に勤めるぐらいなら働かないと言い切る弟をどこか羨ましく感じていたり等、劇全体としては、第3次世界大戦でも始まったかのようなもしもの世界を舞台にしつつ、不穏さと暗さが付き纏う劇なのに、人間同士のぶつかり合い等、緻密に、きめ細かく、それぞれの人間ドラマに重きを置いていて、共感しやすかった。

     劇中、谷川俊太郎の絵本「じべた」に出てくる言葉が劇場の壁に投影されたりして、役者が独白のような形で絵本の言葉を言ったりして、絵本「じべた」へのオマージュもしっかりなされていて、良かった。

     劇中、工場勤務の男で、戦争帰りで、敵の銃弾が頭に命中して、奇跡的に助かったが、話すことが出来なくなった男が出てくるが、その代わりに実は相手の脳に直接語りかけるテレパシーのような能力があることが分かり、その能力を巡るちょっとした騒動がコミカルで大いに笑えた。

     劇中、部品を造る工場が、実は、戦争の為の武器製造をする工場になっていたことが分かったり、似たような工場が政府奨励のもと、次々に建てられていくといった在り方は、単なるディストピアと言って一蹴できるような状況ではなく、今の日本が防衛関連法等を次々に将来的に制定しようとしたりするなか、実際、殺傷能力のある武器を国外輸出を可能にする運用にいつの間にかなっていたりと、戦争への1歩を確実に踏み出し始めていると言ってもそう大袈裟ではないような今の日本社会を考えるに、この劇で描かれるような、普通の部品製造工場がいつの間にか殺傷能力の高い武器製造工場になって、幾つも似たような工場が建てられていくと言った在り方がナンセンスとは言い切れない、むしろ現実味をかなり帯びている状況に、す~と背筋が凍りついた。
     そして、どんな事があっても、政府の聞こえの良い言葉に、簡単に騙されないように、おかしいと思ったことが言える社会である為にも、政治家の言葉の真意を常に探り、常に新聞などに目を通し、無関心でいないように心がけようと強く感じた。(今までも、私は無関心ではなかったが)
     この劇のようにいつの間にか、戦争が始まり、しかも何が原因で始まった戦争なのかも、敵がどんな感じなのかも分からないまま、健康な男は徴兵され、他にこれといった産業がなく、街にあった工場が、武器製造工場にいつの間にか変わってから、他に仕事もないというので、大量にその工場で働く人がいて、街が潤い、結果的に国が戦争をする為の資金が潤うと言った在り方が1番怖いと思った。
     こう言った在り方で行くと、誰も責任を取らず、地元住民にだけ負担がのしかかる構図が、日本の原発増産の論理とも似通って見えて、常に疑う感覚を身に着けなければと感じた。
     
     戦争に関連する事故で奥さんを亡くした大山家の認知症のお父さん大山敏郎、砂塚家の戦争帰りの息子で、戦争は私たちが勝つかのように豪語するが、実際には、余りの惨状を目にして、トラウマを抱えているが、お母さんや工場の仲間を心配させまいと何事も無かったかのように空元気を振りまいたり、伊東家のお父さんが急にこっそり戻ってきて、戦争に行って、すぐ逃げ出して帰ってきた、しかも、実はかつて不倫相手がいたりとなかなか複雑な要素が織り込まれていたりと、実際に戦争が起こると、一般庶民は良いことなんて1つもないことをつぶさに教えてくれるエピソードに、悲劇しか生まない戦争に、絶対に戦争なんて始めてはいけないし、それがどんなにもっともらしい理由を付けようとも、戦争をして良いことにはならない、平和がいかに大切かを強く感じさせられた。

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    2026/07/17 17:39

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