ディアマイドクター 公演情報 演劇ユニット「暇つぶしチェルトン」「ディアマイドクター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    〈A班〉

    明治27年(1894年)3月、日本橋の元大工町の高水病院。医師の高水せい(梅本あき乃さん)のもとに運ばれてきた路上に倒れていた少女(小林音花さん)。遠い昔に病でこの世を去った妹ちかにどこか面影が似ている。「からたちの花が咲いたよ」と二人で歌った幼き日々。若き自分(後藤ひまわりさん)とちか(小林音花さん)の姿が瞼に蘇る。

    ざんばら先生、歌唱指導も兼ねている主演の梅本あき乃さん。皆文句なしの歌唱力でキャスティングに誠実さがある。
    個人的MVPは高水せいの若き日々を担ったもう一人の主演・後藤ひまわりさん。何か不思議な魅力がある。
    共に戦った学友である萩原ぎん子役の神田亜由子さん、吉沢クノ役の山川莉恩さんも美声。
    驚く程、演技レヴェルが高い大西達之介氏。少女の働かない父親役と衛生局長役を兼ねた。野太い声と台詞回しから舞台の空気感が変わる。衛生局長は外波山文明調。
    本多一生氏の学長もユーモラスで良かった。

    ネタバレBOX

    三河国(現・愛知県)、幼きせい(小林音花〈おとか〉さん)に高名な漢学者だった父(本多一生〈かずお〉氏)は学問の道を指し示す。「志しを持て」と。激動の時代、幕府は潰え明治維新が成る。父は早世し、没落した家は家督を継いだ兄(齋藤蓮氏)、母(行橋〈ゆくはし〉安美さん)、せい(後藤ひまわりさん)、妹のちか(小林音花さん)。寺子屋で読み書きを習う幼きちかに付き添うせい。「女に学問は不要」との兄の言葉に反し、学問に焦がれていた。教師である坂田伊織(蘭丸氏)はそんな彼女に好感を持ち二人は密かに恋に落ちる。伊織に許婚がいることを知り、身分の違いから身を引くせい。東京の吝嗇家の伯母(白川りらさん)の家に嫁に入り、夫(阿久津城〈しろ〉氏)との間に子を身籠る。故郷では妹が病に倒れ、里帰りも許されないせいも昏倒。夢の中でちかが逢いに来て、産まれた赤ん坊に「さき」と名を付けてくれる。長い眠りを経て目を覚ますと母が上京して看病してくれていた。妹が死んだこと、赤ん坊は死産だったことを知らされる。そのまま伯母に焚き付けられた夫に離縁され、家を出るせい。吉原の花魁・駒太夫(七海真帆さん)の下働きをしている時に出会った助産婦・津久井磯子(岩崎紗也加さん)に弟子入りを直訴。自分が目指すべき医学への道がうっすらと見える。

    第一幕は女『赤ひげ』の正統派物語。ちょっと直球すぎるとも思った。もう少し観せ方を捻った方が面白くなる題材。『赤ひげ』は三船敏郎に反感を持つ若き加山雄三が段々と考え方を変えていく過程と観客の心とが重なり教育劇として秀逸。高水せいの内面をそう易々とは明かさずに後半まで引っ張った方がいいかも。(飛び飛びに垣間見せる)。無力故に散々踏み躙られてきた明治の一人の女性が世界を変えていく物語。世界は変えられる。本当にそう信じられたなら。

    主人公、高水せいのモデルは高橋瑞子(戸籍名は高橋瑞〈みず〉)。明治21年(1888年)、36歳にして日本で三人目の公許女医(国に認められた女医)となる。
    明治18年(1885年)、34歳で初の公許女医となったのが荻野吟子。
    明治20年(1887年)、23歳で二人目の公許女医が生沢クノ。
    古来、無資格だった産婆から助産婦(現・助産師)への橋渡し的存在になったのが津久井磯。明治21年(1888年)、私立産婆学校を設立し人々に医学を啓蒙した。
    長谷川泰の創立した私立医学校・済生学舎は後の日本医科大学。高橋瑞子の入学を許可する英断。
    その苦学ぶりを順天堂医院の院長・佐藤進と妻の佐藤志津が支援。偶然、高橋瑞子の隣家に佐藤進の甥が住んでいた縁から。
    高橋瑞子は明治23年(1890年)、38歳の時に単身ドイツに渡航。何のつてもなく片言のドイツ語でベルリン大学への入学を望む。当時、女性の入学さえ許されていない状況。命懸けの彼女の覚悟に打たれた周囲の尽力により聴講生として受講が許された。

    第二幕は明治32年(1899年)のペスト襲来を上手く組み込んでいる。パニックを起こした群衆が暴徒化して患者をペスト菌ごと殺戮しようと殺気立つ。手の打ちようのない現実を前に絶望する高水せい。ふと「からたちの花が咲いたよ」のメロディが聴こえる。生きたくても生きられなかった妹のちかと産まれることの出来なかった娘のさき。「生きている私が挫けてる訳にはいかない」と奮い立つ。このシーンが一番良かった。

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    2026/07/02 15:55

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