ガラパゴス 公演情報 キルハトッテ「ガラパゴス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「イグアナ」はこれまで女性のさまざまな象徴として創作物に登場してきましたが、今回は、中絶手術をおこなったサチコ(吉沢菜央)の身体がイグアナになるところから始まります。ほかの生物に変身する設定や、どこかしらが過剰な登場人物たちにより、女性の仕事や出産や生活についての壁や葛藤が語られます。

    ネタバレBOX

    この社会で、女性はどう生きるか。どう働くのか、子どもを産むのか、そのタイミング、そもそも自分で選び取っていくのかさえ、人それぞれの人生と背景があります。それらは生まれ育った環境と経験によっても価値観が異なるものです。おそらく客席にいる人たちの考え方はバラバラで、だからこそサチコを中心にあれよあれよと進んでいく展開は抽象度が高く、人によって作品の解釈に大きな相違はなくとも、感想や意見などの受け取り方が異なるシーンが多いだろうと想像しました。

    題材やその描き方は深く鋭い一方で、もっと力強い方向づけがあってもいいかもしれないなと感じました。けれどもひとつの作品ではなく劇団公演だとして考えると、観客がともに悩める上演だと肯定的に感じ受け取りました。「作り手の疑問」からはじまり、戯曲を書くことで悩み、演劇を創ることで考えるなら、観客はただ作品の受け手ではなく、同じ時代をともに歩む、演劇を媒介にした同志たりえます。
    ただその場合は、身近な体感だけでなくもっと現代の社会的なことがらを組み込むと作品としての強度は増すかなと思いました(たとえば中絶薬の話題を出すなど)。

    また4名の女性たちがそれぞれ抱える苦しさが描かれる一方、男性はどこか現実離れしており、1役ずつに多くのものを背負わされています。女性が女性というだけでさらされる苦難はデフォルメされつつも切実でしたが、そこに該当しない存在として、奥山樹生さんと村田天翔さんが作品におけるバランスをよく背負ったなと思いました。

    それでも、軽やかに覚悟を感じる演劇でした。
    奇抜な展開を受け入れさせる筆力・俳優の佇まいはともに、安定した場をつくれる劇団としてのさらなるポテンシャルを感じました。全体を通してコミカルなまま、疾走感を持ってラストシーンへと向かっていきます。最後の台詞は、夏の日に人々が騒ぎ去ったあとの荒涼としたグラウンドに水が落とされたような、渇きに染み込む心地よさでした。たとえその水がすぐに乾いたとしても、一瞬でも潤った安堵は生きる力になります。この次、さらにその先を、期待をもって追いたくなる劇団です。

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    2026/07/02 13:44

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