ネザー(Su)ポット 公演情報 劇団しようよ「ネザー(Su)ポット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    まず言及したいのは舞台美術の再現力の高さでした。

    ネタバレBOX

    劇場に入るやいなや、そこには緻密に設計された電車の車内空間が広がっていて、思わず歓声が漏れてしまいました。その車内を通らねば客席に辿り着けない造りになっていて、さらにキャスト陣は役としてすでに電車の座席に座っていたりもするため、ドキドキしながら車内を通り抜けました。「物語の世界を経由して客席に着く」という流れが、作品への没入感を手伝う導入として大きな効果を発揮していました。

    内容としては、その車内空間で起きる出来事をリフレインして描いたワンシチュエーションもの。ディズニーランドに向かう二人組、泥酔している若い女性、ベビーカーを伴う母親、あまりうまくいっていなさそうなカップルなど、それぞれ属性や背景が異なる人物が乗り合わせていて、リフレインの度に焦点が当てられる乗客や出来事が変わることによって、乗客たちの心の内や社会の暗部が徐々に露わになってくる様子が興味深かったです。

    基本的には日常会話が語られているのですが、時折挟まれる独白によって人物造形が具になったり、また角度を変えて同じ場面を繰り返し描くことで、1ターン前には気づかなかった表情や動きを発見できる面白みがありました。なかでも、終始肩身の狭そうな表情をしている母親の、疲弊し切った心が発露するシーンでは、身に覚えのある痛みに胸が詰まる思いがしました。育児中に抱えるストレスや社会からの孤立。「何か手伝いましょうか?」と思わず声をかけたくなるけれど、「乗客」でなく「観客」である私にはそれが許されない。その状況が、奇しくも『では、「乗客」の時は果たしてそれができるのか』という問いとして迫るような思いにもなり、他者に手を伸ばすことの必要と難しさを逡巡しました。
    一方で、全ての乗客にスポットが当たるわけではなく、ポイントに絞られているため、テーマが偏り、その一方でメッセージは散漫としてしまっているような感触も受けました。多くが語られないことによって想像力を駆り立てられた節もあるのですが、もう少し一人ひとりを相対的ではなく、絶対的な存在として見てみたかったという心残りがありました。しかしながら、舞台美術こそ素晴らしい虚構であるものの、ここで描かれていたことはほぼ私たちが生きる上で経験する日常でもありました。「帰りの電車での風景が行きと比べて違って見える」という点が、本作が導いた最も大きな体験だったような気がしています。

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    2026/06/26 15:26

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