京王 公演情報 D地区「京王」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    かつて投資情報商材マルチに手を染めていた、リリーとブラックのカップルの会話劇から浮かび上がる「宗教二世問題」。

    ネタバレBOX

    5年の同棲生活の間に二人に起きた変化が、越してきた日と家を出る日の会話のみで生々しく立ち上げられていました。単なる「関係の経年劣化」ではなく「5年かけても分かり合えなかった」という絶望や痛みが滲んでいて、私はそのことに強く惹かれました。
    二人は、窓からスカイツリーがギリギリ見える(京王沿線の)マンションに暮らしており、越してきた日に「スカイツリーが見える」とはしゃいだリリーが、去る時に「スカイツリーからこの家は見えなかった」といった旨のセリフを言う。それは互いの、もっと言うならば他者との分かり合えなさや見えている景色の違いをざらざらと伝える一言で、劇全体に大きな効果をもたらしていました。同時に、ややセリフ(≒俳優)に託され過ぎている面もあり、照明などをもう少し活用して心象風景をより効果的に立ち上げることもできたかも、という感触も残りました。おそらくあのシーンは文字で読んだ時にも相応の体感に導かれると思うので、上演でその体感をどう増幅できるか、シーンの強度を上げられるか、その可能性を見てみたかったのだと思います。

    本作にはリリーとブラックの他に、ブラックの後輩・へドウィグが出てきます。
    外からの来訪者によって、内向きな会話や物語にうねりが生じる、というのはよくある展開ですが、本作はその手法は取らず、ブラック不在の中でリリーとヘドウィグは真新しく会話を重ねます。その会話にブラックとリリーの関係やリリーが抱える宗教二世の問題がまぶされていく様が興味深かったです。3人を描くことよりも、2人を2パターン描くことに注力することで、それぞれの人物造形を具に、露わにしていく。それは自己と他者、その分かり合えなさ、そして分かり合いたさを描いた本作において非常に意味のあることだと感じました。

    シリアスな題材ながら絶妙な間合いやリアクションで観客を笑わせたり、俳優も三者三様に見事でした(CoRich舞台芸術まつり!の審査においても、演技賞の議論では出演者3名の名前が挙げられました)。
    リリーとブラックがパチパチわたあめを口にして、パチパチ音の余韻を残しながら会話をするシーンは極めて斬新。演劇を観続けてきて良かった。そう思うのは、こうした想像しなかった演出に立ち会った時でもあるのかもしれません。

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    2026/06/22 02:46

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