ネザー(Su)ポット 公演情報 劇団しようよ「ネザー(Su)ポット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「電車内を観察する演劇」

     劇場内に入ると客席と平行に組まれた電車内を模した舞台美術にまず驚く。そこには出演者が目を閉じたり、スマートフォンを見たりと思い思いの格好で席についている。観客である己が作品に参加しているかのような感覚になる本作は、いわば「観察する演劇」であった。

    ネタバレBOX

     最高気温が30度以上に達しようとする日の始発の地下鉄に、ぼそぼそと乗客が集いはじめる。ホームのベンチでサンドイッチを頬張るなおこ(信國ひろみ)は、友人の友人であるみほりん(福原瑞穂)に誘われ車内に座り、彼女のディズニーうんちくを戸惑いながら聞いている。金髪の青年リュウト(杉田一起)は、酩酊している朝帰りのニナ(花純)にあからさまに不機嫌そうな態度を示す。ベビーカーを押して入ってきたさなえ(池田きくの)の顔は暗く、我が子の泣き声が周囲に迷惑でないかとオドオドしている。自宅に帰る愛梨(小林瑠衣)と見送りに来たケイタ(沼田亮平)のカップルには、やや不穏な空気が流れている。車内で朝マックを食べ始め白眼視された高木(公社流体力学)は、ニナが生真面目そうな羽田(穂積宏和)の眼の前で戻す様子を見てしまい、思わずホームに走りつられて戻す。そこで発車ベルが鳴ると奥にいた木村(田中サキロウ)が手に持ったライトを上に挙げる。するとそこで時間が止まり、出演者たちは一度舞台奥へ消えていく。

     以降同じ場面が繰り返し上演されるのだが、一回目とはややニュアンスが異なる。二巡目では、一巡目で愛梨が話題に挙げていたもり子(山本祐太)という人物に焦点があたる。もり子は電車の一両目に頻繁に現れる人物で、電車に「けんとくん」と親しく話しかける。もり子は、一巡目の終了時に車内に放置されたままだったベビーカーの子どもをまるで我が子であるかのようにあやすのだった。そして発車ベルの音とともに木村の合図で時間が止まり三巡目、ここではこの子の母親であるさなえの心の内が吐露される。この繰り返しを木村と、一巡目から車内にいる人物たちを終始不安そうに見つめ、ときに撮影している田中さん(筒井詩菜)が共に過ごしている。最後まで観続けるとこの二人の正体が観客に明かされることになる。

     20分弱の同じ場面を繰り返しながらそこで展開される人間模様をつぶさに見せる本先は、刺激的な試みに満ちていて興味が尽きない。公共空間で居合わせた他人の来し方に思いを馳せる、という誰しも口には出さないが日常的にやってしまう行為を舞台上に出現させた光景を私は初めて観た。時間の都合か焦点を当てる人物が限られてしまうのは残念だったが、もり子やさなえ以外の人物の内的独白も聞いてみたかった。上演台本に記された各登場人物の説明をほとんど実際の舞台にあげない姿勢は奥ゆかしいが、内容を刈り込み登場人物を絞って盛り込んでもよかったのでは、という気にもなった。

     圧巻の舞台美術はもとより控えめな照明変化や、タイムループの合間に挟まるユーロビートなどメリハリが効いたスタッフワークが、俳優の芝居を浮き立たせていた。

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    2026/06/01 15:47

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