糞尿譚 公演情報 劇団俳小「糞尿譚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    役者の演技力に感動する
    糞尿譚」は、火野葦平作の短編小説だから、案外日数を要しないで読めた。
    一般家庭の便所から糞尿を汲み取って買い上げ、それを農家に肥料として売ってわずかな口銭を得る…そんな商売が成り立っていた頃のお話。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    主人公の彦太郎は糞尿汲み取り業の経営者。家運が傾いた豪農の息子である彼はトラックを購入するなどして近代的な事業としての肥え汲み業を始めるも、事業は思うようにいかず、山林田畑は抵当に入り、同業者との諍いや町内の政治的な対立などに頭を悩ますことが多い。

    対立部落の人間から「ほれ見い、糞男が行くぞ」などと揶揄されもするが、「事業を守るため」いかなる卑屈も甘受し、町の顔役からの資金的な援助を取り付けてどうにか商売を続けていた。

    ここで登場する少年はそんな彦太郎がある日見た夢の描写で、彼の鬱屈した心情や酒や女に逃げる弱い心をもう一人の自分・少年によって励まされ癒されるという表現だったように思う。

    さて、彦太郎が我慢に我慢を重ねていたのは、近い将来この事業が市営となり、その暁には相当の額で買収されるであろう、という目論見があるからだった。そして遂に市営化が決定するのだが・・買収額の大半を途中で出資した顔役とその婿に持っていかれることになってしまう。字が読めなかったばっかりに・・。

    失意の彦太郎が肥料として売り物にならない糞尿を捨てようと、市が指定した捨場にトラックでやってくると、以前から因縁のあった部落の男達がおり、罵りながら土砂をぶっかけるなど激しく抵抗するも、遂にぶちキレた彦太郎は糞壷から柄杓で糞尿をすくい絶叫しながら振り撒き始める!逃げ惑う男達!!

    柄杓から飛び出す糞尿は敵を追い払うとともに、彦太郎の頭上からも雨のごとく散乱したのだった。自分の身体を塗りながら、ものともせず、彦太郎は次第に湧きあがって来る勝利の気魄にうたれ、憑かれたるもののごとく、糞尿に濡れた唇を動かして絶叫しだした。

    「貴様たち、貴様たち、負けはしないぞ、もう負けはしないぞ、誰でも彼でも恐ろしいことはないぞ、俺は今までどうしてあんなに弱虫で卑屈だったのか、誰でも来い、誰でも来い。」彦太郎は初めて知った自分の力に対する信頼のため、次第に胸のふくれ上がって来るのを感じた。

    ここに至って観客は、ぶち撒かれる糞尿とともにある種のカタルシスを感じるわけだけれど、佐原山の松林の陰に没しはじめた太陽が、赤い光をま横からさしかけ、つっ立っている彦太郎の姿は、燦然と光りかがやいていた。

    この最後の演出など、糞尿柄杓を持った彦太郎を何故か勇士のごとく感じて、その鮮やかな描写は大傑作でした。

    全てのキャストらの演技力は序盤から魅せつけられて彦太郎を演じた勝山はまさに絶妙な演技力だった。そして、おせい役の吉田直子は和服の良く似合う絶世の美女でした。あんな美人、この世に存在するんだね。生まれて初めてあんな美人に会いました。美しすぎて芳醇!勝山は臭い漂うほどの演技力!糞尿だけに!笑

    素晴らしいです。

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    2011/01/29 12:33

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