糞尿譚 公演情報 劇団俳小「糞尿譚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    既得権益の存在
    こういう社会派の文学作品に真っ向から挑めるのも新劇系劇団の長所だと思うし、舞台化が難しい作品だけにその意欲を高く買います。
    いつの世も既得権益を守ろうとする一派の抵抗は根強いものだなぁと痛感させられた芝居。
    同じ葦平の原作でも任侠映画になった「花と竜」のようなスカッとしたところのある作品ではないので、単調さは否めない。終始、主人公彦太郎のキャラクターには違和感がつきまとった。
    詳しくはネタばれにて。

    ネタバレBOX

    彦太郎役の勝山了介は力量もあるベテランだとは思うけれど、登場したときは本当に少し知能が低い人物かと思うほど無学無知を強調した演技だったのだが、劇が進むと、やけに道理を理解したようなセリフがあったり、女にちょっかいを出したり、この人物がますますわからなくなってしまった。
    「寿限無」の長い名前をずっと口ずさむような愚直な好人物なら、その愚直さを貫けばよいのだが。
    周五郎の「どですかでん」の主人公のキャラクターが映画化に当たって少し脚色されたように観客が役に感情移入できるように脚色してもよかったのではないかと思う。
    原作との兼ね合いもあるのだろうけど、こういう作品の場合、思い切った脚色も必要かと思うのだが。
    冒頭の夢の場面が終わると、彦太郎が孤軍奮闘するエピソードを淡々と続けるだけなので、同じような場面が繰り返されて飽きてくる。
    これで休憩込み2時間半は少々ツライ。
    登場人物が多い割に、主人公とガップリ4つに組む役がひとつもなく、ただのエピソードを演じている印象なのがとても残念だ。
    沢田(手塚耕一)や赤瀬(河原崎次郎)、赤瀬の娘婿(大川原直太)の役も本筋とはあまり関係ない描き方でぜんぜん物語に生きてこない。
    小説ではないので、サラッと触れるだけでは面白みがないのだ。
    主人公が皆田老人(神山寛)や友田(斎藤真)からさんざん非道な嫌がらせを受け続ける場面はマキノ雅弘監督の「昭和残侠伝」などに代表される東映仁侠映画と同じパターンだが、東映映画なら、高倉健や鶴田浩二が出てきて「もう我慢ならん」と悪を一掃してくれるからスッキリするが、この芝居はそういうわけにはいかない。
    だから、彦太郎が「俺はなんでいままであんなに卑屈になってたのか。もう負けねえぞ」と見得を切ったところで、最後にそう言われてもねぇという気持ちになる。既得権益とどう闘うか、これからが彦太郎の正念場、というところで芝居が終わるから、消化不良で楽観的にはなれない。
    赤瀬の河原崎次郎の滑舌の悪さにはビックリ。俳優座の若手時代、映像でも活躍し、河原崎三兄弟のうちでも渋くて人気があったのだが、久々に観て老いを感じた。
    女優陣は総じて好演し、赤瀬の愛人役、吉田直子(劇団昴)、芸者役の大多和芳恵が特に印象に残った。
    彦太郎の河童の幻影(槙乃萌美=劇団昴)も唯一ホッとする存在なので、狂言回しに使って事の顛末を語らせるとか、脚本の中でもう少し面白く使えたように思う。

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    2011/01/28 15:03

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