わが町 公演情報 新国立劇場「わが町」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    人生を愛する
    天気のいい午後のまどろみのような舞台。
    シンプルな舞台装置。
    ミクロからマクロへのつながりを自然に感じる。

    ネタバレBOX

    架空の町を描いた3幕構成の舞台。
    1幕は「日常」だが、残りの2幕(「恋愛・結婚」「死」)もすべて「日常」である。
    「人の営み」のすべては日常であり、自然の中にある。
    そして、第3幕がすべてを物語る。

    「生」と「死」は地続きで、と言うよりも、境がないようにも思える。
    その根底には、輪廻転生の思想のようなアジア的なものがある印象さえ受ける。
    繰り返し行われる日常と、「生」と「死」の繰り返し。

    日常が演じられて、しんしんと雪が降り積もるように観客の心の中に物語を作り出す。
    あくまでも「演じている」ということが、キーである。舞台監督が、架空の町の物語を舞台上の役者たちに演じさせているからだ。
    この、舞台監督が全編顔を出し、ストーリーを語るという構造は、いわば、「役者=人間」「舞台監督=神」のようであり、宗教的な色合いを感じる。
    「人の日常」の視点も神の視点だし。
    「運命には逆らえないのが人間だ」という見方は皮肉すぎるか。

    とてもシンプルな舞台装置で、効果音も若い役者さんたちが、自らの口で行う。
    肉体が鍵盤を叩くことで音がするピアノの調べも、シンプルなのだが、深い味わいをもたらす。
    つまり、「人」がそこにいることがすべてである。そこにあるのは、「人」の物語だ。

    舞台監督役の小堺一機さんは、とても流暢。もちろんそれは悪くないのだが、なんとなく手際のいい司会者にしか見えなくなってきてしまった。何というか、舞台の上の人間たちへの「思い入れ」のようものが、今ひとつ感じられなかったような気がしてしまうのだ。

    先日観た葛河思潮の『浮標(ブイ)』とほぼ同じ時期に書かれた戯曲であり、「生」「死」がキーワードになっているところに共通点があるのだが、こちらのほうにアジア的な印象を受けたのは不思議だ。
    とは言え、観る順番が逆だったら(こちらが先だったら)、こちらはもっと楽しめたのかもしれない。

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    2011/01/21 16:32

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