愉快犯 公演情報 柿喰う客「愉快犯」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    劇団員5人だけで絵になる熱い舞台
     3回のワークインプログレスを経ての本公演です。美術、音響、照明、衣装などのスタッフワーク、そして劇場という空間を得て鮮やかに立ち上がった『愉快犯』は、独特の熱と華のある舞台でした。演劇は総合芸術で、演出家の仕事というのは想像しつくせないほど多岐にわたるものだと実感できます。

     ハッピー&ラッキー続きの家族に起こったアンハッピーな事件を機に、いつもと違う波乱万丈な年末年始をすごすことになった琴吹家の人々。謎が謎を呼び少しずつ事件の真相に近づいていく展開や、それに合わせた照明、音響効果も手堅く、結成5年というまだ若い劇団が東京芸術劇場小ホール2で上演する作品としては、非常に完成度が高かったと思います。

     急勾配のステージで劇団員5人がマシンガンのようにセリフを語り、走り、飛びまわります。カラフルな抽象美術が素晴らしかったですし、瞬発力のある役者さんの姿とあいまって、ハっと魅了される場面も多々ありました。
     ただ、セリフや動きに周到にしたためられた、無数の笑える要素が生かされていないのがとても残念。むしろ「観客が息をついてフっと顔をほころばせる間(ま)なんて、作るもんか!」というやんちゃな主張とも受け取れました。

     東京を拠点にしていますが、海外および日本各地へと飛び出し、猛スピードで実績を積み上げています。今後も目が離せないですね。
     ※初日に鑑賞し、個人的にどうしても許容できないミス(?)があったので、★は1つ減らしました。

    ネタバレBOX

     役者さんはワークインプログレスから様変わり。色気が増していました。特に母親役の七味まゆ味さんは妖艶。ワークインプログレスではなかった、コロさんの突然の「キャラ変更」も面白かったです。
     笑いたいのに笑えないことが続きました。長男役の村上誠基さんが妙な間(ま)を開けるところは可愛らしくもあり、ほほえましかったです。

     クリスマスに謎の死を遂げた長女(深谷由梨香/祖母と2役、いずれ3役)は「父親(玉置玲央)に叱って欲しかったのに叱ってもらえなくて、ガッカリしてポックリ死」していました。謎に向かって盛り上げた割には「そのオチかよ!(笑)」とツッコミたくなるような結末です。出演者も少々面食らってあきれたような演技をするのがいいですね。下手に一列に並んで居心地悪そうにしてるところなどでは、役者さんの演技の幅を感じられました。まあでもラストの物足りなさは否めないですが。

     2011年新春公演ということで、お芝居のはじめと終わりに劇団からの新年のご挨拶がありました。作品自体に組み込まれているのが独特です。最後の挨拶で「初日よりこれまで」というセリフがあり(セリフは正確ではないかも)、客席に笑いが起こりました。「今日が初日なのに!」というツッコミですね。身体能力を駆使して台本どおりに緻密に動き・語りをこなすのは、いつもの柿喰う客の作風で、それは見事なものです。でも演劇のライブ性を壊してしまったのは、私にとっては致命的でした。

     押しに押しを重ねて圧倒するやり方は、技術があるからできることですし、それでも追いかけたくなるのは脚本・演出および役者さんに魅力があるからだと思います。でも観客との対等なコミュニケーションをもっと利用できるように、成熟していってもいいのではないかと思いました。

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    2011/01/19 11:57

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