満足度★★★
劇団員5人だけで絵になる熱い舞台
3回のワークインプログレスを経ての本公演です。美術、音響、照明、衣装などのスタッフワーク、そして劇場という空間を得て鮮やかに立ち上がった『愉快犯』は、独特の熱と華のある舞台でした。演劇は総合芸術で、演出家の仕事というのは想像しつくせないほど多岐にわたるものだと実感できます。
ハッピー&ラッキー続きの家族に起こったアンハッピーな事件を機に、いつもと違う波乱万丈な年末年始をすごすことになった琴吹家の人々。謎が謎を呼び少しずつ事件の真相に近づいていく展開や、それに合わせた照明、音響効果も手堅く、結成5年というまだ若い劇団が東京芸術劇場小ホール2で上演する作品としては、非常に完成度が高かったと思います。
急勾配のステージで劇団員5人がマシンガンのようにセリフを語り、走り、飛びまわります。カラフルな抽象美術が素晴らしかったですし、瞬発力のある役者さんの姿とあいまって、ハっと魅了される場面も多々ありました。
ただ、セリフや動きに周到にしたためられた、無数の笑える要素が生かされていないのがとても残念。むしろ「観客が息をついてフっと顔をほころばせる間(ま)なんて、作るもんか!」というやんちゃな主張とも受け取れました。
東京を拠点にしていますが、海外および日本各地へと飛び出し、猛スピードで実績を積み上げています。今後も目が離せないですね。
※初日に鑑賞し、個人的にどうしても許容できないミス(?)があったので、★は1つ減らしました。