満足度★★★★
各人物の心情が痛いように伝わる
路上生活者たちが暮らしている廃劇場に男女の刑事が現れ、路上生活者・松本が撲殺された件について事情聴取を始め…な物語。
前半は聴取の様子とその内容の再現を見せるサスペンス風に進行するも、それが一区切りついたところで元・劇作家という設定の山本が観客に「以上は松本さんが亡くなってからの出来事ですが、これから亡くなる前をお見せいたします」と語りかけ、さらに「仲間の路上生活者に演技をさせている」的なことも告げて劇中劇であると明かす…。
ここからはむしろコミカルになるのだが、それだけにその後の松本の絶望がより強く心に刻まれるシカケ。うわわ、何なのこの急ハンドル。
それが芝居であり、さらに劇中劇であるとわかっていても、終盤の各人物(松本以外も含む)の心情が痛いように伝わり緊張感が最高に達したところで幕となるのはスゴい。
また、「始めます」「続けます」と宣言して各シーンを始めることによってメリハリがつくのは面白くかつ有効だし、開演定時の10分くらい前から徐々に役者がステージに上がってイントロ的な演技を始めていて、最初の「始めます」で客電が落とされるのでよりそれが際立つ、みたいな。
客電と言えば終盤で山本の指示で客電を上げるし…。
そんなこんなで先日の『THE LIFEMAKER』のように、観客もまた劇中の観客役に見立てられているのではないか?な気分にさせられるのもメタフィクション好きとしてはタマラン!(笑)