春に思い出す、夏の君はもう遠く 公演情報 劇団皇帝ケチャップ「春に思い出す、夏の君はもう遠く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    高校時代と それから12年後を交差して描いた歪な友情物語。いや友情と言えるか疑問であるが、共通の知り合いである男を巡ってマウントを取り合う。そのアプローチを現代的な問題と絡めて描き考えさせる。説明にある「2人は同じ芸能事務所『レインツリー』に所属し、コンビのように売り出されていた」という設定とその後が肝。少しネタバレするが、芸能界 しかも高校生のゴシップは…そんな えげつなさを垣間見せる。

    スキャンダルを作り上げる、そういう状況を巧く捏造し相手を追い落とす。上っ面だけの薄っぺらい言葉の裏に、ドロドロとした陰湿な思いが込められている。しかし物語は女子高生という姦しさを前面に押し出すことで 和んだ雰囲気を漂わす。それがテンポよくといった印象になっている。場転によって時代を往還させ、高校生(18歳)と12年後の30歳前後の大人の女性を1役2人で巧みに紡いでいく。
    (上演時間1時間55分 休憩なし)【夏】 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手に横長テーブルと背凭れが高い椅子が数脚、下手は学校のスチール机と椅子が2セット。シンプルな装置だが、上手は12年後の編集室、下手は教室内で舞台変換なしで物語が展開できる。この切り替えのスムーズさが、観客の集中力を逸らせない。勿論、役者陣は時代に合った服装…セーラー服とスーツまたはカジュアルといった衣裳によって時代的な混乱はない。

    物語は、同じ高校に通う由香里と美佳子は芸能事務所「レインツリー」に所属しコンビのように売り出されていた。才能や考え方さらには性格的な違いから、芸能界でやっていくスタンスが異なる。互いに相手を見下しマウントを取ろうとする。そんな2人が同じ男(カメラマン)を好きになり、ここでも相手を出し抜こうとする。由香里がカメラマンと或る場所で一緒のところを美佳子が写真に撮りSNSで流出。芸能スキャンダルとして、事務所は窮地へ。勿論 由香里の仕事は無くなり謹慎。でたらめ や誤解であっても 一度スキャンダルにまみれたら、そんな今風潮を描く。

    恋愛や性欲にまつわるスキャンダルやハラスメントは、悪意があろうがなかろうがSNSやメディアに乗ってしまえば、「正義」を告発するエンターテイメント(興味本位)に消費されてしまう。さらにセカンドハラスメントなどは倫理感の埒外にある。その意味で相手の顔が見えない怖さ、世間という得体の知れない不気味さが浮き彫りになる。物語の設定を芸能界や高校生という年代にしている巧さ、それを12年後という、忘れたか否かといった微妙な時代間隔にしたところが妙。

    2人から想われた男は 美佳子と結婚したが、カメラマンとしては再起できず妻に養われているよう(美佳子の償いか)。女性2人は辛苦に耐え今の地位と暮らしがある。由香里は高校時のスキャンダルがもとで清純派としては売れず端役でも何でも引き受けた。その経験を小説にして脚光を浴びるという強かさ。一方、美佳子は大学を卒業して編集者へ、今では編集長という肩書。2人にとって高校3年時に好きになった君は、もう遠い過去(干支が一回り)の人になってしまったかのよう。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2026/04/18 16:40

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