うみおと 公演情報 アップスシアター「うみおと」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     メリハリの効いた脚本で、演技、演出もグー。お勧め!

    ネタバレBOX

     板上やや特異な舞台美術、多角的な台の上にこちらもペンタかヘクサの上物が載り、この上物は最下段の多角形の上部に載った人間が押して回転させることができる。中段の可動部分上部には4本の柱が建ち各柱の天辺から足元迄それぞれ1枚づつ布が取り付けられており、ある種の密閉空間にもなる。(照明の加減で海中になるなど)場面によって表される物は異なる。最下段の台は不動だが上手に箱馬が接するように置かれ、下手には階段等も設えられている。ホリゾントには矢張りブルーを基調とし濃淡を染め分けた布がホリゾント一杯に広がっている。
     更に下手側壁に接する観客席側には小さな平台が側壁手前に立て掛けるように置かれている。何れの造作にも陽光によって変化する海面の色や深度により変化する海水の色を暗示するかのようなグラデーションが施されているのは、今作で大切な役割を果たす鯨が海生の知的哺乳類であることや我らヒトに進化するに至った最初の生命が海で生まれたこと等の意味が込められていよう。尺は休憩無しの約2時間。
     脚本はメリハリの利いた極めてヴィヴィッドな創り。実際に在った事象を基に創作された作品だという。役者陣の演技も良い。而も主役・タモツを演じる役者が、タッパも在りマスクもグーというだけでなく存在感もある。良い役者だ。初の主演作ということだが今後を期待したい。また、タモツの実兄でAIの天才的技術者3つ年上のミナトはホメ―ロス以前最大のギリシャ詩人・オルペウスの如く動物の対話を信じ、IT技術を駆使してデータを集積、解析した後ヒトと自然との交感や対話を通して知の領域を変化させる希望を叶えようとしていた。このミナトの感性は当に天才詩人の感性と一致し夢見がち乍ら極めて本質的で持続可能な地球環境を実現する為の夢であった。ミナトの思考は、食物連鎖最上位のヒトという生き物の最上位生物としての責任を果たすものでもある。だが、弟タモツは神経の細い遠慮がちな兄とは正反対のリアリスト。そうならざるを得なかったのは天才に対する非天才の弟の本能的な対抗意識が深層の複合意識に影響されていたからだ。つまり現実生活を堅牢なものとする為にその有能性を活かすタイプであった。この兄弟の角逐が今作のメインストリームを為す。現実には兄弟2人が共同経営者として“キュンマッチ”という名のSNS会社を立ち上げた訳だが、会員が50万を超えた頃、癌で入院していた父の容態が更に悪化し失踪したミナトの死亡届を出したいと言い出した。悪い時には悪いことが重なる。ネット上でキュンマッチの悪評が流れると瞬く間にメディアの報道が追い掛け会員の離脱、社員の辞職が相次いで社は崩壊した。これが、前半で描かれるタモツが清掃会社でバイトをやることになったそもそもの原因である。そして、7年前失踪した兄に横領の疑いが掛けられていた。その内実や真実に迫るタモツと経理リンの調査から横領された金の用途と実現された結果、金の流れ等が描かれる。サブストリームではミナトとタモツの妹で看護婦のユカリと恋人で商社マンのタカシとの笑いを誘う交流譚、清掃会社のバイトカップルマコトとメグのお目出度等や、清掃会社を継がないか? とタモツに声掛けをする社長日暮の人間性等が描かれる。
     大団円が如何様に紡がれるかは、観てのお愉しみだ。


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    2026/03/26 15:40

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