第46回関東高等学校演劇研究大会 公演情報 関東高等学校演劇協議会「第46回関東高等学校演劇研究大会」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    東京都立六本木高等学校「六本木少女地獄」
    800人の会場を騒然とさせた芝居。とにかく素晴らしいの一言。ここ数年、こんな破壊力のある芝居を観たことがあっただろうか・・。終焉後、大人も学生も、しばし、我を忘れてシーーン・・となった。そして少したってからザワツキ、そうして口々に「凄いね」と絶賛していた。高校生の殆どはこんな演技をした彼らに衝撃を受けたようだった。そうしてワタクシも。姉を演じた若狭明美の、観客丸ごとぶち殺してやる的な演技に全身の毛という毛が逆立ったように感じた。
    脚本は原くくる(生徒創作)だ。これは本としてもヒットするだろうし、映画でもイケル。そんな六本木少女地獄。


    以下はネタばれBOXにて。。


    ネタバレBOX

    シーンは行方不明になった両親に置き去りにされた姉とひきこもりの弟の描写から。姉は弟を苛めぬく。姉は居なくなった父の真実を弟には告げず、「父さんはボクロケットミントンの有名な選手だった。」と嘘をつく。「まったく情けない。お前も強くなって父さんのようにおなり。」と。

    やがて弟はその気になって父の跡を継ぎボクロケットミントンの選手になるが、このボクロケットミントンの説明がハチャメチャで面白い。その後のコミカルでバカバカしくてハイテンションな情景はアニメを見てるようで、かなり笑った。もしかしたらこのままコメディとして確立させるのか?なんて考えながら観ていたら、後半からのうねりのスピードは素早かった。

    過去の描写から。
    姉は、父親から近親相姦される。この時の姉が空を突き刺すような絶叫は観ていた観客を凍りつかせるような演技力だった。壮絶としか言いようのない絶叫は孤独と絶望とこの世の終わりを告げられた時に発する恐竜のような声だった。何もかもが滅んで虚ろになっていくさま。その断末魔のどこにも届かない叫び。ただ苦しみと怒りと悲しみから発せられる切り裂くような叫び。渾身の力を込め、声の限りに叫んだ姉はカラッポだった。静寂な空気を揺るがすように、その声は会場に響き渡ってストンと落ちた。

    そんなことをした父は行方不明になって、その幻影を引きずることになった姉。街でうろつくとオヤジに5万でどうだ?と声をかけられる。5万じゃ安いよ、オッサン!と返事する。なぜ女に生まれちゃったんだろう。ああ、嫌だ嫌だ女なんて・・と、女であることの卑屈さも表現しながら、しかし、姉はその叫びの後に全てを許すという。父の行為も全てを。そうして私たち兄弟が世界を征服してやる、とのたまう。それは兄弟の希望だ。

    少女が飼っていた鳥かごの中の鳥は卵を産むが孵らない。なぜって卵を替えていたから。



    個人的な意見だが優勝に値する作品だと思う。現代の少女が抱えた問題作だとも思う。終焉後、ワタクシはうるうると涙が溢れ、しばし席を立てなかったのだった。



    (六本木高校はチャレンジスクールです。定時制・総合学科・三部制・単位制で開校6年目を迎えました。制服はなく、上履きもありません。不登校経験者や高校中退経験者が多く在籍しています。)


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    2011/01/10 23:07

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