遠津川の両雄 公演情報 祭文庫「遠津川の両雄」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    歴史に「もし」 や「仮に」といったことがあったらと思わせる、事実と虚構の境界線にある物語。その想像させるところが舞台らしくて面白い。タイトル「遠津川」は現在の奈良県にある十津川、そして両雄とは そこに居る郷士(下層武士)の指導者2人。時は戦国時代、その時代を生きる2人の考え方、生き様--鉾/盾といった関係を描いている。内容は、内輪揉めや矛盾とも違う、謂わば矜持のようなもの。

    少しネタバレするが、物語の中に出てくる「擬死再生(ギシサイセイ)」という台詞 これが肝。初めて聞く言葉で 当日パンフには「山岳信仰や修験道において山や霊地を他界と見なし、そこを巡歴する厳しい修行を通じて、一度死んでから新たに生まれ変わるという概念や宗教的行い」とある。客席の中段まで傾斜した花道を設えているが、これによって山深さ 古(山)道を表しているよう。公演は、小劇場にもかかわらず 客席数を減らした花道で分かり易く、小道具や衣裳(和装)等のディテールに拘り 丁寧に観せるところが魅力。ただ 殺陣が窮屈に観えたのが惜しい。
    (上演時間1時間45分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、大木を模し こも巻らしきものが見える。天井から端布を垂らし木の葉に覆われ奥深い山といったイメージ。下手に物見(櫓)的な木が1本。

    幼馴染の信貴(シギ)と北(キタ)が遠津川の両雄、山奥で平穏な日々を送っていたが、或る日 賊の集団が攻め入ってきた。なんとか撃退したが負傷者も多く出した。たんなる盗賊ではなく武士集団であることが分かった。その正体は三好党、台詞に足利幕府とあることから 戦国史でも有名な三好政権らしい。史実と舞台(虚構)という境界線を背景とし、今の状況に如何に対処するか、そこに指導者としての2人の資質と考え方を描く。

    信貴は守りを固め 今まで通りの暮らしを主張、一方 北は これを機に相手方へ攻め込み政権に取って代わろうと主張、文字通り 盾と矛で相容れない。信貴は北の説得は無理と判断し、仲間(郷士)の犠牲は最小限に止めるため北を斬ることにした。それぞれの指導者に付き従う者との闘い。そこには2人の性格の違い、冒頭 北は遠眼鏡で海を見ており、いずれ行ってみたいと。そこに見知らぬ土地への好奇が窺える。もし、北が三好党を攻め滅ぼしていたら 歴史は変わっていただろう。どんな世界になったかな。

    殺傷とは反対に念仏を唱え安寧を、そんな土地柄を表す場面を入れる。それが護摩行で煩悩を焼き払う火が妖しく燃える。果心居士の読経、そして修験者達が花道を下ってくる姿が厳粛にみえる。斬り合いという行為、その裏で安寧を願うという対極の行為に浪漫を感じる。これが「擬死再生」かな。この靜的な場面は良かったが、動的な場面は 劇場(舞台)が小さいこともあり、殺陣は1対1にならざるを得ない。また太刀筋が 小さく(窮屈に)感じられたのが惜しい。

    暗転時の時間が少し長いような気がする。小道具などの出し入れといった手配があるのだろうが、工夫の余地があるのではないか。ただ暗転時の音楽(邦楽)は、その時々でメインとなる楽器(笛⇒尺八⇒三味線などの順)が異なるようで、状況における高鳴りが違って聞こえた。全体的に丁寧な創作といった印象を受けた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2026/03/23 07:39

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