鹿鳴館異聞 公演情報 名取事務所「鹿鳴館異聞」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    明治22年(1889年)2月10日、築地外国人居留地にある一軒の屋敷。広瀬常34歳(松本紀保〈きお〉さん)と看護婦の千代(平体まひろさん)がひっそりと暮らす。突如夜更けに来訪した男は森有礼(ありのり)41歳(千賀功嗣氏)。初代文部大臣であり、日本の近代教育制度の礎を築いた男。開国したばかりの日本を欧米諸国から対等に認められる近代国家へと早急に導く為、世界基準の教育と啓蒙を推進した。明日は念願の大日本帝国憲法発布式典の日。日本が国際的に信頼のおける法律で整備された立憲国家であることを対外的に宣言する必要があった。彼の唯一の懸念は離婚した妻、広瀬常のこと。

    初演は1990年、木山事務所が俳優座劇場にて公演。
    (手の会→木山事務所→Pカンパニーの系譜だそうだ)。

    森有礼が帰り、次に押し掛けるように無理矢理訪ねて来るのは広瀬常の旧知の男爵夫妻(藤田一真氏と西山聖了〈きよあき〉氏)。その二人の様子をどうも不審に思う千代。彼等は何を企んでいるのか?降り続く雨は次第に雪へと変わる。

    平体まひろさんが綺麗。壇ふみさんに似てるのか。上品な戦後日本女優の風格。
    西山聖了氏は芸達者。いろんな武器を隠し持っている。

    作家は山田風太郎のファンでは?『ラスプーチンが来た』を読んでいた時の興奮を思い出した。自分も山田風太郎の大ファンの一人だが今作にとって肝心要の『エドの舞踏会』を多分読んでいない。読んでいればもっと楽しめた筈、残念。

    いや面白い脚本だ。『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』なんて映画を思い出す。アナ・デ・アルマスが演ったキャラに平体まひろさんが被る。

    ネタバレBOX

    西山聖了氏の正体は伊勢谷友介みたいな美形の女形、沢村源之助(四代目澤村源之助)だった。目茶苦茶魅力的ないなせな口上、今作の面白さの核になる。正体を見破られた彼が逆に見破るのは千代の正体。江戸で評判を呼んだ手妻遣の一座に一人の娘がいた。

    ※三代目澤村田之助、脱疽で右脚を膝下まで切断するが義足にて舞台に立つ。だが脱疽は悪化し、左脚、右の手首、左手の小指以外の指全部を切断。義足を着けてから5年で引退。四代目澤村源之助は彼の当たり役を演じることが多かった。

    手妻遣=手を稲妻のように使う奇術師。手品だけでなく催眠術に近い芸当も見せた。今作では赤ん坊の泣き声やら藤田一真氏の手元が突然発火するなど超能力者のような腕前。この演出はまだ更なる仕掛けが作品に隠されていると観客を興奮させた。

    森有礼と常の離婚は世間の歓心を買った。外人と不倫し産まれた娘が青い瞳だった為、離縁されたとまことしやかな噂。それを裏付けるように娘の安はすぐ里子に出され、翌年森有礼は岩倉具視の娘と再婚した。広瀬常のその後は不明で未だに謎。夏目漱石の『三四郎』でも触れられている。

    鷲巣照織氏は最後の最後に登場、驚いた。

    山田風太郎は巨大な巻紙のような年表を作成し、同時代に誰が何をしていたのかを書き込んだ。思わぬ人間が同じ時代を過ごしたことを知ると何とか二人を出会わせられないか検討した。それによるあっと驚くアイディアが作品内に散りばめられている。

    ※今作では誰も彼もが嘘をついている。森有礼は英国で精神を病んだ常が女の子を出産した妄想に取り憑かれているだけだと言う。実際に常は言動がころころと変わり信頼の置ける語り手ではない。大事そうに抱いているのは赤ん坊のお人形。だが実際は英国の俳優と情事があり、妊娠した時、子供の容姿に怯えた。日本に帰る船の上で心を許した千代に誰にも頼めないお願いをする。産まれた赤子の目が青かったら首を絞めて始末して欲しいと。だが千代は殺さなかった。築地の屋敷で二人で育てた。ある時、森有礼が娘を引き取りに来て勝手に里子に出した。森有礼の死んだ今、もう彼女の行方は掴めない。

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    2026/03/14 22:04

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