アイロニーの丘:Re:Re 公演情報 9-States「アイロニーの丘:Re:Re」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。
    再々演の演目らしいが、自分は初見。作・演出の中村太陽氏によれば、少しずつ視点/内容を変えているとのことであったが、本作はまさに現代的なアプローチのようだ。定時制高校の入学から卒業迄、或る事情を抱えた個性豊かな生徒と独特な雰囲気と思考の教師が繰り広げる学園群像劇。

    登場する人物の描き方には濃淡があるが、共通しているのは 人との付き合い方が苦手、不器用といった人々ばかり。その人々が少しずつ成長していく姿を温かく見守るような展開。勿論 生徒だけではなく先生方も訳ありの生徒と向き合うことによって、人間的な成長をみせる。大上段に振りかぶった「(理想の)教師とは?」といった高みからではなく、人と人との生身のぶつかり合いを通して 机上の学問だけではなく生きた学びを得ていく。
    (上演時間1時間55分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は高校の教室、上手に黒板や教壇、中央に3人ずつ3列のスチール机と椅子が並んでいる。奥の壁面は窓ガラスで 上演前は茜色(夕方)に染まっている。

    冒頭 1人の女性が教室に居残り物思いに耽っているよう。そこへ中年の男性が見回りに来て…女性は全日制の教師 朝比奈、男性は用務員に間違えられたが、実は定時制の教師 山崎。この出会いによって全日制・定時制という昼夜に関係なく「教師」という共通の設定に繋げる。定時制の廃校は既に決まっており、今いる生徒は持ち上がり。

    一方、生徒は漁師 ・元引き籠り ・元社長 ・ホスト(レジ係)・主婦 ・元工場員 ・問題児の転校生 ・モブ キャラ という年齢も経歴もさまざまな人々。1人ひとりが抱えている問題や背景を描き、机上の知識だけでは解決できない人間ドラマを立ち上げていく。例えば 元引き籠りの女性は苛められていた生徒を助けるための行為が、SNSで苛め側のように捏造/歪曲され拡散。また元工場員は言われたまま仕事を行い、自分で考え判断したことがなかった。食事も弁当が支給され献立を考えたこともない。SNSという姿の見えない人からの誹謗中傷、思考や判断を奪う親切なマニュアルといった現代にありがちな事。他にもモンスターペアレント、ストーカーなど人間不信に陥ることなどを点描する。

    説明には「人生リスタート支援政策」によって40歳以上が定時制に入学とあるが、中には その年齢に達しない生徒もいるようだ。年齢に関わりなく 人生はやり直せる といった描き。初演や再演は観ていないが、冒頭の朝比奈先生は学級崩壊によって教師という職業に自信を失っていた。初演は15年前(2011年)、本作では描いていないが 当時の問題意識はそこにあったのかもしれない。一方、今作の底流にあるのは、自分の正義だけを振りかざしても 相手に真意が伝わらない、もしかしたら傷つけてしまうといったこと。しかし、自分を見失い世間(他人)に振り回されてもいけない。山崎先生の言葉遊びのような台詞は、まさにタイトルに含まれる意のよう。

    物語はエピソードごとに暗転するため、時間(流れ)といったメリハリが利き印象に残る。それに伴い、生徒の座る位置(座席)も違う。また照明も時間と心情を上手く表しており、実に効果的。廃校後、山崎先生は「教師」を辞めるようなことを言っていたが、同窓会で再会した時、今何をやっているの という生徒の問いに「先生」と…。
    全体的に丁寧な作り込み、その思いが観客の心に届くような公演だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2026/03/01 00:31

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