土曜日の過ごしかた 公演情報 ニットキャップシアター「土曜日の過ごしかた」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    4年前に観た『チェーホフも鳥の名前』が鮮烈でそれからずっと観たかった劇団。その後、こまばアゴラ劇場で演った『カレーと村民』は予定が合わず観れなかった。やっと東京に来てくれて嬉しい。

    脚本の「ごまのはえ」氏。味のある特高刑事役でもある。この役を自分に振るか、やるな。

    松竹撮影所の売れない大部屋俳優、斎藤雷太郎が発行した週刊新聞型ミニコミ『土曜日』。昭和11年(1936年)から12年(1937年)まで京都の喫茶店や書店に置かれ最大発行部数は7〜8千部。映画や時事ネタ、政治や海外ニュースに読者投稿を知的欲求の強い連中に向けて挑発的に投げ掛けた。その自由な気風が目を付けられ関係者の殆どが特高に検挙されて1年4ヶ月で廃刊。

    喫茶デイジーで千田訓子(せんだとしこ)さんがコーヒーを淹れている。当時の器具を使っているのか手間が掛かり美味しそう。旦那が社会主義運動で検挙され死亡、旦那の妹(仲谷萌さん)と自分の妹(山﨑茉由さん)と店を続けている。山谷一也氏が久方振りの来客。東京からやって来た門脇俊輔氏は置いてあった『土曜日』に興味を惹かれ発行人の斎藤雷太郎(西村貴治氏)に会いたがる。ソ連のコミンテルンの呼び掛けから反ファシズム運動「人民戦線」が日本の地下でも活動していた。仲谷萌さんは死んだ兄の組織から仲間を匿って欲しいと頼まれる。

    門脇俊輔氏の役は谷口善太郎がモデルか?

    牧歌的な『土曜日』の編集会議。どんどん人気が上がり検挙されない程度の体制批判を織り込む。だが時局はそんな冗談すら許さない恐怖と暴力で人を支配する流れに。

    山谷一也氏は大平サブローっぽい。

    役者が皆個性的。妙な面白さがある。今の時局に訴えるべきことを込めて。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    静かに淡々と進むので居眠りは多かった。何気ない日常に忍び寄るファシズムを描きたかったのだろう。

    喫茶デイジーのセットは時局と共に後ろから押されて両側が閉じていき最後には身動きが取れない程のスペースに。千田訓子さんは恐れおののく。

    特高に捕まりずっと無視される拷問を受ける門脇俊輔氏。いつまで経っても取調べが始まらない。耐えかねて取調べをお願いする。刑事の要求するまま作文を書く。とにかく早く終わらせてここを出ないことには。特高刑事の山谷一也氏、ごまのはえ氏、小野毅氏の醸し出す雰囲気がいい。小説調のモノローグで淡々と綴られる日々がより個人の無力さを際立たせる。

    賀茂川と高野川の合流地点にある三角州は「糺河原(ただすがわら)」と呼ばれる府民の憩いのスポット。(「出町の三角州」「鴨川の三角州」を経て現在は「鴨川デルタ」と呼ばれている)。執行猶予でやっと拘置所から解放された門脇俊輔氏、斎藤雷太郎(西村貴治氏)、電車でそこをぼんやりと眺める山﨑茉由さん。
    体制に思考なく迎合して加担する町の連中に吐き捨てる。「俺はこいつらが嫌いだ。」

    血が輪郭に滲んだ白いお面で大衆を表現。誰も彼もが顔を失くし記号化する。両手にもお面を持つ血塗られた白いお面の群衆。そこをぐるぐる走り出す。ぐるぐるぐるぐるただ憑かれたように駆ける。グラウンドを周回する生徒のようにぐるぐるぐるぐる。

    今作を観ていて自分が当時の日本に覚える嫌悪感の理由を再確認する。自分よりも劣った連中に従わねばならぬ屈辱感。こんな頭の悪い連中の言いなりにならねばならないのか。知性も思慮も持たない単細胞生物に好きなように蹂躙される惨めさ。せめてもう少し知能があってくれ。人間であってくれ。嘘を付いて騙し続けないと一つになれない国なんてそもそもが間違っている。

    『はだしのゲン』の作者・中沢啓治の読売新聞への投書。
    「これから先、だれかが戦争や原爆を肯定するようなことを言っても、絶対に信じるな」。

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    2026/02/28 15:55

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