嫌な世界 公演情報 ブルドッキングヘッドロック「嫌な世界」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「嫌な世界」は紙一重
    『ケモノミチ』でも感じた世界が広がっていた。
    「日常」と「人間関係」。
    崩壊の序曲。

    ネタバレBOX

    濃厚で、どこにでもあるようで、実は現代では崩壊してしまっている人間関係。
    あそこの誰がどうしたとか、もう、近所のみんなが自分のいろんなことを知っていて、他人なのに、親戚以上のつながりがある社会。それは、もう現実には見ることのできない、下町的な人間関係である。

    無縁社会の今となっては、素晴らしい社会だったのかもしれないが、その鬱陶しさに気がついてしまえば、その中にいることは地獄でもある。

    つまり、「嫌な世界」と「素晴らしい世界」は表裏一体にある。
    「それ」に気がつかなければ、素晴らしく、気がついてしまえば嫌な世界にもなってしまう。
    「隣の芝生は青い」症候群とでも言おうか。

    まるで、もうダメそう(たぶん)な地球よりも、火星のほうが素晴らしいと思ってしまうのにも似ている。

    息子の坊豆くんから見ると、周りの大人すべてが家族のようで、家族ではなく、単に鬱陶しいつながりでしかないのだから。
    だから、「お兄ちゃんが多くていいわね」なんて言われると、爆発させたくもなってしまう。

    火星に移住が始まっていても、そんなムラ社会はどこかに存在する。ムラの外から入ってくると、居心地は悪い。担任や母親の浮気相手はまさにそう。まったく馴染めないのは当然。
    しかし、天涯孤独な壊し屋・七海にとっては、ちょっと惹かれたりすることもあるのだろう。無縁社会の真っ直中にいるのだから。

    坊豆は、今いる息苦しい世界を、爆弾で吹っ飛ばしてしまいたいと思っている。実際に爆弾を作っている入間は、爆弾では壊せないことを知っているから、爆発しない爆弾を作り悶々としている。

    だけど、(たぶん)少し未来の話なのだが、観客は知っているのだ。そんな人間関係なんて、爆弾じゃくても簡単にバラバラになってしまうことを。
    工場の破産や母親の浮気による両親の離婚は、もうすぐそこまでやって来ている。そうでなくても、そんなムラ社会は、年とともに崩壊するしかないのだ。人間関係を築く「人」が減っていくし、子どもだって、坊豆1人しかいないのだから。

    それにしても、サンモール・スタジオという会場で、あれだけ大がかりなセット展開をできるというのには、驚きだ。本当に素晴らしい。

    そして、どこまでもぼんくらな男性たちに対して、女性たちの、諦念とも言えるような察し方の雰囲気は素晴らしい。どの女性も、それで魅力的に見えていた。

    中でも、七海を演じた永井幸子さんの、「あえて、イヤなことを言います」的な台詞回しは、誰にでもあることなので、ヒリヒリときたし、小島の妻を演じた深澤千有紀さんの「おばちゃんぶり」は素晴らしい。ラストの去り際で見せる台詞もとても効いていた。それは、唯一とも言っていい一筋の光だった。
    さらに、工場の従業員を演じていた伊藤総子さんの、哀しみ溢れる姿は印象に残った。理髪店の兄を演じた岡山誠さんは、持ち味のキャラクター以上の鬱陶しさがナイスだった。

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    2010/12/31 07:00

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