女優(おんなやさしい) 公演情報 ろりえ「女優(おんなやさしい)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    深刻な「落語」のような噺
    「ろりえ」は初見でした。深刻な内容なのに全体が落語のようでけっこう楽しめたし、2時間50分はさほど長くは感じなかった。
    ただし、2時間50分というと大劇場並みだがそこまで時間をかける内容には感じなかった。この尺で休憩わずか5分、しかもかなり後半に入れているのがあまり適切とは感じられない。せめて1時間30分前後で休憩を入れたほうがよいのでは。
    先日の花組芝居の本公演に続いて主役級の堀越涼の実力を実感した。これで本拠地では女形も演じているのだから末頼もしい限り。
    会話のテンポがよく、悪趣味スレスレの面白さと言うか、個性的な劇団だとは思った。

    ネタバレBOX

    冒頭の鮮やかな場面転換にまず驚き、若さが弾けるような楽しいオープニングにはワクワクした。スライド式の舞台装置はアイディアだなと感心したが途中から装置を使いこなすことに重点が行ってるように感じられ、さすがにもたれてきた。
    また、性表現が露骨で男性の全裸シーンが頻繁に出てくるのも自分の好みではなく当惑した。母から受け継いだリョウコ(梅舟惟永)の優しさが「男性への性的奉仕」のみで表現されるというのは私には受け入れがたかった。つわりで吐く場面も、インパクトを狙ってか、かなりリアルに見せるが、演劇は映像とは違うので生々しさはあまり気持ちの良いものではない。あえてそうする必然性を感じなかった。
    転校生のエース(安藤理樹)がその座にすわるため光の殺人を決行したと告白し、それを聞いた側もギャグみたいに解釈するのも安易な描き方でいただけない。エースに殺されたはずの光が実は記憶をなくした謎の女(徳橋みのり)で本当に死んではいなかったのか、兄妹の母がその後どうなったのか、よくわからないままだった。
    帝王切開の場面で「もしかして誤って小腸を切ったのか」と誤解するほど長いヘソの緒で男たちが綱引きする場面、ここはもう「落語」だ。この綱引き場面の安藤と堀越の演技がなぜか理屈抜きで訴えかけてくるものがあり、馬鹿馬鹿しさを通り越して感動すら覚えた。
    堀越のジュンは引きこもりの役とはいえ、顔半分を覆う前髪が鬱陶しすぎ、ここまで覆わなくてもよいと思った。どんな顔の俳優かよくわからないのは考え物(笑)。安藤はみんなの会話に入ってくるときの間のよさ、素ではない自然な芝居、演技勘に並々ならぬ才能を感じる。
    父親役の松下伸一の飄々とした物言い、尾倉ケントのトッポい警官が面白い。同級生の男たちの中でプラトニックな愛を貫くゲン(高木健)はどうにも野球選手のイチローに見えてしかたなかった(笑)。
    母が昔から可愛がっていたオス犬(着ぐるみ)のイヌオがお稲荷さんの狐か狼にしか見えない(笑)が、なかなかの忠犬で命がけで噛み付いてピストルで頭を吹き飛ばされ絶命したにもかかわらず、お産の綱引きに加勢して、綱引きが終わったらまた死んだりして結構可愛い。しかも、リョウコの産んだ赤ん坊には尻尾があって「父親はイヌオ?」というオチまでつく(苦笑)。

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    2010/12/27 16:26

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