ヂャスヴュラ 公演情報 おぼんろ「ヂャスヴュラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    千穐楽観劇。
    面白い。井の中の蛙が外の世界を覗いてみれば、そこは仁慈どころか残酷なところだった という寓話。外という未知の世界での冒険が始まる。それを おぼんろ らしいファンタジーとして描く。本作も物語性は勿論、照明・音響/音楽といった技術、舞台美術の演出が素晴らしい。特に可動する櫓状の造作をフルに動かし情景を豊かに紡ぐ。舞台全体が亀甲ひび割れ模様、それは美しくも惨い証。照明は夜空を照らす月であり 星々である。井戸の中を照らす月明り、その4分58秒間が愛おしい。

    本多劇場での全ステージ 投げ銭公演。上演前と後、場内至る所で語り部(出演者)が参加者(観客)と談笑し、一緒に写真を撮って和気藹々と触れ合っている。投げ銭公演といってもいつもと同じ。いつの間にか参加者は おぼんろ の世界へ誘われ、その雰囲気に陶酔していく。この同化・没入感が おぼんろ の魅力!
    (上演時間2時間15分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、大小形の違う櫓状の造作が2~3、それらを人力で動かし組み合わせや向きを変えることで情景に変化をつける。天井には逆さにした傘が吊るされ、降水を待っているよう。この島にはめったに雨が降らず、日照りで大地がひび割れている。逃げ場のない島という設定が妙。

    井戸の中にいる蛙の3兄弟、イモリに外の世界の様子を聞き 憧れている。いつか外へ出てみたいと願い跳躍を重ねていた。念願かなって外へ出てみれば、そこは雨が降らず乾ききって殺伐としていた。人間は絶滅し 小動物の多くは奇形。人間が遺した建物は廃墟、そこに梟とヤドカリ。梟は片羽を痛め飛べず、仲間のように他の地へ行くことが出来ない。翻って この島にいることに意味があるのではないか と自己肯定する。島にいる小動物に水を与え、雨乞いの儀式も行っている。蛙3兄弟も梟の手助けとして雨乞いをする。そして黒い雲から雨が降るが…。

    人間が遺した施設は放射能に汚染され、小動物に配水しているのも汚染水。たとえ汚染水でも水がなければ生きられない、奇形になっても生き長らえるか死ぬか という究極の選択を迫られている。梟は汚染水と知りつつ配水を続け、長男 蛙はそのことを糾弾し小動物たちに真実を告げる。その結果 小動物たちは梟を詰り信じなくなり、蛙3兄弟もバラバラになる。おぼんろ らしい弱き物(本作では蛙)の観点から、今の社会を批判的に見詰める。それは大上段からの理屈ではなく、あくまでファンタジーとして見せつつ、参加者に考えさせる。ラスト、前方客席まで広がるスモークマシンは まるで雲海の中、環境も精神も浄化されるような清々しさ。

    井戸の中に月明かりが照らされるのは4分58秒、その光を愛おしむ様に体を少しずつ傾ける。狭いが兄弟仲良く平穏に暮らしていた日々、しかし未知への好奇心によって過酷な運命へ。そのドラマチックな展開が参加者の関心を刺激し語り部と一緒に旅へ、そんな一体(没入)感が おぼんろ公演の魅力。今の時代、2.5次元で魅せることも出来るであろうが、敢えてキャスト・スタッフ総動員で舞台美術を動かす。そこにも表立たない一体感を見るようだ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2026/02/17 00:03

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