菊五郎と天狗の冬 公演情報 劇団 枕返し「菊五郎と天狗の冬」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    生き別れた母を探す少年と、不良中年男との一冬の旅と交流を描いたロードムービー的な物語。

    題名と設定から自分が思っていた映画に準えているが、どうして天狗に育てられることになったのかが カギ。劇団のコンセプト「真面目にふざける、必ず妖怪が登場する、なぜか漂う昭和感」の通り、今回の妖怪は「天狗」だが、それ以外の「存在」が重要。また物語は 古き良き時代を思わせるような郷愁に溢れている。ちなみに下北沢では「第94回 下北沢天狗まつり」が開催されている。

    緩い演出と演技だが、不思議と物語を引っ張る力は強く、心に響いてくる。小道具などは 学芸会かと思ってしまうものだが、笑いの中にしっかりと情景を表出する巧さ。なにしろ9歳の少年という設定にも関わらず、中年男より体格がデカい。それでも いつの間にか少年と大人に見えてくる。
    冒頭の緞帳代わりの幕開けを始め、小道具の乱れが(悪)目に付き勿体ない。少し辛口の★3
    (上演時間1時間30分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は 段差があるだけの素舞台。
    準えた映画は「菊次郎の夏」(北野武 監督)で、それに伝承「雪女」の後日談を組み合わせた異界作のよう。競馬(映画は競艇だったような?)やヒッチハイク等のエピソードは準えているが、母親が子供と別れた理由はべつ。劇団の謳いである〈人間と妖怪を共存〉させたオリジナル作。

    物語は、赤ん坊を抱いた女から別の女が子を取り上げ、天狗に渡す(預ける)ところから始まる。後々わかるが子を奪ったのは、祖母にあたる。母は雪女でその母である祖母も同じ。雪女の産んだ子が 女の子であれば(雪女として)育てられるが、男の子(人間)の場合は殺(凍死)してしまう。そんな悲しい定めから泣く泣く我が子を手放した。今 母は女の子を生んで幸せに暮らしており、その姿を見て冬彦は諦めがついた。

    ちょっと可笑しくて 切ない旅、そこに天狗の下にいる兄弟のような子供が絡んでユーモアとサプライズに満ちたロードムービになっている。天狗の下で修業し神通力を身に付けようとしているが…。人の心が読める、色々な音(声)が聞き分けられる等 6つの神通力があるらしい。その片鱗が寄り道だらけの旅を助ける。冬彦だけの旅ではなく、仲間との絆を深める機会にもなっている。冬彦の孤独感や菊五郎の温かさを 優しさ溢れる眼差しで紡ぎ、笑いと涙を誘う爽やかな感動作に仕上げている。また菊五郎は、介護施設に自分を見捨てた母の様子を見に行くが…その親子の情が彼の成長譚にもなっている。冬彦、菊五郎ともに大人(母)の事情によって捨てられが、それでも力強く生きていこうとする。

    布を張り合わせた緞帳代わりの幕(中央に墨痕で「枕返し」と書かれている)が開き切らず、冒頭のシーンが観えない。また錫杖の先頭(遊輪)部分が抜け落ちる、競馬の番号札(ゼッケン)が落ちるなど小道具の乱れが散見されたのが惜しい。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2026/01/31 20:50

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